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令和6年司法試験行政法 参考答案例

こんにちは、be a lawyer(BLY)のたまっち先生です。

今回は、昨日まで実施されていた令和6年司法試験の行政法について、be a lawyerの個別指導講師(77期)が参考答案例を作成しましたので、公開させていただきます。

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では、早速、令和6年司法試験行政法の参考答案例をみていきましょう。


令和6年司法試験行政法 参考答案例

第1 設問1⑴
 1 「処分」(行政事件訴訟法3条2項括弧書き)とは、国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利利益を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
   そして、「処分」にあたるかどうかは、①法律上の根拠、②法的効果、③直接性、④公権力性を考慮して判断する。
 2 本件事業計画変更認可は、法38条1項に基づいて行われたものである(①)。
   第一種市街地再開発事業においては、原則として、施行地区内の宅地の所有者に対し、それぞれの所有者が有する宅地の価額の割合に応じて、再開発ビルの敷地の共有持分権が与えられ、当該敷地には再開発ビルを建設するために地上権が設定されて、当該敷地の共有者には、地上権設定に対する補償として、再開発ビルの区分所有権に対応する権利床が与えられる。
   そして、事業計画においては、当該事業が施行される土地として「施工地区」を定める必要があり(法2条3号、7条の11第1項)、事業計画は、当該事業に関する都市計画に適合しないものであってはならない(法17条3号)。
   そうすると、当初の都市計画が変更された場合、それに伴って事業計画も変更されることになる。
   本件事業計画変更認可は、本件都市計画変更を受けて行われたものである。本件事業は、当初はB地区についての第一種市街地再開発事業であったが、本件都市計画変更によって新たにC地区を施行区域に編入した。これにより、権利床に変換されるべき宅地の総面積が増加し、変更前に取得できたはずであった権利床の面積が減少することになる。
   このように、本件事業計画変更認可は、権利床に返還されるべき宅地の総面積を増加させる結果、施行区域の宅地の所有者が変更前に取得できたはずであった権利床の面積を減少させるという法的効果を生じさせるものであるといえる(②)。
   上記のとおり、本件事業計画変更認可によって、権利床の面積の変更という効果が具体的に生じるため、直接性も認められる(③)。
   本件事業計画変更認可は、都道府県知事が(法38条1項)、その優越的地位に基づいて一方的に行う性質のものであるため、公権力性も認められる(④)。
 3 よって、本件事業計画変更認可は「処分」にあたる。

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第2 設問1⑵
 1 手続上の違法
   Dは、本件事業計画変更認可の申請後、法16条1項、2項、38条2項が定める縦覧及び意見書提出手続が履践されていないことを違法自由として主張することが考えられる。
   もっとも、同法施行令4条によれば、同条各号が定める「軽微な変更」に該当すれば、上記縦覧及び意見書提出手続は不要となる。本件では、B地区の面積が約2万平方キロメートルであるのに対し、C地区の面積が約2千平方キロメートルであることから、相手方としては、「施設建築物の設計の概要の変更で、最近の認可に係る当該施設建築物の延べ面積の10分の1をこえる延べ面積の増減を伴わないもの」(同条2号)に該当すると反論することが想定される。
   そこで、Dとしては、本件都市計画変更は、「施設建築物の設計の概要の変更」(同号)にはあたらないとして、「軽微な変更」にあたらないと主張することが考えられる。
   そもそも、同号の趣旨は、同一の施設建築物の軽微な設計の概要の変更は、当該事業が行われる施工地区内に宅地を所有する者の権利利益に与える影響が小さいことから、再度の縦覧及び意見書提出の機会を保障する必要はないとする点にあると解される。
   本件都市計画変更は、B地区から見て河川を超え対岸にある、C地区を施工地区に編入するものである。そして、本件都市計画変更では、C地区は、公共施設である公園とする一方で、設計の概要のうち、当該公園を新設すること以外は変更しないというものである。
   このようなB地区とC地区の位置関係、C地区の計画の内容からすれば、C地区とB地区では異なる施設建築物が設計されていると解するのが妥当であり、両者は同一の施行建築物とはいえない。
   したがって、C地区を編入する本件都市計画変更は、「施設建築物の設計の概要の変更」にはあたらず、「軽微な変更」にあたらない。
   よって、Dは以上のような主張をすべきである。
 2 実体上の違法
   Dは、本件都市計画変更に際して定められた都市計画が都市計画法13条1項13号に反する旨の主張(①)及び施工区域が法3条4号に反する旨の主張をすることが考えられる。
  ⑴ ①の主張
    都市計画法13条1項13号は「市街地再開発事業は・・・一体的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域について定めること。」と規定する。
    C地区は、上記の通り、B地区とは河川を越え対岸にある空き地であり、さらにその周辺からはB地区側へ橋が架かっておらず、A駅方面へ行くにはかなりの遠回りをしなければならないという状況であった。このような両地区の立地からすれば、両地区は物理的に一体とはいえない。
    また、C地区については、本件事業計画変更に際して公共施設である公園を新設する以外には変更しないというものであったことからすれば、C地区は、B地区と機能的にも一体的に開発又は整備する必要性の乏しい地区であるといえる。
    したがって、B地区とC地区は、「一体的に開発し、又は整備する必要がある土地」とはいえない。
    よってDは以上のような主張をすべきである。 
  ⑵ ②の主張
    法3条4号は、都市計画に定める施行区域として、「当該都市の機能の更新に貢献すること」という要件を課している。
    C地区は、河川沿いの細長い空き地であり、地区周辺の人通りも少ない地域であったため、Eは長年C地区の活用に苦慮していた。
    また、上記のとおり、C地区周辺からB地区側に橋が架かっていないため、B地区側からの人の流入は期待できず、A駅方面へ行くにはかなりの遠回りをしなければならない状況であった。
    このような人の流れからすれば、C地区をB地区と一体と解しても、R市の都市機能の更新に貢献するとはいえない。
    したがって、C地区を本件事業の施行区域に編入しても「当該都市の機能の更新に貢献する」とはいえない。
    よって、Dは以上のような主張をすべきである。
第3 設問2
 第2の違法事由は、本件事業計画変更認可の違法性であるところ、同認可は令和5年3月6日に行われており、本件取消訴訟を提起した令和6年4月7日時点では、すでに同認可の取消訴訟の出訴期間は徒過している(行政事件訴訟法14条1項)。
 また、行政上の法律関係の早期確定や行政行為の安定性の維持という要請からすれば、原則として、先行処分の違法性を後行処分の取消訴訟等で主張することはできない(違法性不承継の原則)。
 もっとも、取消訴訟の排他的管轄を徹底し、いかなる場合にも先行処分の違法性を後行処分で争えないとすると、国民の実効的な権利救済という面から不合理な場合が生じる。
 そこで、①先行処分と後行処分が同一目的を達成するために行われ、両者が相結合してはじめてその効果を発揮するものであり、②先行行為の適否を争うための手続保障が十分に与えられていない場合には、先行処分の違法性を後行処分取消訴訟等で争うことができると解する。
 1 本権事業計画認可は、権利変換の対象となる施行区域の変更を目的とするものであり、本件権利変換処分は、その変更された施工地区ごとに行われるから、両者はいずれも権利変換という同一の目的を達成するために行われる処分であるといえる。
   また、施行者は、施工地区ごとに権利変換計画を定めて都道府県知事の認可を受けなければならず(法72条1項)認可を受けたときは、遅滞なく国土交通省令で定めるところにより、その旨を広告し、及び関係権利者に関係事項を書面で通知することによって権利変換の処分をしなければならない(法86条1項、2項)。
   これらの事実からすれば、本権事業計画変更認可によって施工地区が決まり、当該施工地区ごとに本件権利変換処分が行われるという関係にあるのであるから、両者は相結合してはじめてその効果を発揮するものであるといえる(①)。
 2 都道府県知事は、事業計画の変更の認可をした場合、公告をしなければならない(法38条2項、19条1項)。また、Dは、本権事業計画変更認可によってC地区が本件事業の施工地区に編入されたことに不審を覚えており、当該認可を知ることはできていた。
   しかし、Dは、本件事業計画変更認可の段階では、自分に割り当てられる権利床の面積には影響がないと誤解しており、争訟の提起等は考えなかった。実際に、本件事業計画変更認可の公告縦覧手続においては、「施行区域及び新たに施行区域となるべき区域」(法38条2項)が公告されるのみで、Dは、Eがどれだけの権利床を取得し、Dが取得できる権利床がどれだけ減少するかを権利変更計画の公告縦覧手続が行われた段階ではじめて認識している。
   そうすると、Dが、本権事業計画変更認可の段階では、自分に割り当てられる権利床の面積には影響はなく、権利変換の時点ではじめて不利益が現実化すると考えて、その段階までは争訟の提起という手段はとらないという判断をすることはあながち不合理とはいえない。
   これらの事実からすれば、Dは、本件事業計画変更認可の適否を争うための手続保障が与えられていたとはいえない(②)。
 3 よって、Dは、本件取消訴訟において、本件事業計画変更認可の違法性を主張することができる。


いかがでしたでしょうか。

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