知りたい!ネコごころ
率直な感想
この著書は、動物心理学という分野において、ネコを取り扱った研究であり、ネコ好きの人々にとっては「当然なる行動」と思い込んでいるネコの行動について、科学的に説明を試みた研究内容を、平易な文章で説明しています。
例えば、家では日常的にあり得ることですが、愛猫の食べたさそうなものがテーブルに複数並んでいて、愛猫はそれを発見します。一つはうっかり食べられてしまいました。「コラ~」と叱ったのち、しばらく放置してしまいました。すると、片づけていなかった自分が悪いのですが、愛猫はさきほど食べはぐったもの目掛けてやってきて、まんまとお口の中にいれているではありませんか!その際、カラになったお皿なんて全く見向きもせず、さきほど食べはぐったものに真っ先にむかっています。
やられた!さっき叱ったのになぁ。。ブツブツ。と自分を責めるしかないわけですが、この場合、ネコはさきほど叱られて食べられなかったモノを覚えていると、飼い主である自分はなんら疑うことなく認識しています。飼い主にとって、愛猫は自分の家族であり、人格ならぬ「猫格」があり、さらにあの小さな頭でいろいろなことを考えていると、勝手に思い込み、それを想像して接しているものです。
ネコを扱った研究は世界でも少ないわけですが、ネコ好きが勝手に当然視している内容にフォーカスし、科学的な手法に則り説明することをあきらめなかった研究としてたいへん面白いものと思います。
#四谷大塚 #推薦書 である点
また、本著書が #四谷大塚 の #推薦書 となっている点についてです。
(あくまで自分が読んでみて、自分の子どもに薦めるかどうかについて考えた私見です。)
まず、ネコを「ネコちゃん」と呼び親近感を持たせる言葉選びをしています。また、科学的な研究方法を設定し、かつ統計的な有意差を計算し、今流行りのエビデンスにのっとった説明をしていますが、専門用語はあまりつかわず、エッセンスとして登場する程度で説明をしており、必ず平易な文章で説明を付しておりわかりやすい工夫がされています。次に、研究論文では引用文献として脚注で論文名などを掲載するに限られるところを、著書の本文で仲間や先生の具体的なアドバイス内容を明記し、つどつど感謝がつづられます。研究分野にいると、人の手柄を自分の手柄のようにしてしまう人が多そうですが、 #髙木佐保 さんは異なり、好感を持ちました。第3に、ヤマネコ(自然種)や飼い猫、保護猫などに言及されることで、人間がどのように動物に関わり、ネコに影響しているのか、飼い猫とすることが良いのか、保護猫はなぜ発生してしまうのか、そのような人間のエゴ的な思いや活動がネコの進化を促しまた種の保全を邪魔していることなど考えられる契機になると思いました。
以上のような点から、小学生も読める入門研究書ではないか、と思いますが、小5程度の国語大好きな子か、国語偏差値60くらいの子、ネコ研究に興味が持てる子なら楽しめるかな、と思います。
親としてはたいへん学びある著書でしたし、ネコ好きな私としては楽しかったです。また、動物心理学は言葉を介さない分、人より探求に難しい領域でありますが、脳波やAI分析など取り入れることで、今後の研究の深化が期待されるだけに楽しみな分野であると思います。それだけに京都大学総長賞も受賞されたものと思います。
しかし、生き物が好きで、名前を調べたり、部位の役割や生態に関心がある理系男子でも、動物心理を人間心理と区別することは難しく、実験において細かな設定による結果の違いなどを理解する発想力が乏しい子には「難しい」とのことでした。