0、愚者(大アルカナ)解説
0、愚者
大まかな意味:正位置の解釈
白い犬を連れた若者が僅かな旅道具を手に切り立った崖と打ち付ける波濤を見下ろしています。背景では黄色い太陽が燦々と辺りを照らしており、全体的に希望に満ち溢れたイメージがあります。このカードは、愚者の旅路の第一歩。多少の危険を冒しても、新たな領域に希望を持って進む勇壮さを感じられます。
★意味:物事の始まり、楽観、自由、何者にも縛られない状態、冒険
★人間関係/恋愛上の意味:知り合ったばかり、興味を持っている、あるいは現在人間関係のことを考えていない、自分の人生の中の何かに心が踊っている状態、何者からも自由である状態
逆位置
逆位置になると、途端にこの愚者が持つ楽天性や希望が意味から失われます。まっさらであることは変わりませんが、何か躊躇いがあって前に踏み出せない状態。あるいは、何もないところに希望だけがあったからこそ冒険に出られていたのに、その希望自体に幻滅している状態と言えるでしょう。臆病になって尻込みしているのが分かります。冒険が始まろうとしているのに、崖の高さや波の険しさに気圧されているのでしょうか。そのような情景が浮かびます。足元で走り回っていた白い犬も、相棒として警鐘を鳴らしているようです。
★意味:物事のスタートが切れない状態、悲観、一歩を踏み出せない状態、芽が出ない状況
★人間関係/恋愛上の意味:尻込みしている、威圧されている、あるいは他のことに囚われていて余裕がない状態、退屈や幻滅、踏み出したくても踏み出せない状態、消極性
暗示性
何者からも自由な状態、スタートを切る状態、という意味において、「愚者」のカードは「魔術師」、「隠者」、「死神」、「太陽」のカードとややニュアンスが被ります。
これらのカードとの違いは、次の通りです。
「魔術師」:「魔術師」のカードは創意工夫をして新しい計画に着手するという、一種のスキルが既にある状態、材料が揃っている状態、計画性に裏打ちされたクリエイティブさが「愚者」とは異なる点です。人間関係/恋愛においても、「愚者」が『自由で楽しい』だけの状態であるならば、「魔術師」は『さあ次はどう動こうか』と画策しているような感覚の違いがあります。
「隠者」:「隠者」のカードも孤独であり、自由な状態です。また、絵柄で向いているのも「愚者」と同じく『左側』すなわち自己内省や過去を顧みる心境を表すものです。ですが、「隠者」はある程度の道のりを経て自ら社会から離れ孤独を選んでいる姿であるのに対して、「愚者」はただまっさらな状態であるために仲間もおらず、一人で冒険に出ている点が異なります。経験を積んで人脈を得ても仲間から距離を取り己の領域でひっそりと息を潜める「隠者」の静かな自己内省を行う心境と、冒険に出るために新天地に繰り出す「愚者」の楽観的で向こう見ずとも言える心境とでは状態が違うのです。
「死神」:「死神」のカードも0からのスタートを象徴しますが、こちらは明確に『何か今まで続いていた状況が終焉を迎えた結果』全てが無に戻っているニュアンスが強いです。
「太陽」:太陽のカードは、「塔」の破壊、「星」の希望、「月」の暗黒を経た後に「夜明け」を迎えた希望のカードです。一連の旅路を経て、破壊や混乱なども経験した後、自分の中の光に向かって歩んでいく「太陽」のカードと、当てどころなく、しかし希望を持って楽天的に歩む「愚者」のカードではニュアンスが異なります。
カードコンボ
愚者×魔術師:「愚者」の楽観性と「魔術師」の創意工夫が合わさり、新しい状況の到来としては望ましい組み合わせです。
愚者×女帝:新しく訪れた状況が豊かな土壌を得て育っていく暗示が強まります。
愚者×恋人:特に楽しいひと時を暗示する組み合わせです。「愚者」の障害や危険をも顧みない楽観と、「恋人」の今を楽しむ気配が合わさった、やや危ういところもあるもののハッピーな組み合わせです。「愚者」がこれから学ぼうとしていることは、コミュニケーションの楽しさなのかもしれません。現実に対して果敢に対応していく力がつくかと言われると疑問です。
愚者×星:「愚者」の希望が「星」の幸運に後押しされ、高い理想でも叶う可能性があります。
愚者×世界:一つの物事の完結から、また新たにまっさらな状態で新天地へ向かう姿の暗示です。
愚者×棒/ワンドのエース:「愚者」の新天地を目指す姿に、更に新しいアイディアや計画の立案というニュアンスが加わります。クリエイティブな事柄の始まり、これから行動して新しく何かを成し遂げていく暗示性が強まります。
愚者×棒/ワンドの8:「愚者」が新天地を目指した後、予想よりも速いスピードで事態が進展していくことを暗示します。
愚者×棒/ワンドのペイジ、ナイト、クイーン、キング:「愚者」×「棒/ワンドのエース」と似ていますが、それぞれの人物から助力を得られたり、また質問者自身が棒/ワンドのペイジ、ナイト、クイーン、キングの性質を持った状態で新しい始まりを迎えることを暗示します。(詳細は小アルカナ 棒/ワンドのペイジ、ナイト、クイーン、キングの項目を参照)
愚者×金貨/ペンタクルのエース:「愚者」×「棒/ワンドのエース」と似た意味合いですが、「棒/ワンドのエース」が質問者の行動力やアイディアがあることによる勢いを強調するのに対して、「金貨/ペンタクルのエース」は今後の努力が現実の成果に結びつく可能性を強く暗示します。一例として、収入の増加や長年作りたかったものが物理的に作れるなど、現実世界における実現とその副産物としての質問者の物質的な利得の可能性を示唆します。
愚者×剣/ソードのペイジ:「愚者」が新天地を目指す姿に、「剣/ソードのペイジ」の知性や知的好奇心が加わり、これから辿る旅路が学術的であったり、頭を使うものであることを暗示します。
愚者×聖杯/カップのペイジ、ナイト:芸術分野や恋愛感情、人間関係における、惹かれる気持ちの発露などをより示唆する内容になります。「聖杯/カップのナイト」よりも「聖杯/カップのペイジ」の方が始まりや第一歩といった感触を、「聖杯/カップのペイジ」よりも「聖杯/カップのナイト」の方が「愚者」の冒険やここで育った感情が現実での行動に反映される可能性を強く暗示します。
愚者逆位置×太陽逆位置:特に「愚者」が臆病になってしまっている状況に、「太陽」が逆位置で出現していることで「太陽」の正位置の楽観性が失われています。特に状況に対して退屈あるいは幻滅し、一歩が踏み出せない状態である暗示が強まります。
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玉置夕のやさしいタロット解説(大アルカナ編)
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