入院生活
入院生活
今回は私の入院生活についてお話してみたいと思います。
最初に入院するのは急性期病棟(閉鎖病棟)でした。
アルコール依存症の患者は、お酒を断って1週間前後に、
離脱症状と言って、強い幻覚を見たり、急激な鬱状態に襲われるなど、様々な症状が発露し
他社を傷つけたり、自殺をする可能性があるので
私が入院した病院ではそこに入ることになりました。
閉鎖病棟ですので、携帯電話も使えないですし、病棟の外に行くことはできません。
――実は医師から許可が出れば、院内を散歩したり、近所に買い物に出ることが出来るのですが、
私はそれを知らされていませんでした――
ですので、外部との連絡は、病棟に設置された公衆電話と、誰かがナースステーションにかけてきてくれた場合に限ります。
私は両親との連絡をそこでとっていました。
たとえば面会に来てくれる時間や、来てくれる時に持ってきてほしいものなどをそこでやりとりするのです。
公衆電話とナースステーションの電話ですので、長々話すことはできません。
1回長くても15分程度でした。
携帯電話が使えないので、LINEやネットで友達と話すこともできません。
そんな中で、私の場合は禁酒、禁煙、そして医師の方針なのか、何故かお薬も出してもらえませんでしたので、断薬もすることになりました。
離脱症状に関しては、一度禁酒をしたときに1週間で自殺未遂をしたので、その恐ろしさは分かっていましたが
今度は自殺をすることもできませんので、入院後丁度1週間で病室内で泣き叫びました。
同室の患者さん以外には気づかれませんでしたが、迷惑をかけてしまったので自分で患者さん皆さんに謝って回りました。
離脱症状は、泣き叫ぶことや自殺衝動だけでなく、発汗、微熱、だるさなど、様々な身体症状も伴います。
丁度1週間程度でしたので、看護師さんと相談して、離脱症状だろうと結論付けました。
事実、それ以降は症状は徐々に落ち着いていきました。
それからは、普通に暮らしていきました。
精神科の閉鎖病棟というと、とても暗く、みんな大変な気がすると思いますが、実はみんな穏やかです。
基本的にはデイルームと呼ばれる広い部屋で、みんなでお話したりテレビを見たりします。
日中は行動療法、運動療法と呼ばれるプログラムがあり、みんなで一緒にそれに参加します。
プログラムは多種多様で、行動療法にはぬりえやパズル、漢字練習や計算練習などがあれば
ピアノの先生が来てくれてみんなで歌を歌ったり、革細工を作ったりもします。
運動療法ではソーシャルワーカーさんと一緒に簡単な筋トレやストレッチ、ラジオ体操を行います。
参加するしないは体調に合わせて自由ですが、これが基本的な治療ですので、一応参加必須となっています。
自分のベッドにいても暇なだけですので、私はこれらに積極的に参加しました。
他の患者さんとおしゃべりすることもありましたし、ソーシャルワーカーさんや看護師さんとは仲良くお話していました。
週2回のアルコール依存症ミーティングにも必ず参加しました。
断酒を完璧になさって回復している人が多い中で、
私は断酒に非常に懐疑的だったのでその想いをぶちまけることも多々ありましたが、皆さんあたたかく迎えてくださいました。
ミーティングでは重い症状の方のお話をたくさん聞き、ワークブックで依存症とは何か、回復にはどうしたらいいのかを勉強しました。
みんな正直に自分の経験や意見を話していました。
ただ、どうしても気分がふさぎ込み苦しくなったり、死にたくなったりしました。
なので、頓服のお薬がどうしても欲しいと医師に言って、それだけはもらえるようにしました。
それから、ご飯を食べるのは大変な苦行でした。
当時の私はお酒がないと食事がとれなくなっていたので、
食事の時は、その時間にかかっていたラジオの音楽を聴き、腕を殴りながら、泣くのを耐えて食べていました。
頑張って頑張って完食することを続けていました。
それも、入院生活を続けるうちに徐々に慣れていき、普通に食べられるようになりました。
入院して一番良かったことは、普通に食事をとれるようになったことだと思います。
それ以外は、私は絵をかいたり、ラジオを聞いたり、本を読んでいました。
そのとき読んだ本はたくさんあるし、ほとんどの本で大感動して泣いてしまうこともしばしばでした。
ラジオは心の友でした。
朝起きたらまずラジオ。ローカルFMの朝番組と昼番組を聞き、そこで耳にした本を買ってきてもらったりしました。
深夜、目が覚めてしまったときは、オールナイトニッポン。
そこで知ったアーティストが今でも大好きで、毎週そのラジオを聞いているし、CDも買っています。
土日の日中にやっている音楽紹介番組は聞いてとても幸せでした。
ラジオのいいところは、本よりも簡単に気持ちの切り替えをさせてくれることです。
だるくて横になって目を閉じていても、ラジオなら聞くことが出来ます。
目を閉じてスタジオの光景をイメージしていると、とても楽しい。
そのまま眠りにつくこともよくあります。
鬱の時、ラジオはとても役に立つコンテンツです。
かなり落ち着いてきて、外に出る練習をしようということになり、
入院して1ヶ月で外泊許可をもらって自分の家に帰りました。
前日は遠足前の幼稚園児のようにわくわくして眠れず、初めて睡眠薬をもらったことを覚えています。
真夏の盛りに、約1か月ぶりに外に出ました。
気持ちよかった。
風が感じられて、照り付ける太陽がわかって。
「外だーー!」
と思いました。
本当に、ずっとずっと何年もひきこもっている人を尊敬しました。
私には無理だと思いました。
一人暮らしですので、だるくてもなんだかんだと外に買い物に行ったりしていたので、
完全なひきこもりとはまたちょっと違ったのです。
家に帰って、まずネットをあさりました。
ネットで、ラジオで聞いてメモしておいた曲を聞きまくっていました。
あとはツイッターにはりついて、友達と交流していました。
お酒を飲むと入院生活が長引いてしまうと思ったので、お酒は必至で我慢しました。
目の前にわざとおいてみて、ふたをあけて香りをかいでみたりしました。
でも我慢しました。
後に医者にそのことを報告すると、「そんなことまでしたの」と笑われました。
その後は週に1度外泊して、外の空気や自分の部屋での生活を思い出していきました。
そして入院して1ヶ月半で退院することにしました。
どうしても医者とそりが合わなかったので、早く医者を変えてもらいたかったからです。
退院後1ヶ月は、またご飯が食べられなくなったり、だるくて動けないことばかりでしたが
徐々に回復していきました。
結果として、入院したことは、とても良い経験になったと思いますし
自分の回復に役立ったと思います。
入院中に得た知識も沢山ありましたし、病院のこともしっかり見えるようになりました。
おおざっぱではありますが、私の入院生活はこんな感じでした。
入院した方がいいのか迷っている方や
ご家族に入院した方が良いのではないかと思う方がいる方のお力になれたらと思います。
何かありましたらご相談に乗りますので、ご連絡くださいね。
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