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洋服をつくるのに、プール6杯分の水!?毎日着ているエプロンの生産者さんに話を聴いてみた。

こんにちは、このnoteを開いてくださって、ありがとうございます。
TSUMUGI(つむぎ)にて、暮らしのアイテムをお届けしているめいこです。

みなさんは自分が身につけるものを作った人とお話したことはありますか?

普通にお洋服を購入する場合、どこの誰がどうやって作ったのかって、あまり気にする機会はないんじゃないかなと思います。少なくとも自分はそうでした。

けれど、TSUMUGIで商品づくりを担当するようになってから、少しずつそういったことが気になるようになってきたんです。

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今年4月TSUMUGIは、初めてオリジナルで商品を企画・販売しました。

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肩の凝らない4wayエプロン】。手前味噌ですが、私も毎日これを着て台所に立っています!

使い続けて、約半年。だんだん愛着も湧いてきて... 自分たちが企画したエプロンをどんな人たちが、どんな風に作っているのかもっと深く知りたい!と思い、今回エプロンの生産元である植山テキスタイルの社長 植山さん・三村さんへインタビューを実施しました。

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【写真:インタビュー時の様子】(左)植山さん(右)三村さん 今回は、zoomでお話を伺いました

実際に話を聞いてみて、本当に勉強になったので、みなさんにもシェアしたいと思って、このnoteを書いています。兵庫県で江戸時代から伝わる「播州織」の歴史、播州織・アパレル産業全体が直面している複雑な問題--普段身に付けている洋服や買い物について、一緒に考えるきっかけになれば嬉しいです。

自給自足の暮らしと、自然の恵みから生まれた ”播州織”

ーー こんにちは。今日はよろしくお願いします!まず初めに、【肩の凝らない4wayエプロン】の縫製で使われている”播州織”とは、どんな織り方なのか?また、”播州織”を始められた理由について、教えてください。

はい。播州織は、江戸時代に、ある宮大工さんが、京都の西陣織の技術を私たちの地元である播州地方に持ってきたのがはじまりだと言われています。当時の自給自足の時代には、がっちゃんがっちゃんする織機(はたおりき)が、どこの地域にもあったんですよね。ただその中でも、京都の西陣織は、技術が最も進んでいたので、そこから技術を持ち帰ってきたようです。

ーー へえ!なるほど。たしかに、自給自足の暮らしでは衣服も、自分で作らないとですよね。

さらに、播州地方は、鉱物が混じらない綺麗な軟水が豊富です。これが染物、特に豊かなデザイン性を特徴とする先染織物には、とっても好条件だったんですよね。当時は、近くで綿花の栽培も行われていたこともあり、播州織は戦前から地域を支える大きな産業に成長し、私たち植山テキスタイルも、地域の資源の恩恵を受け、播州織を始めました。

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【写真:播州地方の風景】水も自然も豊かな、播州地方には、神戸牛や、山田錦など美味しいものもたくさん

「もう洋服は要らない」と言われるなか、生産し続ける意味

ーー 創業から70年、植山さんで3代目だと伺っています。現在、播州織は地域にとってどんな存在なのでしょうか。

変わらず、地域を支える産業ではありますし、僕たちの会社に勤めている従業員も、ほとんどが地域の方です。

ただ、播州織に限らず、国内のアパレル産業は不況が続いています。市場にはものが溢れ、供給過多。「半分以上が捨てられる」なんて言われている今の時代に、これ以上衣服を作る必要があるのか、と問われる厳しい状況です。。ただ、衣食住の衣は、生活を彩り、個性を発揮できるものでもありますし、地域の生活を存続させるためにも、事業を続けていくのが僕の使命だなと感じています。

ーー 実際に、私は作ってもらったエプロンのおかげで、毎日台所に立つのが楽しくなりました。好きな衣服を纏うことで心持ちも変わりますし、私にとっては欠かせないものです。

そうですよね。今年の6月には「この厳しい状況のなかでも、お客様にとってより良いものを届けていきたい」と、創業以来初めて“想いを紡ぎ、生活を彩る”というミッションを掲げました。

これからは、良いものを作るのはもちろんですが、それを伝えていかなければならないと思っています。播州織全体に共通することですが、これまでは、どちらかというと受け身でした。商社さんやアパレルメーカーさんに言われたものを作ることが中心だったのですが、それだけではいけないよね、と。もっと自分たちが誇る技術やこだわりを、積極的に発信していかないといけないと思っています。

負担をかかえながら、それでも守り続ける水資源

ーー とある記事で、事業としてサステイナビリティも意識されていると拝見しました。具体的には、どのような取り組みをされているのでしょうか?

私たち含め、播州織全体で、排水に対して、厳しく配慮しています。播州織や先染織物は、ものすごい量の水を使うんですよね。綿を綺麗にするのにも水を使いますし、染色するのにも水を使います。いち工場あたり、25mプール6杯分の水を1日で使うんです。地域全体でみると、水を使う工場がいくつかあるので、合計するとかなりの量ですね。

ーー ええええ、すごい量…

そうなんです。さらに、僕たちの水の排出先である瀬戸内海はは、日本の中でも厳しいと言われている、瀬戸内海の内海排水基準というものをクリアしなきゃいけないんです。飲料メーカーや製氷メーカーがこぞって工場を立てるほど綺麗な水に恵まれている地域なので、その水を使って事業をしているからにはこの水資源はこれからも大切にしていかなければいけないなと思っています。

ーー ちなみに、水を綺麗にするって、具体的には何をするのですか?

処理場です。莫大なお金をかけて処理場を作り、水を綺麗にしてから排水しています。ただ、すごいお金がかかるので、工場にとっては経済的負担が大きいです。この費用が原因で、洋服の値段を上げなければいけなかったり、事業の継続が難しくなる、なんてこともよくあるんですよ。

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【写真:処理場の様子】汚水は処理場を通り、瀬戸内海環境保全特別措置法で定められた、水質基準以上の綺麗な水となり、自然に還る

ーー 洋服を作るために、これほど水を使うとは知らなかったので驚きました。

播州織のことをいろいろ調べている中で思ったことなのですが、こういった水に対する取り組みは、最近サステイナビリティやSDGsなどが話題になる前から、取り組まれていたことではあったんですよね。

僕たちは当たり前にやってきたことなんですが、発信していかないと伝わらないですよね。正直、技術革新で衣服の質の差は、ぱっと見では全然分からないんですよ。お客様の安心にも繋がる環境や労働に対する配慮について、これからはもっと伝えていきたいです。

安心して使って欲しい。環境面・労働面での配慮を見える化する努力

ーー 複雑な構造、様々な葛藤の中で、より良いものを作るために努力し続けられていることを感じています。こういった努力を、実際に伝えていくような取り組みで、もう実際に始められているものは、あるのでしょうか?

一目で僕たちを信頼していただけるように、今は、世界的なエシカル商品の認証であるGOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)を取りに行こうとしています。日本の会社さんだとまだ取られている企業さんはほとんどないのですが、海外だとパタゴニアさんなどが取得していますね。

GOTSの認知度が高まり、市場や事業者の興味が増加する中で、基準の対象範囲や基準の方向性への要望、期待度もさらに高度化し、サステイナビリティーの観点から、リサイクル(ポリエステル)やリユース(合成糊)、水やエネルギーの節約、動物愛護(絶滅危惧種、生き剥ぎ、生物試験)、環境保護(森林認証の紙)などの要件が増えた。
社会的規範の要件では途上国の労働環境への危惧から、防火防災、訓練の要件が追加され、一方でこの範囲で特化している基準による認証を参考にすることとした。(NPO法人 日本オーガニック協会HP参照)

審査方法は、監査の方がべったりと1日、僕たちの工場に貼りついて、排水の状況からトイレの衛生状況まで事細かにチェックを受けるんです。最低賃金の方を呼んで、本当に賃金をちゃんともらっているかや残業時間の長さを聞いたり、高所の作業の安全性を確かめたり。かなり細かく外部の方にチェックしていただいた上で、認証を受けることになります。

ーー 植山テキスタイルさんだけで、取られるのですか?

いえ、生地の生産から消費者の方に届くところまでのすべての過程を見て得られる認証なので、協力会社さんと一緒に動いています。こちらの認証を取ることで、水の綺麗さなど、地域全体のPRにも繋がるので、力をかけているところですね。

ーー 地域や資源の持続性を本当によく考えていらっしゃるんですね。知らないことばかりでしたが、本日はご丁寧に教えてくださりありがとうございました。

たくさんの方の想いが詰まった、エプロンを大切に使いたい

毎日着ているエプロンのことを、改めて知ることができた今回のインタビュー。アパレル業界の現状や、生地を生み出す際に使う大量の水のことなど、私にとっては知らないことばかりでした。

また、植山テキスタイルさんを始め、たくさんの方が私たち消費者や地域・資源のことを考えながら、様々な葛藤や努力の上に生み出してくださったエプロンであることを実感しました。さまざまな方の想いがつまったエプロンを、これからも大切に使い続けていこうと思います。

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今回ご紹介したのは、私が毎日着ているエプロンの裏側についてでしたが、この記事が、みなさんにとっても、普段身につけているものや買い物に、いつもとは違った目線で目を向ける機会になっていたら、とても嬉しいです。



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