ウトヤ島、7月22日
「ウトヤ島、7月22日」
2011年、ノルウェーの首都のオスロ政府庁舎爆破事件とウトヤ島銃乱射事件が連続して発生した。
政府庁舎爆破事件により8人、銃乱射事件により69人がそれぞれ死亡しており、両事件で77人が死亡した。ノルウェー国内において第二次世界大戦以降の最悪の惨事とされている。
(Wikipedia参照)
この銃乱射事件が起きたのがウトヤ島である。72分間、540発にも及ぶ発砲により、キャンプに参加していた69人の若者がたった一人の犯人によって、殺害された。
この映画はウトヤ島で起きた虐殺を描いたものである。銃乱射事件と同じ72分間をワンカットで撮影された作品だ。
ここからはネタバレも含むので鑑賞予定の方は注意を。
映画の感想は、72分間、常に緊迫感といつ殺されるかわからない恐怖を体験できた。
シリアスな映画にある、「主人公逃げて!」という感情ではなく、「どこに逃げるべきか」という被害者と同じ思考になり、この事件を追体験することができる。
また銃乱射が始まってから72分間、全くといっていいほど希望がない。助けが近くに来たり、
反撃の糸口を見つけたり、屈強な仲間がいたり。そのような場面は一切なく、なめらかに若者が殺されていく。そんな中、主人公たちは隠れることしかできなかった。
これが実際の虐殺なのだろう。命乞いも抵抗することすら許されず、作業のように命を奪われる。
結末は書かないが、エンドロールが終わると
体中の筋肉が硬直しているのがわかり、疲れを感じた。
苦しい映画だった。
だがこの映画に出会えたことはきっと財産になる。映画は絶望でしかなかったが、鑑賞した我々が希望に変えていかなければならない。
奇しくも同じ日に、ニュージーランドで49人が死亡するテロが発生した。
ウトヤ島の事件と同じく、人種や移民問題による過激派の犯行だった。
なぜ人は血や肌の色で差別をするのだろうか。親しい友人には敬意を払える様に、顔を合わせない隣人、緊張関係にある隣国の人間、世界の裏側にいる人間にも同じことができるだろうか。
悲しいニュースを見る度にこの映画を思い出すだろう。