振り返れば一本道~アートディレクター荒井耕治氏インタビュー(第4回)
アートディレクター荒井耕治さんのインタビュー第4回です。(最終回)
独立して順調にきていたところでリーマンショックにあい、人生観が変わったという荒井さん。最終回では、デザイナー人生を振り返って思うことや今後やっていきたいことをうかがいました。
マス広告からweb制作へ
自社のホームページは既に立ち上げていたので、それじゃホームページもやろう、とやり始めたのがその頃でしたね。それまでにもweb制作の仕事も多少はやっていましたが、「webもやりますよ」とは特に謳ってはいませんでした。
webの仕事もやはり人の繋がりで、ドールハウス作家の工藤和代さんの仕事をさせていただいて、人形作家の四谷シモンさんを紹介していただき、というようにアーティストさんの繋がりでwebの仕事が増えていったんですよね。いわゆる作家さんだけでなく、建築事務所さんやピアニストさんにも広がっていきました。
ファッションデザイナーの花井幸子さんの仕事も、今はパンフレットなどの紙媒体の仕事もしていますが、最初はモバイルサイトの仕事だったんですよ。それで、「荒井さん、紙もやるんですか?」と訊かれて、「元々メインはそちらなんですよ」ということで今のように全体をやらせていただくようになりましたね。
プロ、アマ問わずCDジャケットの制作依頼は大歓迎!
仕事は結局、人の縁
ギタリストのCharさんの仕事をしたのも、その頃です。CharさんがZICCAを立ち上げた時にwebでスタッフを募集していて、それに応募したらお声がかかりました。社長さんにお会いしたときにアルバムジャケットのお話があり、「気に入らなかったらごめんね」という相談で、デザインを提案して採用されました。
それをきっかけにCharファン繋がりの音楽仲間がバーッと増えたんですよ。
第1回ALSチャリティライブのリレーセッションの1シーン(youtube)
--- 先日の「ALSチャリティライブ」の方々もCharファン繋がりですか?
そうです、そうです。
音楽という繋がりであれば、35年前ころによくたまり場的になっていたレストラン「MOMINOKI HOUSE」に、ひょんなことで5年前に再度繋がって、そちらのサイトの制作もしています。
半世紀近くデザイナーの仕事をしてきましたが、結局、仕事って人の繋がりというか縁でしか来ないと思うんです。縁があって頼まれた仕事をちゃんと返していく。それがまた次に繋がる。そういうことでしかないと思いますね。
最近の趣味の一つは料理。創作料理「森のなかで豚さんに出会う」
人生はあみだくじのようなもの
---- 今は、ほとんどクライント直のお仕事なんですよね?
そうですね。代理店さん経由の仕事をしないわけではありませんが、例えば無償参加のコンペなどは、理由がない限りはお断りしています。
リーマンショックの時に少し人生観が変わったというか、それまでは仕事仕事できましたけど、リーマンショック以降はあまりガツガツせずに生活を楽しむことに少しシフトしました。料理の楽しみを覚えたのもその頃からですね。
もし今20代で、これから何になるかを選べるなら、デザイナーではなくコックになろうと思うかもしれません(笑)
---- デザイナー人生でよかったと思っておられるのは間違いないと感じますが...
それはもちろんそうです。人生はあみだくじみたいなものだと思います。進んでいる間は幾つもの道があるように見えますけど、振り返ってみれば一本の道ですからね。僕にとってはそれがデザイナーという道でした。
ただ、僕らの時代と今では状況が全然違います。僕らの頃は全くの白紙からアイデアを考えていけましたけど、今はデザインテンプレートがたくさんあるし、イラストも写真も「あり物を使って」と言われてしまうことが多いように見受けますね。
また、以前は、何人ものスタッフと一緒に仕事を進めることで、一人では出て来ないものが出てきたり、最初のアイデアが変わっていったりしましたけど、今は一人で完結してしまう仕事が多いように感じます。そこも大きな違いですね。
今の時代でもできあがったものに対する満足感はありますけど、プロセスとか可能性の広がりという点では難しい時代なのかなと思います。
代々木上原の事務所。奥に貼ってあるのがBIGLOBEのポスター
---- 事務所を代々木上原から自宅に移されたのもリーマンショックの後ですよね。よくお邪魔していた代々木上原の半地下の事務所は居心地がよくてついつい長居させていただいてしまっていました。
事務所は、1991年から2009年の間、代々木上原内で4回移転しました。あの半地下のところには10年いましたね。あそこの収納や家具をデザインしてくれた建築家に自宅の設計もやってもらいました。
事務所を自宅に移したのは2009年の8月ですね。
自宅兼事務所(遊佐清文氏設計)。吹き抜けが気持ちいい
---- あの頃のスタッフの方々はどうしておられるのですか?
3人のスタッフは、結婚して旦那さんの仕事の関係でつくばに新居を構え主婦業をしてたり、他の会社に移ったり、自分で会社を立ち上げたりしていますね。みんなwebの仕事をしていまね。今はやはり。
四谷シモンさんの人形制作プロセス動画のひとコマ
今後はアーティストさんの支援になることを
---- 最近、四谷シモンさんの動画制作なども始められましたよね?
はい、最初は動画版の人形教室を制作したら教室に通えない方にも学んでいただけるのではないかと思いましたが、シモンさんの教室の場合は生徒さんが各々違う作品を創られるので教室全体を動画でやるのは難しいことがわかり、まずはポイントを動画にして公開することで興味を持ってもらえたらと思っています。
シモンさんだけでなく、今までに繋がりのできてきたアーティストさんの作品や教室を紹介するサイトを立ち上げて、そこにくれば様々なクリエイティブに触れられ、学べるようにしたいと思っています。まだ構想段階ですけどね。
---- また新しい領域に踏み出されるということですね。楽しみにしています。今日はありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
[了]
(2018/10/10 寺家ふるさと村 Jike Studio にて)
関連リンク: 有限会社アライブ http://www.hi-alive.com
※写真は全て荒井耕治さん提供
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