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「ボテロ展 ふくよかな魔法」で、魔法にかけられてみた―特別内覧会レポート
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「ボテロ展 ふくよかな魔法」の特別内覧会に参加しました。
人物をはじめ、あらゆる形がふくらんでいる特徴的な作風で知られるフェルナンド・ボテロは、南米コロンビア出身の美術家。今回の企画は生誕90年を記念したもので、日本国内では26年ぶりの大規模展とのこと。
正直、ボテロのことはよく知らず、告知を見ても「どうしても観たい」と思いはしませんでした。実際に観たら、自分も魔法にかけられた気がしました。
どういうことかというと、まず無意識に想像していたよりもずっと絵のサイズが大きく、かなりの迫力。
例えば、洋梨が一つ描かれた作品は、縦が2m以上あります。実物の何百倍のサイズの洋梨から放たれるジューシーさや香りに全身を包まれるようでした。その感覚を味わいたくて、何度も観に戻りました。
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告知ポスターなどを観た時から、「色彩は好きだなぁ」と思っていましたが、朱がかった赤と黄色を含んだ緑など、使われている色そのものもさることながら、色面の構成にとても惹かれることが今回の展示を観てわかりました。一見単純に見えて実際は綿密に計算されている抽象画が好きなことに通じるものがあるのかもしれません。
明るい色の印象を強く受ける作品が多いけれど、「夜」という作品の音声ガイドによると、画家が最も好んでいる色は黒だそうです。
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もう一つ、ボテロ作品の特徴として、人物が全て無表情なことがあげられます。楽器演奏やダンスなどの楽しそうなシーンでも人々は皆、無表情です。これは、人物画であっても静物画のように鑑賞してほしいと作者が考えているからとのことでした。
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20歳の時にヨーロッパに渡ったボテロですが、コロンビアにいた20年間の記憶が創作のベースになっています。その一つが宗教画。キリストもマリアも天使もぷっくりぷくぷく。形がデフォルメされていることに加え、無表情で魂が抜けているようにも見えることから、風刺的な印象を強く受けました。
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「ヴァチカンのバスルーム」という作品(下右)の小さな人と、なぜバスルームなのかがとても気になりましたが、学芸員の方に訊ねそびれてしまいました。
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ところで、ボテロはなぜこの独特の様式で描くようになったのでしょうか?そのきっかけは、マンドリンの穴を小さく描いたこと。輪郭や細部との対比で楽器が膨らんで見えることを発見し、重大なことが起こったと感じたそうです。
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彼が施すデフォルメの特徴が一番わかりやすいのは、「バーレッスン中のバレリーナ」という作品。全てを大きく膨らませるわけではなく、足が小さく描かれていることで、脚と身体の膨張感が強調されています。
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ボテロは、祖国コロンビアの国情を強く感じさせる作品も描いています。例えば、「バルコニーから落ちる女」。コロンビアでは実際にバルコニーから落ちて亡くなる人がいるそう。それは「落ちる」のではなく、「落とされる」。この絵でも、画面右下に描かれている男性は加害者側なのではないかと。
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大統領もぷっくりと丸く、閣僚たちの肌や髪の色に、様々な人種から成る国であることが反映されているとのこと。
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20歳でコロンビアを出てから70年。祖国の想い出をベースに作品を創り続けることについて、思うところがありましたが、それはまたの機会に。
今回の展示の作品数は70点。6章構成のうち、「変容する名画」などのコーナーについては、他の方が詳しくレポートしておられるので、一部の写真を掲載するに留めます。
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ボテロ作品中の人物は、ふっくらしてはいますが、シニカルな印象こそあれど、“可愛い”とは感じません。「小さなフィギュアにしたら可愛いのかも」と思いながらミュージアムショップに立ち寄りました。
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フィギュアではありませんが、可愛い…。サイズによる印象の違いを改めて感じます。グッズは他にも様々な種類があり、見るだけでも楽しめました。
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会場入口近くでは、立体作品がお出迎え。
会期は7月3日まで。行こうかどうしようか迷っている方はぜひ。
※写真は本展主催者の許可を得て撮影しています。
通常は、第6章「変容する絵画」の一部作品のみ撮影可能。5月中の金・土の17時以降は全作品の撮影可能。
展覧会名 ボテロ展 ふくよかな魔法
BOTERO – MAGIC IN FULL FORM
会期 2022年4月29日(金・祝)〜2022年7月3日(日)
開館時間 10:00〜18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土は21:00まで(入館は20:30まで)
会場 Bunkamura ザ・ミュージアム
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