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コロナ病棟で働いていて1番心が辛かったこと

それは、余命数日と宣告されても、亡くなってもなお、家族に会えない患者さんや、患者さんに会えない家族を見ることだった。



私がコロナの患者さんに初めて会ったのはちょうど2年前。

2月5日に横浜港に着港したダイアモンドプリンセス号。

元々、循環器病棟であり感染症受け入れ病棟でもあった私の病棟はコロナ患者さんの受け入れを開始した。

当時、何もかもが手探りだった未知のウィルス。

言葉の通じない外国人とのコミュニケーション。

私たちも感染するかもしれないという不安や恐怖。

看護師として何をすることができるのかも分からないジレンマ。

マスメディアではいろんな情報が飛び交い、混乱もうんだ。

看護師というだけで周りからの色々な目があった。

初めの頃、循環器とそんな未知のウィルス感染症患者との混合の病棟となったうちの病棟の状況は悲惨だった。

どんどん重症化していく患者。急変リスクの高い循環器の患者。

何が正解なのかも分からない。

そんな中、私の病棟はコロナ専門病棟となった。


それから2年が経ってこの3月で異動命令が私にきた。

この生活ももうすぐ終わりかと思った時、振り返ると本当にいろんなことがあった2年間だったから、残しておきたい。

私の人生の中でも、看護師人生の中でも、忘れられない、貴重な2年間だった。

そんな2年間で私が一番辛かったこと。

それが、亡くなる瞬間、亡くなってもなお、家族に、本人に会えない人たちを見ることだった。


そんな出来事は2年前から、今も続く。

つい最近も。。。



入院するまで元気に暮らしていた子供も孫も一緒に暮らすおじいちゃん。

入院して直後、受け持ちさせていただいた。

その後しばらく担当にはならなっかたが病状は改善していた。

そんな中、突然の容態の急変。

もう、反応がない。呼吸が弱い。心臓の機能が低下している。

もう何十分ももたないことが看護師でもわかる。

その日はフリーで受け持ちも持たないで動いていた私。

だから、患者さんへの看護に決定権はない。

でも、、、でも!!!

「家族に連絡しましょうよ!!!!」と先輩や上司に訴えかけた。

「う〜ん、、、。」と渋る先輩たち。

電話で声だけでもかけてもらいたい。耳は最後まで聞こえてる。

声をかけてあげてほしい。

なんでダメなの!!!

、、、、わかっていた。先輩が渋る理由はわかっていたし、冷静に考えなくてはならないこともわかっていた。

本人は、こんな姿を家族に見せたくないとさいごまで言っていた。だから、前日もテレビ電話ではなく、電話だけしていた患者さん。本人の意思もある。

家族に安易に電話をして、心配にさせるだけで生きているうちには会うことができない。今すぐ来てください!と言うことはできない。

この連絡が本人にとって家族にとっていいものなのか、こたえがないから。

それの受け止め方は人それぞれだから。

こんなこと、多くはないにしても、何回繰り返したんだろう。

感情的に、自分の気持ちだけで突っ走ってはいけない。

わかっている。


でも、そんなことを話している数分でみるみるうちに心臓が弱っていく、、、。

もう心臓も止まっちゃう。。。

「家族に電話していいですか。本人に電話をするかどうかは家族に聞いて決めてもらいましょうよ。昨日の電話が最後だったっていう方が私だったら嫌です。」

先輩の意見を押し切って電話をした。

「呼吸止まりました。」

電話をしている最中に、先輩の声が聞こえた。

「声かけに反応は無くなってしまっているので返答は無いですが、弱いけど心臓は動いています。声は届きます。今すぐ電話していただけないでしょうか。」

「電話させてください。」家族はそう答えてくれた。

患者さんの病室で待機している看護師が、患者さん本人の携帯で家族からの電話をとり、患者さんの耳に当てた。奥さんや娘さんを初め、一緒に住む家族が声をかけてくれた。

もう、呼吸は止まっていた。でも、まだ、心臓は動いていた。

大丈夫、聞こえたよ。



普通だったら、いくらコロナ禍とはいえ、必要時には面会してもらう。

余命宣告されたなら尚更。

でも、それが許されない。

そもそも家族が濃厚接触者だから家から出られないことも多い。



死は、いずれ訪れる。

癌かもしれない。

肺炎かもしれない。

難病かもしれない。

突然の事故かもしれない。

老衰かもしれない。


日本でのコロナの致死率は特別高いわけじゃない。

ただ、今の感染症分類が変わらない以上コロナだとね、基本的には家族に会えないの。本人に会えないの。

だから、とにかく重症化させたくない。

でももうその人の寿命がそこなんたとしたら、せめて一般病棟に出られて家族に会える時までなんとかしたい。

コロナの患者さんへの一番の思いはそれが強いかもしれない。

だから、とにかく早く改善するように、重症化させないために必死でやってきた。


そんな2年間だった。

統計をとったわけではないが、2年間コロナの患者さんを見てきて感じているのはそれまで元気だった若い方が亡くなってしまうとしたら、多くは入院した時点で重症化してしまっている人たちだった。

でもね。重症化は防げるの。早期発見できるの。

重症化の早期発見ができていて、早期発見した時点での対処方法がわかっていたら?

自宅で突然死する自立した元々元気だった人も出ないと思う。


なんでマスメディアではそれをやってくれないの?


だから、1年前、一人でも多くの人に知ってもらいたいとこの記事を書いた。



そして、家でもできることはもっとあるの。

一人でも知ろうとしてくれる人がいてくれるなら、こういう情報を書いていたいと思う。

看護師として患者さんにやっていることを家でもやれたら。

入院までしなくても家で過ごせるの。



みんな生きているんだから、いつか最期を迎える。

だから、正直亡くなる人を減らすことは絶対に無理。

ましてや私みたいな看護師ごときがそんな大それたこと口にするだけでも烏滸がましい。

でも、だからこそ、それならば。

会いたい人に会えない最期を迎える人が、一人でも減りますように。


あと3週間。

あと少し、私にやれること、やらせてください。








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