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「セリフを相手にかけなさい」の意味

演技レッスンしていると「それ、よそでも指摘されるんですよね」と言われることがあります。大体、下記の指摘です。

•文字を読んでしまっているよ
•セリフの内容を説明してしまっているよ。

役(キャラクター)自身が“考えをまとめながら何かを説明するセリフ“というのも、もちろん場面によってはありますが、
セリフは大体において、感情の織物の端緒として漏れた言葉だったり、何かへのリアクションだったりします。

『相手にセリフをかけろ』

そう言われるから、相手役にむかって丁寧に、平仮名、漢字、カタカナに情感を込めて読みながら、かけつづける。
相手にむけてかけているのに、

『だから!相手にかけろっ!会話しろ!』

と、また同じお叱りを受けてしまう。

伝えるべきセリフの中の感情・情感とは?

情感というのは、先に書いた「感情の織物の端緒」でしかないはずなのに、
「この役(キャラクター)はいま悲しいんですよ!わかってください!」と、役者自身が「相手役を説得したい」にすり替わっている。
この行為を、『相手にセリフをかける』と勘違いしてはいませんか?

そして、助けを求めて(誰か私の演技を上手く修正してください、と)いろいろなワークショップやレッスンを受け、そこでもやっぱり同じ指摘を受けて終わる。

これ、指摘された時にとるアプローチが「誰か別の人に習えば変わるかも」と、他力本願だから、永遠のループになるんです。
芝居の上手い人というのは、こうした指摘で、会話の分析や自分の発話の分析に目を向けた方々なんですよね。

その分析をしろ、という具体的な指示を出されている講師は沢山います。(私はそうした瞬間を沢山みてきました。)
しかし、言われても、やり方がわからないから思考停止してしまう。

取り組み方のご提案

ここまで読んで、自分のことのように感じた方は、小学生の時にやった国語のテストやドリルを開いてください。

問い 棒線部を言ったときのAくんの気持ちに合わないものはどれか、ひとつ選びなさい。

1 はずかしい 2 くやしい 3 あやまりたい 4 たのしい

というような選択問題があったでしょう?
気持ちに合わないのはひとつで、残りの三つは合うんです。
ひとつの言葉に、複数の感情が折り重なって出てくること。そしてそれは前後の文脈やそこまでの彼の物語によって読み解くものであることを、小学生の時に皆さんは学んでいるんです。

『その読み解いた複雑なものが、会話というラリーの中で反射として出てくるとどう聴こえるか、みせてくれ』

これが『セリフのかけあいをしてくれ、セリフを相手にかけろ』の正体です。

織る塩梅(複数の感情が絡み合った中の、それぞれの感情がどう見え隠れするか、とか、どこで割合が変わるとか)を何パターンか即座に出して、相手役が反応しやすい演技をさぐるのが、稽古です。
バレーボールに例えるなら、「これならアタック決めやすいだろうと思うトスをあげてみて、相手の打ち方をみる」。その「トス」が、「相手にかかったセリフ」なんです。(なのに、ドッジボールのように「分かってよ!」とぶつけに行くから、違うと言われる)

演技講師や演出家は、義務教育で学んだことを役者が出来ていないとは思わないので、『なぜ出来ないのか』わからないわけですね。
しかも、わかったとしても、まさか小学生の国語の復習から付き合うわけにはいきません。

まぁ、なので、国語の教材を引っ張り出して、自分で復習しましょう。
問題に使われている「登場人物の言葉」を、声に出してみたら良いと思います。
そうして、今度は同じ方法論で、台本を分析しましょう。
自分でやれることをやりながらでないと、いくらアドバイスもらっても成長変化は得られません。

参考までに、国語ドリルへのリンクをひとつ貼っておきますね!
『ちびむすドリル』
https://happylilac.net/pdf/japanese3story-1608-01.pdf


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