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彩色兼美

私の名前は「彩子」と書いて
「さいこ」という。

父がつけてくれたこの名前は
珍しいにもかかわらず

中学校時代には
同じクラスにもう一人
「彩子(さいこ)」という名の子がいた。

私は背が高くて大人顔
彼女は背が低くて童顔ゆえ

私が「彩子さん」
彼女が「彩子ちゃん」と
呼び分けられていた。

読み仮名をふってなければ
たいていの人は「あやこ」と読むし

「さえこ」と聞き間違える人もいる
自分の名前が

私はずっと
あまり好きじゃなかった。



でもこの名前は
「花」がつく姓と
見た目の相性がよく

奇遇にも結婚して新しくなった姓にも
「花」がついていたものだから

フルネームを見た人からは
「綺麗なお名前」
「芸名みたい」
と褒めてもらえたり

印象に残り
覚えてもらいやすいという
利点もあった。

そのおかげで深く繋がった
ご縁もある。



生まれてきた娘には
私の名前から一字とり
「彩葉」と書いて
「いろは」と名付けた。

心の深いところで
付き合うようになった友達の
娘ちゃんも

全く同じ「彩葉ちゃん」だと
知ったときには

同じクラスに
「彩子ちゃん」がいたときと
同じくらいの衝撃を受けたものだ。



いつしか「彩」という文字を見つけると
嬉しくなっている私がいた。



最近になって
生年月日と姓名で
ラッキーカラーを鑑定してもらったところ

黄色が基本色ですが
どんな色でもOK
というラッキーな方ですと。

そんな驚きの鑑定結果も
もしかしたら「彩」る「子」という
名前のおかげなんじゃないかと
思えてくる。



色といえば
私のイメージカラーを
人に聞いてみたところ

高貴な「ロイヤルブルー」
癒しの「ラベンダー」
可愛い「ピンク」
綺麗な「深紅」などなど

実にさまざまな回答をもらった。

その一つが「オレンジ」。

明るく元気で華やか
優しくどこか儚い
喜びや幸福感
親しみや解放感

オレンジのイメージは人により
さまざまだと思うけれど

私の頭に
思い浮かんだのは太陽。

生まれて初めて人から
「太陽みたいな人」だと
言ってもらって

見えるときも見えないときも
ずっとあるという安心感

遠く離れていても
感じられる温かさ

イソップ童話の「北風と太陽」の
太陽みたいに
自然と動かされてしまう何か

そんなものを与えられる人に
なりたいと思ったことを
思い出した。



私のエッセイ集を
自分のお母さんに
プレゼントしてくれた友達が
いるのだけれど

彼女から

母にさいちゃんの写真を
見せたら

エッセイを書いてる友達?
才色兼備だね

って言ってたよ

「彩色兼美」
めちゃくちゃ造語だけど

とメッセージをもらった。

すぐれた才能と美しい容姿の
両方をもっている
という意味の「才色兼備」から

私の名前と美しさを強調して
贈ってくれた「彩色兼美」という言葉。

私はその言葉に
ふさわしい人になれているだろうか。



この世に誕生して40数年

自ら不幸を選んだり
悲劇のヒロインになっていたときも
あったけれど

今十分に幸せ。

そう感じられている自分も
自分の名前も
私は好きだ。

この世界に産んでくれた母
この名前を授けてくれた父に

20年前花嫁からの手紙を
素直になれず読めなかった
ひねくれ者の娘も

今なら心から感謝の気持ちを
伝えられそうな気がする。

さまざまな経験をする度
いろいろな色が塗り足され
全てが今の私を彩ってくれている。

だからこそ人生は
美しく愛しく思えるんじゃないかな。

私だけじゃなく誰もがきっと
「彩色兼美」な人生を
歩んでいるに違いない。

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さいちゃん
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