絶望のなかの希望
『生きながら十代に葬られ』(イーストプレス)
また強烈なタイトルだ。
『この地獄を生きるのだ』
『わたしはなにも悪くない』
に続く、作家小林エリコさん三冊目の著書。
小・中学校での度重なるいじめ、
「おまえは嫌われている」と言い放つ教師、
自分が引き起こした学校崩壊、
理解してくれない親との確執。
著者の十代は、痛々しい思い出で埋まっている。
処女作『この地獄を…』で描いた、社会人になってからの
自殺未遂や精神病棟への入院、失業、生活保護といった
壮絶な体験のもとになったともいえる種を丁寧に描いている。
丁寧に描きすぎて、その作業はさぞ苦しかっただろう。
実際、著者自身が、「おわりに」にこう記している。
「この本を書いている間、私はほとんど泣いていた」
なぜ、彼女はそんなにつらい子ども時代を
送らなくてはいけなかったのか。
親はなぜ彼女の持つ才能を信じられなかったのか、
友人たちはどうしてここまで一人のクラスメートを追いつめたのか、
教師たちはなぜ生徒の声を聞けなかったのか。
さまざまな疑問が心によぎる。人の暗いところが浮かび上がる。
そしてこの本をのうのうと読んでいる自分自身の
これまでの生き方や、子育てにある
うしろぐらいところが思い出されて、読んでいるときつくなる。
それでも、この物語には一筋の強い希望の光がある。
どんなに周りから自分を否定されても
自分自身も自分を否定していても、
彼女は、「絵を描きたい」「表現したい」という思いを捨てない。
町の小さな画材屋にかよい、何枚もパステル画を描く。
クラスの誰ともわかちあえないロックを聞き映画を観る。
ミニコミ誌に自分の体験をつづり、挿し絵を入れて販売する。
仕事をし、恋をする。
その生きようとする力に、わくわくさせられる。
twitterでときおり著者は「死にたい」と発信している。
わたしにはなにもできないけれど、いつも「生きてて欲しい」と思う。
勝手な一ファンの願いだけれど、
本を読み終わったすぐあとに、
また彼女の作品ができあがるのを楽しみにしてしまっているから。
こちら著者のnoteから「はじめに」が立ち読みできます↓