JIBUNSHI
メンズも入れての営業が始まった頃から、私は社長によく会うようになっていった。
営業の場面で社長が必ずいたのだ。
そう言えばいつだったか、社長が
「私が動かないとだめだ、回せない」
と言っていたのを思い出す。
回せない、というのは会社の資金のことだ。
金融借り入れシステム
私も営業のアフター場面に呼び出されるようになったこの頃、後に大事件の原因となる、あるシステムが導入されていることを知り始める。
あるシステムとは、“金融借り入れ営業”だ。
うちのマッサージをコース契約してもらう際、いわゆる民間の貸金業に借り入れを申し込んでもらい、ローンを組んでもらうというもの。
なぜこの手法なのかというと、なんと、うちのサロンが信販を引けていなかったからだ。
信販とは、クレジットカードのショッピングローンと同じシステムで、信販会社が代わりにサロンに支払いをするので、支払いを分割なりで信販会社にしていく、というものだ。
うちのサロンが信販を引いていなかった理由はいまいちわからないが、一度先生に理由を聞いてみたところ、信販を引くにはお金がかかる、決済したとしても手数料がかかるなど言っていたので、お金の問題も大きかったようだ。理由はもう一つあって、それはこの後お話する。
そしてこのシステム、実は私も取り入れてしまった。
簡単な借り入れ
「M18も借り入れやってくれないかな」
この話をされたのはある営業後、残って社長と飲んだ帰りだった。
もちろん会社が支払うし、M18は何も心配することはないと。
社長のことを心から信用していた私は、考えることもなく、二つ返事で次の日には金融巡りをしていた。
クレジットカードを作るときと一緒で、ちゃんとした職場先がないとはねられる。
当時マンション型サロンで、会社として登録もしていなかったので職場確認が出来ない。信販会社を引けなかった理由はこれもあるだろう。
そこで、社長の昔から付き合いのある、会計事務所の先生に頼み、そこで職場確認をさせてもらうことになった。
私はまだお会いしたことがなかったが、恰幅の良い、人の良い方らしい。
しかし私には一つ問題があった。
自身が客だった頃契約した、例の宝石やマッサージの月賦を支払っていなかったのだ。というより支払えなくなっていたのだ。
ちゃんとした月の固定給がなかったので、次第に支払いが滞り、督促を受けていた。
しかしこの問題はこのはちゃめちゃなうちのサロン形体が功を奏し、消費者生活センターに電話をしたらなんと支払わなくても良くなった?のだ。
督促の電話がなくなったので、おそらくそういうことだろう。
最近のこういった事情から、やはり私の借り入れられた額は少なかったが、なんとか数社からの借り入れをすることが出来、社長の役に立つことが出来た私は大満足だったのである。