いつか、失くなってしまうかもしれない、きらきらした学童の毎日
毎日、たくさんの笑顔に溢れてて、きらきらしてるなあ…。。と思う、学童での日々。後、2年で失くなってしまうかもしれない。と思うと、いてもたってもいられなくなって、これを書こうと思い至りました。ただの記録。思い出。人物名は変えてます。
1日目 4/17 晴れ
「ひっっっとみん!僕ね、アニメのヒロアカ全部見た!」
「まじか!よかったでしょ?」
「うん。あのね、13号先生の素顔が綺麗すぎて…」
「わかる。めっっっちゃわかる。可愛すぎだよね。目、きらっきらしてたもん。驚いた」
と、台所でおやつを作っていた私に声をかけてきたのは6年のゆう君。5年の3月に入りたてなのに、あっという間にここに馴染んでしまった。得意なのはつつけん玉。
「私ね。レディナガンが好き」
「あーーわかる。あれね、浮遊使うやつ」
「スカイウォークじゃなかったっけ」
「そうだっけ?」
そんな会話をした後、得意のつつけん玉(略してつつけん)を片手に台所から去っていった。台所に子供が入るのはパートの金井さんが嫌うけど、私は、子供が、気軽に台所に出入りできるのは本当の家みたいで素敵なことだと思う。それに、『食事を作る場所』って、とても身近なもので、隔離するべき場所ではないと思ってるから、何も言わない。流石に、火を使っている時に突撃されると怖いから注意はするけど。
「ひとみんー。今日暑すぎなんだけど…」
と、言いながら入ってきたのは3年のまゆちゃん。
「暑いよね。お茶飲む?」
「いやー大丈夫ー」
と言いながら去っていった。何しに来たんだ。
おやつ作りを一段落終えて部屋のなかを見て回る。机に、大量のアイロンビーズが広がっていた。
「何作ってるの?」
「ミニオン!」
「……の、立体的なやつです…」
元気に答える子供の声と、それとは対照的な呆れたような、疲れたような大人の声。新1年生のこうき君と、アルバイトのあいちゃん。
「ミニオン作ってるの?しかも立体!すごいじゃん」
「そうだよ!僕は、集める係!」
集める係。ということは、組み立てはあいちゃんがやっているのか。それははたして、こうき君が作っているとは言えるのだろうか…?とは思ったが、口には出さないでおく。
「大変だけど、これ、完成したら感動するよ!きっと。頑張ったら達成感すごいと思う」
どこまでできるかわからないけれど、楽しそうにやってるから良いかな。
そう思って、あいちゃんにお任せして次に。(あいちゃん頑張れ…!)隣の机では、2年生のひろみちゃんが、熱心に工作していた。
「何やってるの?」
「ミニオン作ってる」
こっちもミニオン。
ミニオン、流行ってるのかな…
「ひっとみん」
「ん?」
「プレゼント作るのって、楽しいよね」
「プレゼント作っているの?」
どうやら、プレゼントらしい。ホイップクリームの空き箱を切って、丸めて、セロハンでくっつけて、ペンで黄色く塗っていた。なかなかの出来。
「これから、バナナつけるから、バナナ作るの」
「バナナ作るのか」
「うん」
そんな、他愛ない話をしながら、奥に目を向ける。そこでは、仲良し4年男子組の2人がにらみあっていた。
「なにしてんの?」
「ゲーム」
それはわかる。
出しているのは『ゴブレット・ゴブラーズ』
進化した○✕ゲームだ。大中小のコマがあり、大は中に被せることか出来、中は小に被せることが出来る。これにより、中心をとられたら勝てないゲームではなくなる。ちなみに、私はこれが下手くそすぎて、子供たちにあっという間に負ける。
しかし、知っているゴブレット・ゴブラーズの対戦方式ではない。格子状になるはずの4本の棒を平行に並べ、間にコマを並べている。
「これね、相手の陣地に、自分のコマを進めることが出来た人の勝ち」
そう言ったのは、はるおみ君。こうき君のお兄ちゃんだ。
「大は中に勝てるの。中は小に勝てる。で、小は大に勝てるの」
と、かいと君。こちらは、ひろみちゃんのお兄ちゃん。
「あ、小は、大に勝てるんだ」
「だってそうしないと、大が無敵じゃないか!」「じゃんけんみたいな感じ」
「なるほど」
将棋とか、チェスみたいなイメージかな。
「良く考え付いたね。はるおみのアイデア?」
「おれだよ!」
かいと君が抗議の声を上げた。
「かいとのアイデアか!本当に、良く考えたね」
「でも、おれヤバイ」
盤上(?)を見ると、かいと君の陣地にはコマが2つ。はるおみ君の陣地にはそれ以外全てのコマが集まっている。
「これってもしかして、将棋みたいにとったコマも使えるの?」
「うん」
と、はるおみ君。
なるほど。かいと君が2コマに対し、はるおみ君が10コマ。圧倒的不利だ。頑張れー。と(心のなかで)応援していた矢先。
「こんにちはー」
と、明るい声が。あ。
「はるおみと、こうき君のお母さん!」
誰かが声を上げた。あらら。残念。
「お母さん!今良いところだったのにー!」
と、はるおみ君が抗議する。
「ごめんね。でもほら、水泳だから。こうきも呼んできて」
「こうちゃん行くかなあ…」
切り替えが難しいこうき君。水泳より学童の方が楽しいらしく、いつもなかなか行きたがらない。『行かない!!』となるとテコでも動かなくなってしまう。お兄ちゃんも苦労しているらしい。「大変なんだよ全く…。。。」とよく言っているが、さりげなく指導員に弟のサポートをお願いしたりと、細やかに弟の面倒を見ている。
さて。案の定、アイロンビーズが楽しいこうき君は「水泳行かない」と頑として動かなくなった。
お母さんがあの手この手で行かせようとするが難しく、「じゃあ、必ず日曜に行くんだよ」と念を押して、はるおみ君の水泳帰りに迎えに来ることとなった。
「さようなら。いってらっしゃーい」
と、はるおみ君に声をかける。「じゃあねー。またねー」と元気に挨拶をして出かけていった。
残されたかいと君は、得意のけん玉の練習。そこに、ゆう君も混ざり始める。
「けんに入れるのが難しいんだよ…」
と、苦戦しているゆう君を尻目に、かいと君はジャグルや、フリップといった高難易度の技を次々とこなしていく。
「まじで、どうやってるの、それ…」
「え?こうだよ」
と、さも当たり前かのようにジャグルを見せてくれるが、私にはもう、けん玉がどんな動きをしているのかさえ良くわからない。
「つつけんなら、出来るのになー」
と、ぼやいているゆう君。確かに、つつけんに関してはゆう君が一番出来るかもしれない。
つつけんとは、普通のプラスチックの筒に、ボールがついているだけのけん玉だ。使い方はけん玉とほぼ同じ。
と、子供たちを見ているうちにおやつの時間が近づいてきた。慌てて台所に戻り、最後の仕上げをし始める。
「はーい。おやつにするよー片付けしてー」
と、声をかける。が、動きがすこぶる遅い。いつものことだ。
「今日のおやつなにー?」
そう声をかけてきたのは、2年生のりきや君。早く片付けをしなさい。
「とりめしー」
とだけ声をかけ、準備を進めた。
「ただのごはんじゃん」
そう言ったのはこうき君か。
「ただのごはんじゃないよ。お醤油とかいれたもん」
「見せて。やっぱり、ただのごはんじゃん。明るくして」
明かりを暗くしていたので、わからなかったらしい。
「わかったから、もう持っていくから早く支度して」
そう言うと、たかたかと部屋に戻っていった。やれやれ。
外で一輪車をしている組にも声をかけ、準備を促す。さて。今日はどれだけ時間がかかるかな。
結果、15分は時間がかかった。まあ、早い方か。
「はーい。じゃあ、1年からとっても良いよ」
そう言うと、真っ先に駆けつけてきたのは、りきや君と、同じクラスのゆうし君の2人。あんたらは2年でしょうが。
「2年生からがいい!!」
そう言うりきや君に対し、「だめー。あなたたちも、去年までは1年からだったでしょうが」と返す。すると
「え。でも。高学年からもあったよ」
と、ゆうし君。この子は、頭の回転が早くてなんでもそつなくこなす。優秀だが、ずる賢いところもある子だ。
「たまにね」
そんなやり取りをしながら、わいわいとおやつの準備を進める。
「用意はいいですか!」
「いいです!」
「ご一緒に!」
「いただきます!」
全員で挨拶をして、食べ始め。
「これ、めっちゃ美味しい!」
「おかわりある?」
低学年を中心に、そんな声が上がる。よしよし。
「あるけど、そんなにないから、食べたい人手上げてー」
1.2.3.4.5.6.7……ほぼ全員ですね。
全員に行き渡るくらいの少ない量を盛り付け、それで余ったのを、さらに分ける。
「じゃあ、高学年からおいで」
と、声をかけると、今日いた6年2人がすっ飛んできた。流石6年。良く食べる。ごはん5合炊いたのに。次作るときは倍炊かないと。
「めっちゃ美味しかった!後100杯はいける!」
と、少食のりきや君。そんな食べんだろ。君。
「おお!それは良かった。次また作ってあげるね。量増やして」
「よっしゃあ!明日作って!」
気に入ってくれて何より。でも、明日は作らんよ。
片付けの後は、5時半帰りとお迎え組と別れる。それまでは自由時間だ。
「ねえ。一輪車行こ?」
そう声をかけてきたのは、りきや君。現在午後5時。夕方とはいえ、まだ外は明るい。なのでこの時期だけ、6時くらいまでは外遊びを許している。うるさくないように、だが。
今、一輪車のブームがすごい。4ヶ月くらいずっとやってる。公園も行かないほどだ。一輪車を広めた張本人としては、計画通り…!と、にやりとしている。公園には行ってほしいけど。
「いいよ。ここの机拭いたらね。ちょっと待ってて」
「早くね」
下に行くと、早速乗り始めるりきや君。学童下にはスロープがあって、一輪車の練習場所としては最適だ。私も乗り始める。こう見えても、私もそこそこ乗れる。
「ひっとみん。ひっとみんは曲がれる?」
「いやーー。昔は出来たんだけどね。今はあんまり出来ない」
「そうなんだ」
そんな他愛のない話をしていると、まゆちゃんも降りてきた。
「はあー。ひっとみんが下にいるなんて…最高だ…」
どんな感想だ。勝手に感動されてしまった。そんなに珍しい?
その後、5時半帰りの子供たちを見送り、残った子供たちと遊びながら、日誌をつけたりする。やっと、静かな時間がやってくる…
かと思いきや、6時半くらいまでは残っている組がわいきゃいするのが定石だ。今回は暗闇かくれんぼや忍者鬼をやって楽しそうにしていた。
そんな感じで、1日が終わる。