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演奏ベクトルについて(1)

ご承知のように、ピアノの鍵盤は3種類のサイズですね。

一番小さいサイズ    アップライトピアノ

真ん中のサイズ     学校の音楽室や体育館などの グランドピアノ

特大サイズ       セミコン・フルコン コンサートホール仕様

鍵盤サイズの違いは、共鳴箱の中に張られた弦の長さに比例した結果です。奏者は、その鍵盤サイズに応じて奏法を変える必要があります。

より良いピアノ演奏をするには力の方向性が大事です。指を鍵盤の真上から真下に向かって上下に使う奏法(=指を丸めてハンマーのように上げ下げする奏法)、これでは私たちの住む現代のピアノ(ピアニストを目指す皆さんでしたら、グランドピアノやセミコン、フルコンのコンサートステージ仕様の大型グランドなど)を弾きこなすにはかなり無理があります。

それは、モーツァルトの時代のハンマーフリューゲルなど、最初はピアノではない楽器の奏法として使われていたもので、その後、古典派奏法として残っているテクニックです。しかし現代ピアノの高い性能を余すことなく引き出すには、和音を掴んだ時のような手のひらの使い方が、単音ひとつひとつにも必要です。

指を丸めた奏法だと、手のひらのバネが全く死んでしまい、特に大型のピアノを使うとき等は手応えのとても大きな重い鍵盤に負けて、音色の張りや音の発音にあたる“滑舌”が表現できません。これを何とかするには、手のひらを動員しないと太刀打ち出来ません。

奏者とピアノは、腕の付け根から鍵盤に向かって斜めのベクトルで結ばれています。その斜めの方向性を最大限利用して、引っ張ります。この「引っ張り」に関しては、次回詳しくお話させていただきます。

奏法の違いは、楽器の大きさからだけでなく、作品が作られた時代によっても生まれてきますが、古典派奏法、ロマン派奏法、近現代奏法などについても、後ほど取り上げたいと思います。

演奏方法も作曲技法同様、楽器の進化とともに飛躍的な成長を遂げてきました。現代のピアノは、バロック・古典から近現代まで、多様な演奏方法の実現を果たす高いポテンシャルが備わっています。それを自由に弾きこなせたらうれしいですね。

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