サクマ いちごみるく
私の脳内でおいしくなり続けていたもの、サクマの飴玉、いちごみるく。
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こんな感じの。
私が幼いころ通っていた体操教室では、更衣室で飴玉を交換するしきたりがあった。毎週、小さなきんちゃく袋に自慢の飴玉を入れて持っていく。
「目、つぶってとってね。」
当時の私的に、サクマのいちごみるくはちょっとダサかった。
だって、いちご味って定番すぎるし、パッケージはキラキラしてないし、そもそも、両端ねじってあるだけって笑 と思っていた。
そのため、きんちゃく袋に入れられることはなく、ポケットの中で少し溶けていた。
帰り道、私はお母さんの自転車の後ろで揺られながら、ほっぺたをさんかくに膨らませる。
甘ったるくて、我慢できずに力を加えると、いとも簡単にミルク部分が現れる。プレゼントのリボンをほどいた時のように、柔らかくてのびのびした心持ちになる。包み紙をきれいに伸ばして、いちご模様の数を数えたり、なるべくそっと取り出して、もとの形に戻してみたり。
本当は一番好きだったから、きんちゃく袋に入れなかったのだと思う。
甘い甘い記憶。
今日はあまりうまくいかない日だった。
小さな浪費は気疲れとの相性がすごくいい。自分のためにお金を使えるなら、正直なんでもよかったのだが、サクマのいちごみるくを見つけてしまった。久しぶりで嬉しくて買った。
アルバイトの更衣室では飴玉の代わりに「お先に失礼します」やら「お疲れ様です」やらを少々乱暴に交換する。
がんばれ、がんばれ、と自分に呟いて歩く帰り道、赤信号でいちごみるくを口に放り込んだ。
昔のように包み紙をのばすと、いちご模様の隙間に「かわいいからあげる!」と書いてあった。
(こういうパッケージデザインをキットカット商法と私は呼んでいる)
サクマ、私は自分のお金で買って全部自分で食べる気でいるよ。
こんなに甘かったかなぁ
こんなにおいしかったかなぁ
だんだんと昔の私が21歳の私に「かわいいからあげる」と言ってくれたようなイメージが膨らんできた。なんだか甘い気持ちになった。
明日、ひとつぶくらい、かわいい誰かにあげようかなと思う。