食いしん坊の遺伝と、戦闘態勢の「彼ご飯」
「ほんまあんたに似て食い意地はってるわ~」
食事中の息子を見て夫はよく言う。「あんた」とはもちろん私のことである。
私の食いしん坊は、確実に母からの遺伝だ。母は食に対する好奇心がとても強く、家での食事も外食も「いかにおいしいものを作るか・食べるか」ということを常に念頭においている。
外食でおいしい物を食べたら「これはどうやったらこんな味付けになるんや・・」とつぶやいては家で再現しようと思考を巡らせ、お店のそれとはやっぱり違うけどめちゃくちゃおいしい物を作ってしまうのだ。
私の息子も同じく食いしん坊。まだ4歳間近だが食に対するストイックさはなかなかのものである。
好きなものはもちろんペロリ。その傍らで私たちの在庫をチェックしては常に狙っている。嫌いな野菜に関しては「一つくらい食べや」と怒られそうになると、甘辛つくねのタレが残っている大皿に手を伸ばしディップし食べる。そして「おいっし~!」と両手を高く掲げてグッドポーズ。どうせ怒られるなら美味しくいただいてやるぜ、という意思が感じられる。遺伝ってすごい。
その当時の「彼ご飯」、愛情というより対戦に似た感覚だった
今の夫と付き合いだした当時、仕事終わりに夫の家へご飯を作りに行っていた。このことを話すと「めっちゃ献身的!」「いい彼女!」と言われることがほとんどだったが、今思えばなにか違う。もちろん愛情あっての「彼ご飯」でうまいうまいと食べている夫をみて幸せに満ちていたのは確かであるが。
当時料理未経験の私は、自分も母のように料理ができるはずだと謎の自信をもっていた。だけど実家暮らしのため母の城であるキッチンに立つことは滅多になく、その謎の自信を証明する機会がなかったのだ。
「彼ご飯」のチャンスが巡ってきたとき、「何作ろっかな~ ♡♡♡」というお花パヤヤ~といった感じではなく、「まずは野菜をこういうカタチに切って、そのあとに肉の下味、いやその前に米を炊いて・・」と寝る前の布団のなかでブツブツとシミュレーションを繰り返していた。その姿はまるで対戦間近の料理人である。
その気合あってか、不味いものを作ったことはなく(たぶん)、夫にも「実家暮らしやのになんで料理できるん?」と度々言われていた。私からしたら、そりゃそうや。の一言である。前日に何度も復習をし、切った食材を入れるボウルやそれらを洗う順番までもシミュレーションし尽していたからだ。さらには一人暮らし特有の一口コンロの狭いキッチンが、私の戦闘態勢に火をつけたのだ。いまではそのおかげか段取りもよくなったと思う。こんな風に「ゴオオ~」と熱気に包まれるような彼ご飯も存在するのだ。夫は想像もしなかっただろうけど。