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買おうと決めてスーパーに行くのに商品棚の前で気合を入れ直さないと買えないアレ

私は「きょうの料理ビギナーズ」という雑誌を愛読している。

きょうの料理ビギナーズとは、NHKでやっている5分番組である。
この料理番組の凄いところは、とにかく料理の手順が簡単なところ。
昔、この番組でカツ丼の作り方を紹介する際、

「まず、スーパーでカツを買ってきましょう。」

と言ってのけたことがあり、それを聞いた私はこの番組に恋をした。

結婚して最初の誕生日、夫がプレゼントは何がいいかと聞いてきた。
ここぞとばかりに

「きょうの料理ビギナーズの雑誌、年間購読!!!」

と答えたら、なんとビックリ現在に至るまでずっと雑誌を買い続けてくれている。
ありがとう夫。ありがとう年間購読。

きょうの料理ビギナーズを手に入れたら、まずは最初から最後まで通読するのが毎月のお約束である。
レシピはもちろん、途中に挟まるエッセイ、通販を兼ねた商品紹介まで全部読む。
(現在連載している「とりあえずお湯わかせ」というエッセイがべらぼうに面白くて好き)
そしてレシピの中からいくつか目星をつけ、当月中にいくつか作ったり、作らなかったりする。

さて、初めてこの雑誌を買ってもらった月のこと。
何か作ろうかと雑誌を眺めていたら、夫と共に釘付けになったレシピがあった。
「牛肉のたたき」
である。

こんなものが家庭で作れるのかと驚嘆し、早速スーパーで牛の塊肉を買い求めた。
そしてその値段におののいた。
え、高くない?牛肉の塊高くない?
毎日食ってる鳥、めっちゃ買えるよ?

ビビる私の横で夫がささやく。
考えてみなさい。これを牛肉のたたきにして皿に盛って。
それを居酒屋で食べたとしましょう。一皿いくらよ?

頭の中で電卓を叩き、すぐに購入した。

牛肉のたたきの作り方はとても簡単。
塩胡椒をなじませた牛肉の表面をフライパンでジュッと焼き、アルミホイルに包んで寝かせるだけ。
付け合わせにカイワレなんて添えてみたりして。
アルミホイルの中身を気にしながら、スープと副菜いくつか作ったりなんかして。

こうして完成した牛肉のたたきは大変おいしく、その後何度か食卓に上がることになった。
しかし牛の塊肉を買うことには一向に慣れない。
「居酒屋で食べたら一皿いくら…」
と呟いてからでないと、レジに向かうことができない。

外食より圧倒的に安いのだけど、おうちご飯の材料としてはちょっと重荷な値段。
でもブルジョアな美味しさ。
牛肉のたたき。

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