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何万年も家族だった
キンモクセイの香りがした。
自転車で走りながら回りをキョロキョロ。木を探したけどわからなかった。
また、自転車を走らせる。
さっきよりもっと濃いキンモクセイの香りが鼻をかすめた。
今度こそと木を探したけどやっぱり見当たらない…。
この季節は町中が風に運ばれたキンモクセイの香りに包まれているんだ。
木が見当たらないからそう思うことにした。
町中がいい香りに包まれてるっていいなと思った。
そしてもっと強く自転車を漕いだ。
そしたら今度は良からぬ臭いが足元から香る。
つぶれた梅干しみたいな銀杏がゴロゴロしている。
タイヤで踏みたくないなーとジクザク走行をしながら銀杏ロードを駆け抜けた。
いい香りとそうでない香りから秋がきたことを知った。
毎年同じことをくりかえして、毎年同じことを思っている。
今度は空を見上げた。
魚眼レンズから覗いたみたいな丸い空には薄いうろこ雲が空一面に広がっていた。
夏のモクモクした雲はどこにいったのだろう。
空を見上げてそう言えばこの場所から空を見上げたことがあったのを思い出した。この画角はあの時の空と一緒だ。
数年前、子どもたち公園まで遊びにいったとき自転車の前カゴにいれておいたカールをカラスに奪われたことがあった。
カールをくわえたまま空高く飛び立つカラスに子どもたちは大さわぎ。
「カーーーーーーーーール!!!!」
カールにさよならしたのは初めての経験だった。
子どもたちが真剣な顔して
「カラスはカールが美味しいってしってるんや」
「しかもチーズ味…やで」
なんて言うから、かわいそうだったけどちょっと可笑しかった。
何度もカールを連行した前科持ちのカラスだったのだろう。そしてきっとチーズ味。
公園でカールの喪失に大さわぎするあの頃の子どもたちにはもう会えないのだと思うと切なくなった。
空はあのころと同じなのにね。
当時は子ども相手に何ごとにも待つの姿勢が必須だった。
スロー再生みたいにしか進まない育児の時間に早く大きくなるのだ!と念じていた。
だけど、実際は早送りみたいにあっと言う間に過ぎ去ってしまった。
あの時間が恋しくなると、いつも少しだけ情けない気持ちがコマ送りされる。
もっとできることを残してきてしまったような気がする。
そんな後悔が時々、顔を出す。
おセンチな気分になった後は、今度は今朝の自分の課題を思い浮かべていた。
ずっとずっと何クールもやりづつけているザ・マジックという本がある。
感謝の課題に28日間取り組んだら奇跡が起こっちゃうというもの。
ほんとに奇跡が起こったから何クールもやり続けている。
本日は何クール目かの12日目の課題の日だった。
あなたを変えた魔法の人々
誰でも生涯で助けを必要としていた時、援助や支援や指導を受けたことがあると思います。
また誰かの激励や導きによって、または、彼らが大事な時にその場にいたことによって、わたし達の人生の道筋が変わってしまうことがあります。時がたち人生が流れ、わたし達はその人が自分の人生を変えてくれたことをすっかり忘れてしまいます。
時にはその人が与えた衝撃にさえ気付かず、ずっと先になって人生を振り返ったときにやっとその人が魔法のようにあたなの人生を良い方向へと変えてくれた主だったことに気が付きます。
人生に影響を与えた人々について考えるのが今日の課題。
特に影響を受けた3人を思い浮かべて、その一人一人に時間をかけてどのように影響を受けて、なぜ感謝しているのかを思い出すのだ。
今朝わたしが思い浮かべたのは主人・お姑さん・師匠的な存在の恩人の3人。
主人がいたから子どもたちに出会えた。
お姑さんがいたから主人に出会えた。
家族になにごとが起こっても地獄まで辿りついても今日まで解散せずに済んだのは師匠的な恩人の導きのおかげ。
子どもに思いをはせるときこの3人がいなかったらこども達との人生がなかったといつもいつもいつも思う。
そう思ったら自転車をこぎながら涙が出そうになって、また空を見上げた。
今度は雲が龍みたいに見えた。でもよく見たらどんな雲もいつでも龍に見ようと思ったら見えるよねと思った。
そんなことでラッキーとか思えるのはおめでたいよねと思った。
だけど先月の満月の時にみた雲を思い出してあれは絶対龍だったなと思った。
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キンモクセイの香りから始まって、龍まで辿り着いたら家に着いた。
なんとなく今、幸せだなと思った。
夕飯を食べてるとき
長男が窓を指さし彗星が見えると言った。
今朝めざましテレビでアトラス彗星が見えるとか、見えないとか、そんなニュースをみんなで見たのだ。
ほんまに?これが?彗星なわけ?
なんていいながら窓辺に集合して彗星らしきものを目で追っかける。
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アトラス彗星だったのかは定かではないけど調べると空の向き、時刻が見える条件と合致していたので、みんでアトラス彗星が見えたことにした。
次にこの彗星が地球から見えるのは8万年後。
「8万年後また何回も生まれ変わって、またこのメンバーで家族になって彗星を見てるかな?」
わたしが言った。
「8万年前から家族やったんちゃう?」
長女が言った。
思考を数珠繋ぎにつなげていくと、くだらないことばかり考えいることが判明した。
8万年後の家族の再会を思う人生42回目のとある秋の日の話。