【3分解説】株式のバリュエーションの使い方
・ここでは、前回ご説明した投資指標をふまえて、およそ10年程度の株価サイクルの各局面に沿った投資テーマをご説明します。
・株価サイクルは、大きく分けて5つの局面(①金融緩和・財政出動期待、②業績期待前半、③業績期待後半、④金融引締め懸念、⑤業績悪化懸念)に分けることができます。局面に応じた投資先として、以下の5つのETFを具体例としてご紹介しながら、順に説明していきます。
(金融緩和・財政出動期待)
・景気悪化・企業の業績悪化が進行する中で、政府による財政出動や中央銀行による金融緩和に対する期待が高まり、株価が先行して上昇しはじめる局面です。
・この局面では、投資家の注目が企業がどれだけ増益するかに集まりますので、増益率の高い成長力のある銘柄の株価が先んじて上昇します。
・先ほどの表でいうと、投資テーマがグロースで、増益率が高い銘柄に投資を行う「バンガード米国グロースETF」が投資候補になります。
(業績期待前半)
・財政・金融政策を受けて景気が回復し始めて、企業業績の改善が実際に続く局面です。この局面では、業績予想の信頼性が高まり始めますので、PERで見て割安と評価される銘柄に人気が集まります。
・先ほどの表でいうと、投資テーマがバリューで、割安な銘柄に投資を行う「バンガード米国バリューETF」が投資候補になります。
(業績期待後半)
・好調な企業業績が続き、株価も上昇する中で、徐々に割高感が出てきます。この局面ではPER・PBRといった投資指標が機能しづらくなりますので、ROEが高いといった収益・財務の質が評価できる企業が選好されます。
・先ほどの表でいうと、投資テーマが高ROEとしている「バンガード 米国情報技術セクターETF」や「バンガード 米国生活必需品セクターETF」が投資候補になります。が、株価は割高な水準になっていますので、投資は慎重に行う必要があります。
※なぜこれらが高ROE、すなわち収益力の高い企業かという点は、以下をご参照ください。
(金融引き締め懸念)
・景気拡大の結果、企業業績は改善し賃金も上昇すると、個人の消費活動も旺盛になりますので、インフレ率が高くなってきます。そうすると、中央銀行による金融引締めと金利上昇に対する懸念が強まります。
・この局面では、国債や社債といった債券は金利上昇で価格が下落しますので、こうした債券投資の代替として、配当利回りの高い高配当銘柄への人気が高まります。
・先ほどの表でいうと、投資テーマが高配当で、配当利回りの高い銘柄に投資を行う「バンガード 米国高配当株式ETF」が投資候補になります。
(業績悪化懸念)
・実際に中央銀行による金融引締めや外的な要因(戦争、貿易対立、感染症など)を背景とした景気悪化の懸念が高まると、企業業績もまた悪化懸念から株価は大きく調整し始めます。
・この局面では、どのようなテーマであっても軒並み株価は大きく下落しますので、割高な株価が調整したROEが高いといった収益・財務の質が評価できる企業の投資妙味が高まります。
・先ほどの表でいうと、投資テーマが高ROEとしている「バンガード 米国情報技術セクターETF」や「バンガード 米国生活必需品セクターETF」が投資候補になります。
(留意点)
・留意点として、まず各局面の期間の長さですが、①~③の株価上昇局面のほうが長く、④~⑤の局面は短いと言えます。これは、景気が悪化し株価が調整する局面では、政府が財政・金融政策で何らかの手だてを実行するからです。
・また、5つの局面は一続きになっていますが、戦争や貿易摩擦など外的な要因により、随時⑤が到来する可能性があります。この際は、上記に記載の通り、割高感のあったクオリティの高い銘柄に投資するチャンスと言えます。