
カタログについて
展示の中止に当たり、カタログを配布する機会が大幅に延期となってしまいました。
データとしての公開は近々予定しています。しかし本として趣向を凝らして作ったものなので、その風合いが損なわれた形でカタログを見ていただくのはあまりにも悲しく思いました。
そこで少しでもその雰囲気をお伝えしたいと思い、カタログのこだわりポイントをご紹介していきたいと思います!
ここで指すカタログとは、卒業生全員の作品を載せた作品集のことです。制作者1名に対し、見開き2ページに渡って卒業制作の解説と制作に関するインタビューを載せたものを一冊の本にまとめています。制作は情デ卒展組織内の広報班を中心として行いました。
01.表紙
紙はDMと同じ種類のボール紙を使っています。厚みがあると経年劣化で反ることが予想されるため、DMよりも薄いものを採用しました。
箔押しやシールもDMを踏襲したものですが、シンプルにロゴとシールのみを中央に寄せ、シンプルながら安定した存在感を目指しました。
またロゴのみにしたことで、角度によって色が変わると表紙の雰囲気が大きく変化します。
02.遊び紙
遊び紙とは、表紙と本文の間にある紙のことです。なくても本として成立しますが、これがあることで本の雰囲気がぐっと素敵になります。
印刷しているパターンはポスターの没案を取り入れたもので、ロゴの線の部分を展開して作っています。
また、同じパターンが一足先にSNSのカバー画像などになっています。表紙や本文と違う印象にするためにトレーシングペーパーに印刷しており、本文よりも薄くてめくりやすい厚さにしました。
03.製本
コデックス装という、紙を糸で綴られている背が見えるようになっている製本方法をとりました。
この製本方法にすることで180度本を開くことができるので、見開きに渡る映像作品のタイムラインや大きな画像を綺麗に載せることができます。
04.本文
①紙
一番悩んだことはインクの乗った紙の反射と、写真の再現性についてでした。
学科の特性上、デジタル系の作品や暗いところでの展示が必要な作品は一定数必ずあります。
そのため
・再現性を捨てると鮮やかな作品では雰囲気が損なわれてしまう
・暗い作品は視認性が悪くなってしまう
などの問題がありました。
逆に再現性の高い光沢のある紙は表紙のボール紙と合わせたときに、反射の印象が強すぎて上手くまとめることが難しいと考えました。
これらを考慮した結果、スマッシュという真っ白な微塗工紙を使いました。
この紙を選んだメリットとして
・無機質な白さと表紙の優しいグレーとの対比が生まれること
・色面(特に黒)が反射しすぎないのにも関わらず、再現性が高いこと
が挙げられます。
逆にデメリットは本が重くなってしまったことです。今年はページ数が増えたのもありますが、例年より1.5倍ほど重量感がある本となりました。
持ち運びにはあまり向きませんが、私個人としてはその重量感も製作していく上で積み重ねてきたものの重みのようで気に入っています。
②レイアウト
作品をより多くの人に理解してもらうには、実際に見ていただき、制作者の話を聞くことが一番だと思います。
カタログは大前提としてそれができない人に作品を伝えたり、作品を見た後に自宅でもその経験が追体験できたりするべきでしょう。
そのためカタログ制作では、具体的なテンプレートは作らず作品と制作者の希望に寄り添うことを最優先にしました。
最終審査会が終わった直後、制作者一人一人に作品にとってどの情報を一番大切にしたいのかを中心に聞き、レイアウトを練っていきました。
③写真撮影
写真撮影も同時進行で進めていきました。
カメラマンを一人立て、1週間かけて朝から夕方まで撮影を行いました。こちらもレイアウトと同様、制作者の意見を聞きながら構図を決めて撮っていきました。
④各ゼミの扉ページ
カタログはゼミごとに作品を掲載しているため、ゼミ同士の間のページには区切りとして扉と呼ばれるページを設けています。
今年は扉のデザインに遊び紙と同様、ロゴを展開したパターンを薄いグレーで印刷しています。パターンはゼミごとに一つ一つ違っているので、是非注目してみてください!
05.最後に
カタログの仕事は卒業制作の完成が見えるまで作業を進めることが困難です。
そのため、本腰を入れての実働は1月中旬の最終審査会後から2月中旬までの1ヶ月間です。
その間に70人近くの作品の写真撮影とレイアウトを行わなければなりませんでした。
スケジュール的に厳しい中多くの方に協力していただき、本当に感謝しています。
装丁にも趣向を凝らした分、手を取っていただける機会が減ってしまったことは本当に残念です。
展示でのお渡しはできなくなってしまいましたが、2021年度のオープンキャンパスの情報デザインコースの会場にてお渡しできることになりました。お時間がある方はぜひお越しください!
このカタログを見て実際にお見せできなかった作品の雰囲気を、少しでも感じ取っていただけたなら本望です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。