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情報デザインコース卒業研究制作 ✧ インタビュー第2弾 | 梅木 千夏さん

みなさん、こんにちは!
多摩美術大学情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展2023 - 「  」広報部門です。

今回のnoteは、卒業研究制作展参加者へのインタビュー記事の第2弾です。
これから約2週間にわたって全15名のインタビューをお届けしていきます!
彼らがどのような想いを持って今までの制作をしてきたのか、記事を通じて皆様にお届けできたらと思います。

第2弾は「ワークショップとデザインゼミ」に所属する梅木 千夏さんのインタビューをご紹介します。

✧ インタビュイー紹介

梅木 千夏 / CHINATSU UMEKI
多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース4年
ワークショップとデザインゼミ(主査:矢野 英樹准教授)所属

── 普段は主にどんなもの、ことを制作していますか。

梅木:普段の作品は課題に沿って作っているので、一貫して同じようなものではないんですけど。できるだけ社会問題に関わっているようなテーマを扱っていますね。

── どういう媒体の作品が多いんでしょうか?

梅木:媒体は…例えばUIの授業だったら、それに沿った媒体じゃないといけないと思うんですけど、個人的にはアナログのものの方が結構好きです。
ドリルを作ってみたり、手袋作ってみたり…紙物も多いですね。

── 作品を作る上で大事にしていることは何かありますか?

梅木:大事にしていることは、できるだけ作品に「ターゲットにとってメリットがある」ようにすることを心がけています。さっきもお話しした通り、社会問題に関わっているテーマをよく扱うので、ターゲットユーザーがいいと思えるような、独りよがりにならないような作品を作るようにしています。

 ちゃんと実際に試してみたりとか。根拠に基づいて作りたいと思いながらやってます。

✧ 卒業研究制作作品について

── 卒業研究制作で作成した作品の紹介をお願いします。

「母手帳」

梅木:私は「母手帳」という本を作りました。
この作品は、1人の人間から母になるまでの過程についてのインタビューを行い、1冊にまとめました。ただ言葉が載っているだけではなくて、文字のレイアウトだったり、紙の素材、質感とか色とかにこだわりました。
またインタビューのときに、インタビューした後に絵を描いてもらって、感情を可視化してもらったんです。それを編集してまとめています。

✴︎ きっかけ・制作を決めた経緯

── この作品を作ろうと思ったきっかけや経緯について教えてください。

梅木:きっかけは、まず普段から親戚が集まったときとか、父親から自分が結婚するのかどうかとか、子供を産むのかどうかを問われる機会が重なったことですね。私はそれがすごい嫌だったんですけど、でもいつかは考えなきゃいけないことだよなと思っていました。
嫌だけど、自分が「嫌だ」で済ませられるようなことではないなって思ってたし、母になる過程を詳細に知っておくことって、すごく自分にとって大切なことだなって思ったんです。

── 女性は自分の身体に特に関わることですから、母になることや家庭について考える機会が多いかもしれませんね。

梅木:そうですよね。子供を産むこともタイムリミットもあるなって思ったし、いつでもできるわけじゃない。時間が経てば経つほど難しくなっちゃうし。目に見えないタイムリミットを感じて焦る気持ちもあるなと思います。

✴︎ 制作過程

── 制作過程を教えていただけますか?

梅木:まずこのテーマにたどり着いたのは中間審査発表前でした。最初からこのテーマにしたわけではなくて、元々「家族」というテーマを扱いたかったんです。そこから少し試行錯誤していって、より中身にフォーカスして、「母」という詳細な部分にテーマを置いてから結構動き始めた感じがしています。

 テーマを変更してから、インタビューの言葉だけだと結構味気ないと感じるようになってしまって。私はどっちかというと母になるまでの感情の起伏を深く知りたいと思っていたので、そこをうまく表現するにはどうしたらいいか悩みました。
その感情を可視化するために、紙を貼ってもらったり、絵を描いてもらったりを試して、結果絵の具で「このとき(質問ごとに)どういう気持ちだったのか」を描いてもらう方法がしっくりきたので、それを採用しました。

紙で表現している様子
絵の具で表現している様子

梅木:ただ、絵を描いてもらったはいいんですけど、そこから編集したり、ページごとの紙を選んだりが大変で…(笑)1ページ1ページ全部違うので、思ったよりも作業量が多かったです。紙がただ違うだけだったら良かったんですけど、布だったり、毛糸を貼ったりとか1ページごとに作業があったので大変でしたね。

 出来上がったあとに、私と同じようなテーマに興味がある同年代の人に実際にみてもらって、意見をもらって改良したり。本も最初は私の母だけだったんですけど、後から追加で2人にインタビューをお願いして、本を増やしました。

母になるのはみんな同じルートを辿っているわけじゃない

── 他の人にも聞いてみようと思った理由は何かあるんでしょうか。

梅木:そうですね。やっぱり母になるってみんながみんな同じルートを辿っているわけじゃないと感じたのがそのきっかけでした。母になる過程を知りたいっていう上では、多分1人だけでは足りないなと感じたんです。
また、同年代の子に意見を求めたときに、「他の人の本も見てみたい」と言ってもらえて、自分の考えと合致したなと思いました。それで新たに他の方にも協力を仰ぐことにしました。

全てのページが異なったデザイン

梅木:1冊だけじゃなく2冊あると、感情を可視化したことにより意味を感じられると思うんです。1冊だけだと「あーこういうことを感じたんだね」ということだけしかわかりませんが、それが2冊あるとその間にどんな差があるのかを感じることができるのも、とても重要だと思いました。

 本を閉じていても、紙や布がはみ出ていたりして、一目でインタビューした方の雰囲気がわかるようにもしています。これは2冊以上作ることで、その良さを発揮できたので、お気に入りポイントですね。

1ページ1ページにつまった、こだわり

── 1冊1冊にこだわりがつまっていますね。他にもこだわりポイントがあれば、くわしく聞かせてください。

梅木:そうですね…全体的に本の厚みとページからはみ出ている絵たちが好きなんです。自分が想像してたよりも差異が出てるのがすごく嬉しかったです。色使いとかも、自分が想像しているものより全然違かったりして。作るのが大変だった分、自分の努力や、やりたかった差異をこの厚みで感じられるのが良いですね。

 あとは紙の質感にもこだわっていて。1ページ1ページに「本当にこの紙でいいのか」とか考えて、意味付けとかをしっかりやりながら紙を選びました。

 たとえば、インタビューの中で意思のかたさを感じられたときには、すごく硬い紙やしっかりした分厚い紙にしたり。逆に、悩みが生じていたり、モヤモヤしている感じあった部分は薄い紙にしたり。

 あんまりはっきり言わないとか、知られたくなさそうな部分にはわざと読みづらいページを作ったりしました。でも、最初はそれは私の中で失敗したかなって思ってたんですよ。本なのに読みづらくするのは違ったかなって。

 でも学内展で友人から「読み物は普通、こっちからアプローチしなくても読めるけど、 このページは自分から読みたいって思って光を探さないと読めない。こっちからアプローチしなきゃ読めないっていうところが面白いね」って言語化してもらったのが印象的で。「そうそう!それがやりたかったんだよ!」ってなりました。

✴︎ 制作を通して気づいたこと

「母になりたいと思ったか」という問い

── 卒業研究制作を最後まで終えて、気づいたことや感じたことはありましたか?

梅木:元々この作品を制作したのが「母になる過程を知りたい」というきっかけだけだったんですけど。制作している段階で矢野先生から「こうして研究制作としては答えを設けなければならないよ」、「研究するってことは何かを仮定して、その上で答えを出さなきゃいけないからね」ってお話しされたんです。そこで私も「確かにな」って思って(笑)

 知りたいというきっかけはあるけど、じゃあそこから研究するにあたってどうしたらいいんだろうと思いました。その時は「母親の感情が可視化できるのか」という研究テーマにしようと思って。
 でも結局「最終的に自分は母親になりたいと思ったか、そうでないか」という問いを立てて、それを答えにしようと思いました。

実際はわからないけど、知ることができた

── 卒業研究制作を通してその答えは出たのでしょうか。

梅木:途中で「今までずっと考えてきて決めることが難しかったことを、半年間で決めるのはやっぱり無理だろ!」って思ってしまったんですけど。

 卒業研究制作をやる前と後での変化としては、「母になる」ことへマイナスの部分よりは、少しプラスの部分が自分の中で芽生えたと思っています。どうしても出産や子育ては時間がかかるし、自分の時間も無くなってしまうイメージが私にはあって、もう産んだらお先真っ暗みたいな。子供は別に嫌いなわけじゃないけど、好きでもないと感じていたので、お先真っ暗ってイメージが自分の中で根強かったんです。

 でも、インタビューをしていて、もちろん、自分の時間が減ったという意見を全員からもらったんですけど、その引き換えに暖かさや得られるものがあるとみなさんがお話ししていて、「うん、なるほど」と思いました。私は失ったら失っただけで終わると思っていたんですけど、多分ちゃんと得られるものがある。それは結婚して子供を産んでみないと得られるかどうかは、実際はわからないんですけど、それがいいものということだけは知ることができたのでそれが前後の変化、気づいたことですね。

梅木:あと、自分が子供をそんなに嫌いでも好きでもない理由がよくわからなかったんですけど、インタビューをしてて自分がまだ同じくらい子供だからなんじゃないかなって思いました。

 インタビューの中で結構印象に残ったお話しがあって、「10代の頃から子供を産みたい、結婚したいという気持ちはありましたか」という質問をしたんです。やっぱり「無かった」って答える人ばかりだったんですけど、その中でも「自分がその時まだ子供で、やりたいことがたくさんあるから思わなかったんだ」って答えてくれた人がいて。
それを聞いて「あー、自分は今その段階なのかもな」と感じました。だから、今現時点での自分の精神状態はそんな感じだけど、この先に待ってる、もし選択したら見えてくる未来の見え方が変わりましたね。

✴︎ 今後の活動・進路について

── 今後の活動や進路などについて、何かありましたら教えてください。

梅木:私はまた大学に行くことにしました。
情報デザイン学科に入学して感じたことがあって、UIとかUXとかって人がどう動くか考えるっていうのをずっと考えていかないといけないと思うんですけど、私の中で「それって心理学に近いじゃん」と思ったんですね。

 でも、私はずっとデザインの勉強しかしてこなかったので、そんなに詳しいことを知らないんです。だからそういうことをもっと詳しく知りたいなと思ったので、大学に行って勉強することにしました。

✧ あなたにとって 「爆発」とは?

── さいごに、あなたにとって爆発ビックバンと呼べるものを教えてください。

「興奮すること」

(インタビュー・編集:田中 雅、画像提供:梅木 千夏)


インタビュー第2弾、いかがでしたでしょうか。
本卒業研究作品は多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展に展示されております。
記事だけには載せきれない、実際に見るからこそ伝わる魅力がある作品がたくさんありますので、みなさまもぜひ会場にお越しください!

第3弾は、「メディアとデザインゼミ」に所属するJUNG JIEYUNさんのインタビューをお届けします。次回もお楽しみに!

多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展2023 - 「  」
会期
3月3日(金)- 3月5日(日)10:00 - 19:00
場所
〒141-0022 東京都品川区東五反田5丁目25−19
東京デザインセンターガレリアホールB1&B2
アクセス
JR山手線五反田駅東口より徒歩2分
都営浅草線五反田駅A7出口正面
東急池上線五反田駅より徒歩3分

詳細多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展2023 - 「  」公式サイト

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