情報デザインコース卒業研究制作 ✧ インタビュー第4弾 | 永友 和花さん
みなさん、こんにちは!
多摩美術大学情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展2023 - 「 」広報部門です。
今回のnoteは、卒業研究制作展参加者へのインタビュー記事の第4弾です。
これから約2週間にわたって全15名のインタビューをお届けしていきます!
彼らがどのような想いを持って今までの制作をしてきたのか、記事を通じて皆様にお届けできたらと思います。
第4弾は、「デザイニング・エモーションゼミ」に所属する永友 和花さんのインタビューをご紹介します。
✧ インタビュイー紹介
── 自己紹介をお願いします。
永友:多摩美術大学情報デザイン学科情報デザインコース4年の永友和花です。好きなものは二度寝と背徳感と動物です。
普段はプロジェクトマネージャーのような役割を担うことが多く、物事を円滑に、楽しんで進められるかを考えることが多いですね。
というのも、自分一人で完結できるような特技がないからというのもあります(笑)情報デザイン学科では幅広い分野を学ぶことができますが、私はそのどれでも80点というか、よくいえばオールラウンダー、悪くいえば器用貧乏というか。欲張りでいろんなことにチャレンジしたい。好奇心だけが突っ走っていることが多々あります。
そんな自分に悩んだ時期もありましたが、どんなことにも対応はできるという点で、なんでもやります精神はあるので、自分を褒められる点でもあるんですよね。
── 普段は主にどんな作品を制作していますか。
永友:作品の系統はイラストや映像、最近はやっとプログラムをかじってみたり。とにかく見た人がおもしろいと感じてもらえるような、ポップな作品を目指しています。
一人で黙々と作品を生み出すというよりは、自分自身人と関わることが好きなので、頼ったり頼られたり、仲間と切磋琢磨したり、終わった後に朝まで飲んだり(こんな時期なので難しいですが)、人と関係性をつくっていくごとに、自分の思想や浮かんでくるアイデアがどんどん変化していくんです。その感覚が楽しくて、浮かび上がった感情を作品に落とし込んでいっている気がします。
多摩美には本当にいろんな人がいて、人の形をしているだけの何かというか。とてもいい意味で。自分とは全く違う考えや表現をする人ばかりで、本当に楽しい4年間でした。刺激が強すぎるくらい、周りの人たちからの影響はかなり受けました。
✧ 卒業研究制作作品について
── 卒業研究制作で作成した作品の紹介をお願いします。
永友:作品のタイトルは「いただきます。 」です。
食肉の命と自分の命をテーマにしたインタラクティブ作品です。
今回は食肉を「牛」に絞りました。牛にとってのマイナンバーカードのような耳標を、私たちが消費という面で購入の象徴にもなりえる「レジに通すこと」を行うと、映像が流れ、レシートが出てくるという仕組みです。
永友:映像は耳標の主である牛のクスッと笑えるようなエピソードを農家の方が話すシーンが映し出されます。レシートにはその牛のパーソナルな情報が載っています。小学校で流行ったプロフィール帳のような、ポップで個性の出る内容です。
✴︎ きっかけ・制作を決めた経緯
たくさんの「命」が含まれている
── この作品を作ろうと思ったきっかけや経緯について教えてください。
永友:私の地元は畜産大国とも呼ばれる宮崎県です。中でも、一番畜産が盛んな町に住んでいました。小学生の頃、口蹄疫という家畜の伝染病が流行り、県内の牛や豚が全頭殺処分されました。
ニュースに映し出される変わり果てた自分の住む町。現実味が無い中で、大きなブルーシートに包まれ、大きな穴に埋められていく家畜たちを見て、恐怖を覚えると同時に家畜が「命」であることを強く実感しました。それまではバクバク食べていた食事の中に、たくさんの命が含まれていること。たくさんの人々の労力や愛情が詰まっていること。そこでやっと気づいたんですよね。
「命」について考えるきっかけを与えたい
永友:大学に入り上京してからは、上を見上げる日々で、お洒落なカフェや謎の形の建物。新しい価値観や体験してこなかったカルチャー。刺激的で毎日が新鮮で、食べ物すらも作られた何かに感じていました。でも、久しぶりに地元に帰ると鼻を掠める畜産特有の匂いを嗅ぐたびに、口蹄疫を思い出すんですよ。命のことも。東京という消費者で溢れている街には、農家がありません。人が少なく自然が豊かな土地の方が、農業は適しているからですね。
それで気づいたんです。多くの人は家畜の命ある状態を見たことがないんじゃないかって。打ち上げ候補に選ばれやすい焼肉も、ただの美味そうな肉で、=命にならない人がほとんどだと思うんですよね。
実はここで打ち明けるんですけど、私は肉が食べられないんですよ。前世シマウマだったのかなーとか思うんですけど、肉を噛んだ時に「生」を感じるんですよ。それがどうしても苦手で、噛みきれなくて。ひき肉は食べれます、噛み切れるから。めちゃくちゃ美味しいし身体を作る大切なタンパク質です。命を感じなくなると食せてしまうという…残酷なんですけど。そんな自分だからこの作品を作ろうと思ったというか、人が食に関して生を感じたらどうなんだろうって。作品を通して命に感謝する気持ちを思い出してほしいという心持ちもありますが、命について考えるきっかけを与えたいという方が近いです。
✴︎ 制作過程
本気で、一頭一頭の牛と向き合う
── 制作過程を教えていただけますか?
永友:まずは農家の方とお話をすることからはじめました。小学校の同級生のお家が農家さんで、とても良い方で、口蹄疫当時のお話から今のお仕事の事までじっくりと話を聞かせていただきました。
その中で、牛に対しての愛情を強く感じたんですよ。自分の子供のことを話すみたいに、穏やかな目で一頭一頭のエピソードを語ってくれて。
口蹄疫で亡くした子たちの話、今力を入れて育てている子たちの話。あの子は脱走魔で抜け出して溝にハマってたとか、びびりで後ろ向きでしか歩けないとか。人間みたいなんですよね。
そのどれも人一倍愛情を込めて育ててきたからこそ、話せるような内容ばかりで、本気で牛と向き合っているエネルギーをドバドバ感じて、私もここで絶対に良い作品を作ろうと決意しました。
お話をして、命について「一頭一頭」というワードを軸に制作しようと決めました。その後はどう表現すれば伝わるか、試行錯誤の毎日で頭ばっかり動かしちゃって、夜中までノートに書き出して寝て、ゼミに遅刻するみたいな(笑)その節は先生、ゼミのみんな、本当に申し訳ありませんでした。優しさに甘えて最後の最後までアイデアを練っていました。
レジに耳標のバーコードをかざすとレシートが出てくるプログラムをPythonで書いたんですが、難しすぎて…!他大学の友達に泣きついて一緒に制作してもらいました。本当にありがとう。
最後1ヶ月くらいでやっと形になって、エラーは起きるし、編集は終わらないしで焦る毎日でしたが、なんとか見せられるものになりました。
✴︎ 制作を通して気づいたこと
── 卒業研究制作を最後まで終えて、気づいたことや感じたことはありましたか?
永友:頭の中だけじゃ作品は完成しないこと!当たり前だけど、卒制で一番実感しました。手を動かすことはもちろんですが、自分の考えや頭の端っこにあるワードを全て書き出したり、友達と話してみたり、全然違う分野の人に聞いてみたりすると、自分では気付けなかったことが見えてきたり、モチベーションも上がったり。打ちのめされて落ち込むこともあるけど、新たな目標ができることは自分の伸び代が増えること。挑戦への道のりが開けるような気がします。
✴︎ 今後の活動・進路について
── 今後の活動や進路などについて、何かありましたら教えてください。
永友:卒業後は出版社に就職します。
表紙を開いてから最後のページを読み終えるまで、私の知らない世界に迷い込んだ気持ちにしてくれる本が大好きでした。絵本だったり小説だったり、エッセイや自己啓発本だったり。誰かが作った誰かに届けたい想いの詰まった書物。自分の知らない出逢うことのなかった人と本というかたちを通して通じ合えることってとても素敵だと思うんです。本にするって凄く多くの人が携わって、お金も関わりますし、完成して出版するまでに物凄い労力がいると思うんです。今はインターネットが発達して、SNSで自分の想いを発信しやすくなったと思います。その中で「本」という媒体を選んで発信することって減っていくのかなと。
だからこそというか、ページを捲りながら本を読む体験ごと手元に残せる宝物になり得ると思うんですよね。自分もそんな、どこかの誰かの宝物になる特別な一冊を作るのが目標です。絵本作家になりたい夢もあるので、本について沢山学んで、自分が届けたい想いが実った時には絵本も出してみたいです。これまで関わってくれた人たちがいて、これから関わっていく人たちがいて、その人たちと出会ったからこそ届けたい想いが浮かび上がると思うので、その人たちにも恩返しができるよう頑張りたいです。
── このインタビューを読んでいる読者の方に、何か伝えたいことがあれば教えてください。
永友:宮崎牛めっちゃ美味しいです!!!!!早く九州を一つに、宮崎にも新幹線を開通させてほしいですね。
✧ あなたにとって 「爆発」とは?
── さいごに、あなたにとって爆発《ビックバン》と呼べるものを教えてください。
永友:ビッグバンは宇宙で起きる現象なので、ドカーンって音聞こえないじゃないですか。自分の中での爆発もそんな感じで。作品制作はもちろん人間関係とか恋愛とかも、感情が昂って気付いたら爆発するみたいな。良い意味でも悪い意味でも。努力だったり悩みだったり、ある時に自分のキャパを超えて爆発して、開花したり飛び散って消え去ったり。全部自分の中で起きてるので、自分の変わるきっかけで大きい出来事ではあるけど、音はしなかったなーって思います。というかそうであってほしい(笑)
自分の中では宇宙での爆発だと思ってるけど、人から見たら火山みたいな感じでしょっちゅう爆発(噴火)して周りの地域からしたら灰降ってきてだるいわーって思われてるかもしれませんね。そんな気がしてきました!
(インタビュー・編集:武田 秀比古、画像提供:永友 和花)
インタビュー第4弾、いかがでしたでしょうか。
本卒業研究作品は多摩美術大学 情報デザイン学科情報デザインコース 卒業研究制作展に展示されております。
記事だけには載せきれない、実際に見るからこそ伝わる魅力がある作品がたくさんありますので、みなさまもぜひ会場にお越しください!
第5弾は、「リボーダーデザインゼミ」に所属する竹田 未菜さんのインタビューをお届けします。次回もお楽しみに!