「マネーストック」をチェック!
日銀は「金利」と「量」を調節
日銀法第2条で「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもってその理念とする」と明記しています。
従来から、金融緩和策を政策の基本とすることで、景気回復と物価安定の実現を目指してきました。
具体的には、「金利の引き下げ(ゼロ金利・マイナス金利政策を行ったり来たりする金利のない時代を経て、現在0.25%)」と「現金量(マネタリーベース)の増大」を維持しています。
お金の値段である金利が低ければ、企業の設備投資、個人のマイホーム取得意欲も高まります。
また経済全体に流通する現金量が増えれば、金融機関から企業・個人への貸出し余力も高まり経済も活性化する、という考え方です。
「マネタリーベース」って?
マネタリーベースとは「日本銀行が供給する通貨」を意味し、「ハイパワード・マネー」とも呼ばれています。
具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(日本銀行券発行高+貨幣流通高 +日銀当座預金)の合計値をいいます。
2024年10月のマネタリーベース平均残高は、約669兆円です。
マネーストック統計における現金通貨には金融機関の保有現金を含みませんが、マネタリーベースの流通現金には金融機関の保有分が含まれます。
これは、マネーストックが「中央銀行を含む金融部門全体から経済に対して供給される通貨」であるのに対し、マネタリーベースは「中央銀行が供給する通貨」を意味するためです。
個人や企業が行う振込や引落しといった銀行間決済は、各金融機関が日銀に預けている当座預金を通して行われるため、マネタリーベースの供給量の変化は、マネーストックの増減に大きな影響を与えます。
例えば、次のような「貸出し→預金→貸出し→預金」を繰り返すことで、マネタリーベースの何倍ものマネーストックが生まれることになります。
金融機関が預金と貸出しを繰り返すことでマネーストックを増やすことを「信用創造機能」といい、金融機関が果たすべき3つの重要な機能の一つとされます。
マネタリー・ベースが1単位増加することで最終的に貸出しが何単位創出されるかを表す指標を「信用乗数」といいます。
「マネーストック」とは?
マネーストックとは、国内において通貨保有主体が保有する通貨のうち、金融機関と中央政府を除いた個人、企業および地方公共団体、地方公営企業が保有する通貨の総量です。
日本銀行調査統計局が月次で「マネーストック統計」を公表しています。
2007年10月の郵政民営化でゆうちょ銀行が銀行法に基づく国内銀行に加わったことを受けて、通貨の分類を見直すとともに従来のマネーサプライ統計からマネーストック統計に名称も変更されました。
マネーストック統計における通貨は、通貨発行主体により、M1、M2、M3、広義流動性の4つに区分されます。
上記のうち、旧マネーサプライ統計で重視されていた「M2+CD」に対応するのが「M2」です。
ゆうちょ銀行を含むかどうかで長期の時系列データが存在しないものの、通貨保有全体の金融資産としては「M3」が代表的な指標といえます。
2024年10月のマネーストック(M3)の速報値は、約1,601兆円(2015年の平均残高:約1,238兆円)です。
一般的に、マネーストックの増減は物価の変動と深く関わっており、マネーストックの増加はインフレを進行させます。
そのため日本銀行は、マネーストックの動向に目配りしながら、「マネタリーベース」の総量を調節することにより金融政策を行います。