金利の種類と決定要素
長期金利と短期金利
金利は、基本的に市場の需給関係により決定されますが、期間の長短にも影響を受けます。
お金を借りたい人がお金を貸したい人より大勢いるならば金利は上がり、お金を貸したい人が借りたい人よりも多ければ金利は下がります。
そして一般的に、短期よりも長期の方が金利は高くなります。
イールドカーブ
満期までの期間を横軸に、金利を縦軸に取って、期間の長短に応じた金利をプロットして結んだものを「イールドカーブ」といいます。
イールドカーブは将来の金利見通しにより、①順イールド(右上がり)、②水平、③逆イールド(右下がり)、の3つの形があります。
長期金利にはリスクプレミアムが上乗せされるため、通常、イールドカーブは「右上がり」になります。
このような金利と期間の関係に関する理論は、「金利の期間構造理論」と呼ばれており、純粋期待仮説、流動性プレミアム仮説、市場分断仮説の3つの仮説があります。
純粋期待仮説
純粋期待仮説を考える際に、「スポットレート」と「フォワードレート」という重要な言葉が登場します。
スポットレートとは、現時点から将来のある時点までに適用される金利、フォワードレートとは、将来のある2時点間に適用される金利をいいます。
投資家がリスクに対して中立的であれば、長期金利と短期金利の間で裁定が働き、長期金利は、現在の短期金利(スポットレート)および将来の短期金利(フォワードレート)の幾何平均(相乗平均)と等しくなるはずです。
算式のとおり、3年物の債券で運用する場合と、1年物の債券を毎年購入して3年間にわたり投資する場合の利回りが等しくなるように、金利裁定が働くと考えるわけです。
純粋期待仮説では、将来の金利見通しによってイールドカーブは決定し、短期金利が上昇すると予想されれば、長期金利も上昇すると考えます。
ただし純粋期待仮説は、短期金利と長期金利の間に完全な裁定関係が働くこと、税金や取引コストがなく即時に取引を行うことができること、投資家はリスクに対して中立的であること、すべての債券に信用リスクや流動性リスクがない、などの前提条件の下に成立する仮説です。
流動性プレミアム仮説
流動性プレミアム仮説では、「投資家はリスク回避的であるため、長期金利にはリスクプレミアムが上乗せされ短期金利より高くなる」とされます。
この仮説は、将来の短期金利が上昇すると予想しているのではなく、流動性プレミアムが「イールドカーブ」を右上がりの形状にさせると考えます。
例えば、3年物の債券に投資する利回りと、1年物の債券に3年連続して投資する利回りが同じ水準であれば、リスク回避的な投資家は、1年ごとに再投資するかどうかを判断するはずです。
長期債券に投資することで資金が固定化されてしまう投資家には、純粋期待仮説による金利よりも若干高い金利を提供しなければならないわけです。
市場分断仮説
市場分断仮説では、金利は満期日までの期間で分断されており、短期金利と長期金利の間で裁定が働くことはないとされます。
この仮説は、期間の長短が金利に影響を与えることはなく、投資家と市場の相対的な需給関係によってのみ金利が決まるとされます。
現実の市場では短期金利と長期金利の逆転現象も見受けられます。しかし中長期的に見れば、長期金利と短期金利には裁定が働いているはずです。