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子供のアルバイト収入と親の扶養控除


 2025年の所得税計算は色々と変更される予定です。
 国民のため「収入の壁をこわす」という心意気は大変ありがたいです。
 しかし今年も年末調整を担当される方々の負担はかなり増えそうです。
 簡素に改正できないものか、というのが現場の本音だと思います。


基礎控除の見直し


 合計所得金額2,350万円以下である所得者本人に対して、基礎控除58万円が適用されることとなります。

 ただし従来どおり、所得が高い人ほど基礎控除は縮減するしくみです。
 具体的には、2,350万円超2,400万円以下の個人は48万円、合計所得金額2,400万円超2,450万円以下の個人は32万円、2,450万円超2,500万円以下の個人は16万円と控除額が縮減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人に、基礎控除は適用されません。


基礎控除が変わります


 

控除対象となる配偶者の所得要件


 基礎控除の見直しに伴い、配偶者控除の対象となる人(控除対象配偶者)が「所得者本人と生計を一にする配偶者で、合計所得金額58万円(改正前:48万円)以下の人」に変更されます。



控除対象となる親族の所得要件


 基礎控除の見直しに伴い、扶養控除の対象となる親族(控除対象扶養親族)についても「所得者本人と生計を一にする年齢16歳以上の扶養親族で、合計所得金額58万円(改正前:48万円)以下の人」に変更されます。



同一生計

 配偶者控除および扶養控除の要件である「生計を一(同一生計)」とは、必ずしも同居を要件とするものではなく、生活の原資(お財布)が共通であるかどうかで判断します。

 所得者本人が単身赴任している、子供が遠方の大学等へ通学して離れて住んでいる、あるいは病気療養等のために親族が入院しているなどの理由で別居していても、週末・夏休み・冬休みなどの余暇には帰省する場合のほか、生活費・療養費の送金が行われている場合は同一生計として取り扱います。

 そして、税務上の親族とは6親等内の血族および3親等内の姻族であり、民法の規定に基づきます。
 なお税額計算において、里子(児童福祉法の規定により里親に委託された18歳未満の児童)と養護受託老人(老人福祉法の規定により養護受託者に委託された65歳以上の人)についても扶養控除の対象となります。

 なお青色事業専従者として給与の支払を受ける人および白色事業専従者、他の人の扶養親族となっている人は控除対象となりません。


給与所得控除(サラリーマンのみなし必要経費)の見直し


 給与所得者には「みなし必要経費」として給与所得控除が適用されます。  
 この給与所得控除についての最低保障額が65万円(改正前:55万円)に引き上げられます。

 これにより、基礎控除58万円と給与所得控除の最低保障額65万円を合計した金額123万円(改正前:103万円)以下の給与収入であれば、所得税が課税されないこととなります。
 2025年からは親族の給与収入が123万円を超えると、扶養(配偶者)控除の対象から外れます。改正前の103万円と比べると、少しだけ増えました。



19歳から22歳の子供に対する扶養控除の見直し


 2024年は大学に通う世代の子供のアルバイト収入が103万円を超えると、親の扶養親族の対象外でした。扶養控除から外れないように103万円までで就業調整をする問題への対応として特定扶養控除の見直しが行われました。

 特定親族特別控除(仮称)の創設により、年齢19歳から22歳までの子供のアルバイト収入が150万円以下である場合には扶養控除の対象とされることとなります。

 2024年の所得税では、合計所得金額が48万円以下で年齢19歳から22歳までの親族に対しては63万円(一般の扶養控除38万円に25万円を上乗せ)の特定扶養控除が適用されていました。

 2025年からは、年齢19歳から22歳までの合計所得金額58万円以下の親族に対して63万円の特定扶養控除が適用されます。
 その親族の合計所得金額が58万円を超えると特定扶養控除の適用はなく、合計所得金額が58万円を超え123万円以下である場合は、その親族の所得に応じて新しく特定親族特別控除が適用されます。

 具体的には、その親族(子)の合計所得金額が58万円を超え85万円以下である場合は63万円(特定扶養控除と同額)、85万円を超え123万円以下である場合は、その親族(子)の所得が増加するに従って縮減するかたちで特定親族特別控除が適用されます。(最高63万円、最低3万円)


大学生の子に対する扶養控除は
配偶者に対する控除と同様のしくみに



 上記の控除額の表は配偶者に対する控除と似ていますね。
 子の合計所得金額が85万円(アルバイト収入では150万円)を超えると、所得5万円ごとに特別控除額が縮減するしくみです。

 ただし配偶者(特別)控除は、配偶者だけでなく所得者本人の合計所得金額も900万円以下・950万円以下・1000万円以下の3段階で控除額に影響し、所得者本人の合計所得金額が1,000万円を超えると控除額は0となります。

 一方で、特定扶養控除または特定親族特別控除は、その親族(子)の合計所得金額のみで控除額が決まり、所得者本人(親)の所得が高いかどうかは関係ありません。



 上記の税制改正は、月々の給与計算における源泉徴収税額には反映せず、年末調整で行う予定です。改正される給与および賞与の源泉徴収税額表は、2026(令和8)年1月1日以後に支払う給与から適用されます。


 年末調整の頃には「今年のアルバイト収入はいくらになりそう?」と親子の会話と確認が必須となりそうです。

 今年の年末調整では従業員の配偶者だけでなく、大学生の子についても、パート・アルバイト収入と合計所得金額の確認作業が必要になります。
 引き続き、乗り切って行きましょう!