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年収3倍になると、年税額16倍!?


個人の税金⑤

年収1,200万円で所得税額85万円


 今回は営業部長で、年収1,240万円である井川一郎さんの「源泉徴収票」を見てみましょう。
 井川さんは、年収2,000万円以下、主たる勤務先に「扶養控除等申告書」を提出していますので、会社が年末調整を行うことで、所得税の計算と納付をします。


独身の高城さんと比較すると
「源泉徴収票」へ記載される項目も増えている

 


高城さんと比較してみると・・・


 高城さんと比べると、年収は3.1倍(400万円→1,240万円)と増えており、なんと、年税額は16倍(53,200円→852,800円)の負担です。 

 ずいぶん、税額負担が重くなっています。
 「年収が3倍で、年税額が16倍、計算間違いでは?」と思ってしまいそうですが、間違いではないようです。

 井川さんの年収は高城さんの3.1倍ですが、課税所得金額は4.2倍に増えています。(1,643,000円→6,914,000円)
 加えて、「超過累進税率」で適用される所得税率も4倍(5%→20%)に跳ね上がります。
 超過累進税率の下では、年収3倍で税額が16倍に増えてしまうわけです。

年収3倍で、所得税率4倍
所得税額は16倍に!


税と社会保険料の負担率は20%


 しかし、所得税よりも負担が大きいのは、やはり社会保険料です。
 給与収入が増加すると、社会保険料の課税標準である「標準報酬月額」も増えます。
 所得税額の計算では非課税とされる通勤手当が社会保険の標準報酬には含まれることに注意が必要です。

 井川さんの所得税と社会保険料の合計額(2,573,716円)は、年収の20%もの負担率となっています。


「所得控除額×税率」分の節税


 井川さんには扶養する家族がいるので、自分への基礎控除48万円のほか、扶養親族に対する扶養控除38万円、障害者控除75万円が適用されています。

 人的控除は、「養う家族が多いと生活費が多くかかり大変でしょうから、扶養控除の適用で所得税を軽減しましょう」
 あるいは「本人または親族が障害を負っている場合は、障害者控除を適用することで所得税を軽減しましょう」といった税制優遇措置です。
 独身で基礎控除48万円のみ適用されていた高城さんと大きな違いです。

 16歳未満である次男は「年少扶養親族」と呼ばれており、人的控除の適用がない代わりに、世帯収入に応じて児童手当が支給されます。
 なお年少扶養親族に対しては扶養控除の適用はありませんが、障害者控除は適用されます。

 また家族が増えると、世帯主である自分自身の病気や死亡のリスクに備える生命保険を契約するケースが多くなります。
 マイホームを購入すれば自宅に対する地震保険料にも加入するなど、保険料の支払い額も増えます。

 国民の義務である社会保険料はその全額が所得控除の対象となりますが、これら任意の生命・地震保険料は上限があるものの、生活面の必要経費として一定額が所得控除の対象となります。

 これらの所得控除の適用により、「所得控除額×適用税率」分の節税効果があります。

井川さんには配偶者控除がない?


 井川さんは配偶者がいますが、本人の合計所得金額が1,000万円を超えるため配偶者に対する控除は適用されません。
 税収確保のために、配偶者に対する控除は改正を重ねて複雑怪奇になっていますので、別の機会に確認しましょう。

 配偶者に対する人的控除の適用はありませんが、同一生計配偶者としての定額減税の適用を受けることができます。その旨が、源泉徴収票の摘要欄に「非控除対象配偶者減税有」として、記載される予定です。

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