青色申告を選ぶメリット⑥純損失の繰越と繰戻し
個人事業者、不動産オーナーの方が「青色申告」の選択で受けられる税務のメリットを整理しておきましょう!
青色申告を選択できるのは、事業所得のほか山林所得または不動産所得を生じる業務を営む人に限られます。
会社勤めで給与所得だけの場合は残念ながら選択できません。
事業所得とは、小売業、卸売業、製造業、サービス業、建設業、農業など範囲は広く、フリーランサー(自由職業者)も含まれます。自己の計算と危険のもとにおいて、独立して事業を行う人が事業所得者であり、仕事の規模や大きさは問いません。
不動産所得者とは、土地、駐車場、アパート、店舗などの不動産、不動産の上に存する権利の賃貸をしている人をいいます。アパート1室だけの貸付けであっても不動産所得となります。
山林所得者とは、5年を超える期間所有していた山林の伐採による譲渡、立木のままで譲渡することによる所得を得ている人です。
⑥純損失の繰越と繰戻し
~ 先行投資で赤字となっても安心! 損失の繰越と繰戻しの減税措置~
所得税は暦年(1月1日~12月31日)での単年度課税を原則としており、各年ごとに総収入金額から必要経費を差し引くことで課税所得金額と納税額を算出します。暦年課税では、赤字の年は納税する必要がなく、黒字の年は担税力に応じて納税するというのが原則です。しかし例外として、青色申告者には純損失の繰越控除と繰戻し還付が認められています。
純損失の繰越控除では、青色申告書を提出した年において生じた純損失の額(赤字)を翌年以後3年間にわたり繰越して、その後の各年度の所得金額(黒字)から控除できます。
たとえば、1年目:赤字△600万円、2年目:黒字300万円、3年目:黒字300万円、4年目:黒字300万円であったケースを考えてみましょう。
青色申告者は、1年目に発生した赤字600万円を繰越し、翌年以後3年間の黒字と通算することが可能です。損失を繰越控除することで、本来は納税が必要である2年目と3年目の所得金額は0となり税金納付が生じません。
4年目になって初めて納税が必要となります。
白色申告者の場合には純損失の繰越控除が認められないため4年間の所得金額は合計900万円となりますが、青色申告者であれば純損失の繰越控除の適用を受けることで4年間の所得金額は合計300万円になります。
結果として、納税額に大きな差が生じますね。
純損失の繰戻しでは、当年の損失(赤字)を前年に繰り戻すことで、前年の所得(黒字)に対する所得税の還付を請求できます。当年の赤字と前年の黒字を通算して所得金額を再計算し、前年の所得金額に対する所得税のうち納め過ぎとなる部分の金額(過納付額)の還付を受ける制度です。
当制度の適用を受ける場合は、繰戻しを行う純損失の金額が生じた年分の確定申告書とともに「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を申告期限までに提出する必要があります。
純損失の金額はその全部を繰り戻さないで、一部を繰り戻し、残りを翌年以後3年間に繰り越して翌年以後の所得金額から差し引くこともできます。
損失(赤字)が発生した年は、繰越控除または繰戻還付による減税措置を受けましょう!
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