見出し画像

【税金Q&A】「配当控除」を受ける損得


<質問>上場株式の配当所得は申告するかしないか、どちらが有利ですか ? 



<答え>

 2022年分の所得税の計算では、配当所得を含めた課税総所得金額が900万円以下であれば、総合課税による確定申告が有利となります。
 2023年以後の所得税では、課税総所得金額が695万円以下の所得者または他の人の扶養親族等で配当所得を含めた合計所得金額が48万円以下の人は、総合課税により申告した方が有利となります。
 改正により、住民税の計算で所得税と異なる課税方法の選択はできなくなります。

◆ 所得税での申告不要と確定申告

 上場株式等の配当については「申告不要」または「確定申告」のいずれかを選択できます。
 申告不要制度では税率20.315%(住民税5%を含む)の源泉徴収で課税は終了し、確定申告の必要はありません。
 ただし源泉徴収された税額を取り戻すことはできません。
 確定申告を選択する場合には、申告する配当等の全額について「申告分離課税」または「総合課税」のいずれかを選択する必要があります。一部を申告分離課税で、残りを総合課税で申告するような選択はできません。
 申告分離課税では、他の所得と分離して税率20.315%で課税されます。
本年または前3年以内の上場株式の譲渡損失との損益通算ができますが、「配当控除」は適用されません。
 総合課税では、他の所得と合計して、所得税は5.105%~45.945%の超過累進税率により、住民税は一律10%の税率で課税され、「配当控除」の適用があります。

◆ 「配当控除」の控除率

 配当控除の控除率は、所得金額に応じて、次のとおりです。
1.配当所得を含めた課税総所得金額が1000万円以下の部分は12.8%
  (所得税からの控除率10%、住民税からの控除率2.8%)
2.課税総所得金額が1000万円を超える部分は6.4%
  (所得税からの控除率5%、住民税からの控除率1.4%)

        

◆ 2022年の有利な選択

 配当所得を含めた課税総所得金額が900万円以下であれば、配当控除適用後の実質的な所得税率13.273%が配当に対する源泉所得税率15.315%よりも低いため、総合課税による確定申告が有利となります。
 一方で、住民税は「申告不要」を選択して税率5%の源泉徴収により課税完了とできます。もしも総合課税を選択すれば、住民税率10%から配当控除率(2.8%)を差し引いた7.2%で課税されてしまいます。
 そのため住民税は、別途、申告不要を選択した方が有利となります。
 上場株式の配当等のすべてを申告不要とする場合は、所得税確定申告書の第二表住民税に関する事項「特定配当等の全部の申告不要」欄に○を記入すれば住民税の手続きは不要です。

◆ 2023年以後の有利な選択

 改正により、2024年以後の住民税は所得税と異なる課税方法を選択できなくなりました。所得税で総合課税を選択したら、住民税も総合課税で課税されます。住民税は前年の所得に対して課税されるため、この改正は2023年以後の所得税から適用されます。
 改正後は、課税総所得金額が695万円以下の所得者または他の人の扶養親族等で配当所得を含めた合計所得金額が48万円以下の人は、総合課税により申告した方が有利です。
 課税総所得金額が695万円以下であれば、所得税と住民税の合計税率から配当控除率(12.8%)を差し引いた実質的な税率17.41%が、配当に対する源泉徴収税率20.315%(住民税5%含む)よりも小さいため総合課税の選択が有利になります。

◆ 税金以外の要素も考慮に入れよう

 ただし、配当所得を確定申告することで合計所得金額が48万円を超えると配偶者控除や扶養控除の対象外となり、世帯主の税負担が増えるケースがあります。
 また専業主婦の妻に130万円以上の恒常的な配当収入があると夫の社会保険の被扶養者から外れて、新たに国民年金や国民健康保険料の負担が生じることもあります。
 そのため上場株式等の配当について、確定申告をして配当控除を受けるかどうかの損得は、税金面だけでなく社会保険料の負担も考慮する必要があります。

いいなと思ったら応援しよう!