忘れた頃にやってくる「住民税」
個人の税金④
思いのほか少ない・・、給与の「手取り額」
「給与明細書」を確認してみてください。
給与総額と手取り額には、ずいぶん差がありますよね。
給料日に銀行口座へ振り込まれるのは「手取り額」で、給与総額いわゆる「額面」から、税金や社会保険料などが控除された後の金額です。
住民税が課税されるしくみ
今回は給与の手取り額を減らすことに一役買っている「住民税」について見ておきましょう。
住民税は、前年の所得に対して課税される地方税です。
住民税とは道府県民税と市町村民税の総称(東京都に居住している人は、都民税として課税)であり、各個人が毎年1月1日に居住する地方団体に支払う税金です。
住民税は地方団体が税額を決定し、地方団体から納税義務者に課税通知書が送付されます。
このように税金が課税される方法を「賦課課税」といいます。
給与所得者である高城さんの場合は、会社が提出する「給与支払報告書」に基づき、地方団体が所得を把握して税額を計算します。
給与所得者については、勤務先である会社が年末調整を実施し、当年分の給与支払報告書を、翌年1月1日に従業員が居住している市区町村に対し、翌年1月末までに提出しなければならないルールです。
税務署へは、給与支払報告書と同じ様式の「源泉徴収票」を提出します。 税務署に対しては、給与収入が500万円を超える従業員、給与収入が150万円を超える役員の「源泉徴収票」など、その提出範囲が限られています。
しかし、市区町村へは年初に雇用されている人のほか、前年中の退職者も給与総額30万円を超える人は提出する必要があります。
給与支払報告書の提出範囲は広いため、いろいろな会社を渡り歩いた人の給与データも市区町村において捕捉できるしくみです。
その後、毎年6月頃に税額の計算明細と納付書が役所から送付されます。
市町村民税と合わせて道府県民税の徴収と納税通知書の発行についても、市町村役場が行います。
住民税を納付する方法は2つあります。
銀行等の窓口に出向き自分が納付する「普通徴収」か、給与天引きで会社を通して納付する「特別徴収」のいずれかの方法で納税します。
地方団体が会社に特別にお願いして給与から天引き(徴収)することを「特別徴収」と呼称していますが、給与所得者の場合は特別徴収が「普通」の納税方法となります。特別徴収とは源泉徴収と同じ意味です。
なお現在、税務署の「源泉徴収票」と市区町村の「給与支払報告書」で、その提出義務範囲が異なることが会社にとって事務負担増となっています。
令和9(2027)年1月1日以後は、市区町村への提出のみで税務署への提出は不要となります。事務ご担当者にとっては、手間が減り嬉しいことです。
いまや、個人番号(マイナンバー)にて所得が捕捉できるでしょうから、当然の対応とも言えますね。
住民税は「所得割」と「均等割」
住民税は前年の課税所得金額に対して課税される「所得割」と、均等額で課税される「均等割」から構成されます。
住民税の所得割は、所得税のような超過累進税率ではなく、一律10%の比例税率により課税されます。
課税所得(=総収入金額-必要経費-所得控除)に対して住民税率10%を掛けるという所得割の税額計算は所得税と同じですが、所得控除(生活面での必要経費)の適用額に違いがあります。
(基礎控除:所得税は最高48万円、住民税は最高43万円、扶養控除:所得税は38万円、住民税は33万円など)
地方税法において、所得割10%と均等割5,000円という標準税率の定めがありますが、地方団体の判断で標準税率を超える税率(超過税率)で課税、あるいは標準税率よりも低い税率で課税(減税)する場合があります。
所得税よりも住民税の負担が大きい
ところで、課税所得金額が195万円以下の高城さんにとっては、所得税率5%よりも住民税率10%のほうが適用税率が高くなります。
平成19(2007)年に実施された国から地方への「税源移譲」で、多くの世帯では所得税率は下がる一方で、住民税の負担が増加しました。
税源移譲では、所得税の最低税率を10%から5%へ引き下げるとともに、最高税率は37%から40%(平成27(2017)年に45%へ)に引き上げました。
合わせて、住民税率は累進税率5%~13%から一律10%の比例税率に見直されました。
高城さんに適用されている住民税率10%は所得税率5%の2倍ですので、税負担も、住民税は所得税のおおむね2倍となります。
住民税は前年課税
住民税は1年遅れで課税する「前年課税」のしくみであり、前年の給与所得に対する住民税を当年6月から翌年5月までの給与から天引きされます。
なぜ、住民税の課税は1年遅れなのでしょうか?
会社は各従業員が1月1日現在に居住する住所地の市町村役場に対して、前年分の「給与支払報告書」を1月末までに提出します。
地方団体では、給与支払報告書(あるいは確定申告書)の提出を待って、各人の課税所得と税額計算をするため、納税通知書が発送されるのは翌年6月初旬頃になるわけです。
入社3年目の高城さんも、社会人2年目の給与所得に対する住民税が給与天引きという形で徴収され、手取り額を減らす原因となります。
また令和6(2024)年分の住民税に対しては、定額減税が適用されます。
住民税に対する定額減税は、合計所得金額1,805万円以下である所得者本人1万円、その同一生計配偶者または扶養親族1人につき1万円を住民税所得割から減額し、減税後の納税通知書が発行されます。