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愛には愛が返ってくる、はず


残虐な万能神アポロン


 ギリシャ神話におけるオリュンポス12神の1柱、アポロンは芸術、牧畜、予言、医術など多彩な万能神。

 父は全能神であるゼウス、母はレトで狩猟の神アルテミスと双子の兄妹。
 そしてアポロンは、神々への不敬は決して許さず残酷な仕打ちを。

 

 たとえば・・・、
 母親であるレトを侮辱して、自身の子だくさん(7人の息子と6人の娘)を自慢したニオベの子供全員を次々と、アルテミスと矢で射殺します。
 子供に罪はないと思うのですが・・。


アポロンとアルテミスが
ニオベの子供たちを
矢を射ています



 ニオベは「どうか、この子だけは助けて!」と末っ子の命乞いをします。しかし残酷な万能神アポロンとアルテミスが許すはずもなく。
 すべての子どもを失った悲しみで、ニオベの身体はだんだんと堅くなり、最後は石になってしまいます。

 リュディア地方には、まるで女性の横顔が泣き悲しんでいるように見える「ニオベの泣き岩」があります。見てみたい・・。


信じてもらえない予言の力



 また、トロイヤの美しき王女カッサンドラに恋したアポロンは、未来を見通せる予言の力を彼女に与えます。
 しかし、カッサンドラが愛を受け入れないため、意趣返しにアポロンは、カッサンドラの予言を誰も信じないように呪いを掛けてしまう。 
 このことが、木馬作戦でのトロイアの陥落につながります。 

アポロンから予言の力とともに
誰も信じてくれない呪いを
かけられた王女カッサンドラ




 神官ラオコーンとともに、怪しい「トロイの木馬」を城内に運び入れることに反対するカッサンドラ。しかし彼女の予言に、誰も耳を貸しません。
 神官ラオコーンのほうは、息子とともに大蛇に絡まれ絞め殺されます。


大蛇に絡まれている神官ラオコーン
エル・グレコらしく
ゆらゆらと描かれいます



 その後、トロイの木馬に潜んでいたギリシャ兵士がぞろぞろと躍り出て、トロイアは敗れます。
 カッサンドラは、ギリシャ軍総大将アガメムノンに連れ去られたのちに、その妻でギリシャ神話の悪女クリュタイムメストラに殺されます。

 そもそも、王女カッサンドラの兄妹であるトロイア王子のパリスこそが、トロイ戦争の原因を作った張本人。
 アテナ、ヘラ、アフロディテの三美神のうち最強?美人を選ぶコンテストの審査委員長、といっても1人で「パリスの審判」を任されます。

 女神達は、自分を選んでくれたときの褒美を提示して買収します。
 神さまも必死の様子、正々堂々と戦う余裕はなく、是非にも優勝したい。

 アテナは戦場での全戦全勝、ヘラはこの世での権力と富、アフロディテはこの世で一番の美女

 地位や名声や富よりも、当然ながら、絶世の美女を褒美にもらい受けたいパリス。優勝者の証として、アフロディテ(ヴィーナス)に黄金のリンゴを渡して、すでに人妻であったヘレネを手に入れます。

 ギリシャ最大のポリス(都市国家)であるスパルタ王メネラオスの妻で、傾城の美女ヘレネをさらったことが10年に及ぶトロイア戦争の引き金に。


パリスの審判
(ルーカス・クラナッハ)
けっこう老成してみえるパリス




 カッサンドラはパリスの妹、スパルタ王メネラオスはアガメムノンの弟、クリュタイムメストラはヘレネと双子の姉妹。
 すべては複雑に、容易には解けないように絡み合っています💦


愛には愛が返ってくる



 しかし、このように残酷な万能神アポロンは、悲恋の神でもあります。
 凜々しく美しい姿で描かれる万能神なのに、なかなか恋は実りません。

 愛せないから、愛されない。

 残酷さは残酷なできごとばかりを伝播し、愛には愛が返ってくる!


ダフネを追い掛けるアポロン
逃げるダフネは月桂樹に変身
ダフネへの片思いも実りません