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扶養控除と年調減税(年末調整での定額減税)の上手な選択は?


個人の税金⑧


月31,666円で扶養できますか?


扶養親族1人につき、基本額38万円の所得控除が適用されます。
所得控除は税法が定める「生活面の必要経費」としての人的控除です。
 
 扶養親族1人に対して38万円の人的控除とは、
 「家族1人を養うために、1か月当たり31,666円の生活費が必要ですね」と所得税法が考えていることを意味します。

いかがでしょう。
物価も上がっていますが、月31,666円でご家族1人を養えそうでしょうか?


共働き世帯の扶養控除と年調減税



 人的控除の適用を受けることで、所得者本人は「38万円×自分の税率」に相当する税額の軽減効果を受けられます。

 なお共働き世帯では、夫婦のいずれか一方が扶養控除の適用を受けます。
 そのため基本的に、夫か妻のうち所得金額が大きい(税率が高い)人が、扶養控除を受けることを選択します。


 一方で2024年の年調減税は、所得者本人(合計所得金額が1,805万円以下である居住者に限る)、その同一生計配偶者、扶養親族について1人につき3万円が所得税から減税されます。

 年調減税の対象となる親族は、扶養控除の対象とする親族と同じです。
 扶養控除は夫側で、年調減税は妻側で受けることは想定していません。


 年調減税の対象外となる高所得者は「本年分に限り、年調減税と合わせて扶養控除も所得が低い配偶者側で受けよう」という選択もあります。

 しかし、合計所得金額が1,805万円を超える高所得者は、扶養控除を諦めることでの増税(人的控除額×自分の税率)が年調減税3万円を上回ります。 
 扶養控除の所属変更により家計全体の税負担が増えることがないように、扶養親族の異動申告は慎重にしてください。

 なお、年齢16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)は住民税の非課税限度額を算出する際の人数に算入されますが、扶養控除は対象外(0円)です。
 そもそも扶養控除がない年少扶養親族については、年調減税の対象者である配偶者側の扶養親族として申告して、年調減税を受けることが得策です。
 具体的には、「扶養控除等(異動)申告書」の最下段にある住民税に関する事項「16歳未満の扶養親族」の欄に年少扶養親族の名前を記載します。

 

「親族」と「扶養親族」



 家族に対する人的控除については、親族扶養親族控除対象扶養親族の3つの言葉を整理しておいてください。

 親族のなかに扶養親族がいて、その扶養親族のなかに控除対象となる扶養親族がいるというイメージになります。


親族のなかに扶養親族がいて
扶養親族のなかに
控除対象となる扶養親族がいます




 まず親族とは、民法の規定による6親等内の血族および3親等内の姻族ここでは配偶者を除く)をいいます。 
 親戚の叔父さん、叔母さん、甥っ子、姪っ子なども親族に含まれます。
 もちろん配偶者も親族に含まれますが、配偶者に対する控除については、所得税法が別に規定しているため、ここでは配偶者を除きます。

 続いて扶養親族は、所得者本人と同一生計で、合計所得金額が48万円以下である親族をいいます。
 ただし、青色事業専従者として給与の支払を受ける人、白色事業専従者、他の人の扶養親族となっている人は控除対象となりません。

 なお、所得者本人と同一生計で合計所得金額が48万円以下の里子(児童福祉法の規定により里親に委託された18歳未満の児童)、養護受託老人(老人福祉法の規定により養護受託者に委託された65歳以上の人)も含まれます。

 

別居していても同一生計のケースあり


 「同一生計」とは、必ずしも一つ屋根の下での同居を意味していません。 
 勤務や療養、通学などの都合で、同じ家屋で寝起きしていない場合でも、余暇には起居を共にする、生活費を仕送りしている、療養費を負担している場合には、同一生計とされます。

 単身赴任、治療や手術での入院、大学進学のために同居していなくても、週末、お盆休み、冬休みには帰省する、退院後は家に戻り同居するならば、同一生計となります。   
 基本的に、生活費のお財布が一緒かどうかで判断します。


控除対象となる扶養親族



 扶養親族のうち控除対象となるのは年齢16歳以上の人です。
 年齢16歳未満の年少扶養親族は扶養控除の対象外です。
控除対象扶養親族」について、38万円の扶養控除が適用されます。


 この基本額に、年齢19歳から22歳までの「特定扶養親族」、70歳以上である「老人扶養親族」、障害を抱える親族などは控除額が上乗せされます。
 学費や医療費への支出が多くなるであろう世代の親族を扶養する場合は、少しばかり税金が軽減されるしくみです。


 年齢19歳から22歳までの「特定扶養親族」は大学に通う世代です。
 基本額に25万円が上乗せされ、特定扶養控除額は63万円となります。
 これらの世代は「月謝などで2万円ほど多くお金を支出しますよね」と、所得税法が考えているわけです。
 この上乗せ控除の特例は、「すねかじり控除」なんて呼ばれていました。
 もちろん学生でなくても、同一生計で合計所得金額48万円以下である親族が年齢要件を満たせば控除額が上乗せされます。


 年齢70歳以上である「老人扶養親族」は、基本額に10万円が上乗せされ、控除額は48万円です。

 老人扶養親族のうち、本人または配偶者の直系尊属(父母または祖父母、義理の父母または祖父母)で、本人または配偶者のいずれかと同居している「同居老親等」は基本額に20万円が上乗せされ58万円の控除となります。

 同居老親等は本人または配偶者のいずれかとの同居が条件となっており、
転勤などがあるときは注意が必要です。

 たとえば、本人夫婦・両親・子どもの3世帯で同居していたが、転勤命令により本人夫婦が引っ越して両親と別居すると、どうなるでしょう。
 この場合は、子どもが老親(子供にとって祖父母)と一緒に住んでいても本人または配偶者のいずれかとの同居条件を満たさず、同居老親等ではなく老人扶養親族としての控除を受けます。


障害者控除は本人と全ての扶養親族に



 本人または扶養親族が障害者に該当する場合は、年齢、所得に関わりなく
障害者控除が適用されます。
 障害者控除は、扶養控除が適用されない年少扶養親族にも適用されます。
 
 障害の重さにより控除額が異なり、扶養親族が特別障害者である場合は、同居か非同居かで控除額が変わります。
 一般障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です。


 同居特別障害者は本人または同一生計である親族との同居が条件であり、
同居老親等で求められている同居よりも条件が緩やかになっています。
 先ほどの同居老親等と異なり、転勤命令に伴い本人夫婦が引っ越して老親と別居しても、子どもが老親(子供にとっては祖父母)と一緒に住んでいるならば同居の条件を満たすこととなります。


扶養親族の年齢、
同居か非同居により
控除額が変わります!


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