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金融政策を実現させる手段と市場調節


最近の金融政策


 金融政策の基本方針は、日本銀行政策委員会の「金融政策決定会合」において決定されます。
 金融政策決定会合は年8回、1日~2日間にかけ集中的な審議が行われ、9名の政策委員(総裁、2名の副総裁、6名の審議委員)の多数決によって決定されます。 

 過去20年超の長きにわたり、「賃金の上昇を伴う形での『2%の物価安定の目標』を持続的・安定的に実現すること」を政策の目標としています。
 その目標を実現するために「金利の引き下げ」と「現金量(マネタリーベース)の増大」の合わせ技による金融緩和を基本的な政策としてきました。

 2016年9月には「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入し、金融市場調節で長期金利と短期金利の操作(イールドカーブ・コントロール)を行うことを決定しました。

 具体的には、政策金利(日本銀行当座預金のうち超過準備残高への付利)に▲0.1%を適用することで、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するように「マイナス金利政策」を継続してきました。
 マイナス金利の下で、「民間銀行は金利が付かない日銀当座預金に預けるよりも、積極的に企業等へ貸付けを行い収益を得ようとするため、市中に現金が出回る」であろうことを目論んだ政策です。

 その後の2024年3月時点で日銀政策委員会は、「先行き『2%の物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」と判断しました。
 果たして、生活実感はいかがでしょうか?

 その判断結果を受けて、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みの下での「マイナス金利政策」から、短期金利の操作を主たる政策手段とする枠組みへと見直しを行っています。


政策を実現する市場調節


 金融政策決定会合で基本方針が決定すると、その方針を実現するために、日本銀行は日々、公開市場操作(オペレーション)などにより短期金融市場における資金の総量を調整します。

 公開市場操作では、国債や手形等の「買いオペ」(市場への資金供給)または「売りオペ」(市場からの資金吸収)による金融機関への資金供給や資金吸収を通して、短期金融市場での資金需給関係に影響を与え、金利水準を意図する方向へ誘導します。

 現在、金融市場調節方針は「無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.25%程度で推移するよう促す」とされています。

 短期金融市場での「無担保コールレート」の金利動向は金融機関が企業に資金を貸し出す場合の金利に波及するため、オペの結果は経済活動全体に影響が及びます。


無担保コールレートとは


 インターバンク市場(金融機関のみ参加する市場)のうち、当日内から1年までという短い期間での資金をヤリクリするための市場を「コール市場」といいます。

 コール市場は「Money at call(呼べば、すぐに戻ってくる資金)」という意味で名付けられた市場であり、金融機関同士の資金調達の場です。
 金融機関は一時的な資金不足をコール市場で賄っており、翌日決済(オーバーナイト)物などの超短期間の取引が中心となります。

 コールレートが低ければ、金融機関は企業に対する貸出しを積極的に増やすことができます。コールレートは他の短期金利や景気に与える影響が大きいのです。
 そのため、無担保コールレートのうち翌日物が日銀の金融政策を運営するうえでの誘導目標とされています。


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