新鮮に驚くこと
昔、ある人に「毎回 新鮮に驚けていいね」と言われたことがある。
お店で注文した肉を「おいしー!!」と言って食べたら、「それ、何回も食べたことあるやつじゃん。毎回 新鮮に驚けていいね」と、バッサリ言われたのだ。
昔っていつだっけ?と思い返していたら、もう20年近く前のことだった。
あの時の「毎回 新鮮に驚けていいね」には、ちょっと皮肉めいたニュアンスが混じっていて、「もっと美味しいモノもあるのに世間知らずだね」とか「記憶力無いね」という意味合いだったように思う。
そっか。私って、頭が足りないんだ。
当時、自己肯定感がとても低いニンゲンだったのでわりと凹んだ。
他人の言葉の端々が気になったし、否定的な言葉に触れると、細い小枝みたいな自信がポキポキ折れて、自分は無価値なのだと心で泣いた。
あの自信の無さは、一体何だったんだろう。
もともとの気質か、あるいは年齢的なものか。わからないけれど、今の私はこう思う。
いくらでも何度でも、新鮮に驚いたって良いじゃないか。
「同じものを何回も楽しめてコスパよし。」「お得な性格だわぁ~」と思っている。
こんな風に思える日がくるなんて思わなかった。昔より今の自分のほうが好きな証拠だなと感じた。私は、今の私が一番好きなんだ。
じつは昨日、また同じ人に「あなたはホント毎回 新鮮に驚けていいね」と言われた。いつものお店のラーメンを「おいひー!!」と食べているときだった。
ただ、今回の「毎回 新鮮に驚けていいね」は祖父母が孫に向けて言うような純粋な「いいね」だったので、意外だった。
同じ人に同じ言葉を言われたはずなのに、20年経つとお互いこんなに感じ方が違うものなのか。
なんだか嬉しかったので
「あなたの妻は、今も昔も毎回新鮮に驚くアタマのもちぬしなんですよ。」
と、返しておいた。
この20年で、夫はまぁるく、私は図太くなったのですね。
月日っておもしろいね。