あなたのランドセルは何色ですか
私には小学4年生の娘がいるのだが、以前ばーちゃん(義母)が遊びに来た時、私にとって衝撃の事実が判明した。
「娘ちゃんに『どうして茶色のランドセルを選んだの?』って聞いたんだけど『ママが茶色にして欲しそうだったから』って言ってたわ~」
ばーちゃんは笑い話として教えてくれたんだけど、私は正直ショックだった。
当時年長だった娘に気を遣わせていたのか…。今の今まで気付いてなかった。
何だかめちゃくちゃショックだった。
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2017年。娘が幼稚園の年長になる頃、同級生のお母さん達の間で「ランドセルどうする?」という話題が増えた。
娘は第一子。ランドセルについて何の知識も無い私は色々調べまくった。
・自分が子どもの頃は、赤&黒のイメージが強かったが、現代のランドセルはすごくカラフル。
・最新機能などにこだわりがなければ、ネットで前年度のモデルをお安く買える。
・ここの地域の小学生は6年生までランドセルを背負う子が多いらしい。
そして…
ランドセルについてネットで検索すればするほど、専門の用語が出てきて大量の情報に溺れる。つまり
ランドセルは奥が深い。
とりあえず、どこでランドセルを探すにしても子どもの好みに合った色選びは重要。
「娘~。来年は1年生だね!ランドセル、どんな色にしようか。」
「えーとね、むらさきが良いなぁ。あっ、でもピンク!水色もいいなぁ~~~。」
幼稚園の頃、娘はパステルカラーのかわいらしい色が好きだった。しかしここで、とある問題が頭をよぎる。
『果たしてパステルカラーのかわいい系ランドセルを小6まで背負ってくれるのか?問題』
小学1年生でキラキラかわいいランドセルを購入したものの、長い小学校生活の中で好みが変わってしまい、背負わなくなってしまうという証言を複数聞いたことがある。
ランドセルも、決して安いものではない。できれば長く大切に使って欲しいところ。
色選び、難しいな…!?
悩んだ私は、娘と仲良しの友達のママにも話を聞いてみる事にした。
「ねぇねぇ、Aちゃんは何色のランドセルにするの?」
「うちは、近所に憧れのお姉ちゃんがいるから…その子と同じ色にしたいって言ってる!キャメルって色だわ。」
キャ……キャメル!!!
『キャメル』にひとしきり衝撃を受けた私は、次のターゲットに話を聞く。
「Bちゃんは、何色のランドセルになりそう?」
「うちは、赤系が良いって言ってて…。バーガンディって色になりそう。」
ば、バーガンディ???
ポチポチポチ…(思わずその場で検索する私。)
なんやそのオシャレな色の名前…!
なんと。娘が年長の時、ご近所女子のランドセルは『落ち着いた大人っぽい色』が流行っていた。
そういえば、ご近所のお姉ちゃん達のランドセルは茶系が多いかも…?6年生まで背負う事を考えたら、大人っぽい色が良さそうな気がする…!!
そして私は、娘にイチかバチかの作戦を試すことにした。
「娘~!AちゃんとBちゃんは、この色(※キャメルとバーガンディを見せながら)のランドセルにするんだって!お姉さんっぽいよね!娘もおそろいの色にしちゃう?」
「んー。その色ヤダ。」
友達とおそろい作戦、あえなく失敗。
しかし、私には次の手がある。
「じゃあさ!これは?チョコレート色だよ~!」
「えっ、チョコレート?」
娘はお菓子に目が無いのである。
「そう、チョコレート!このチョコレート色にさ、ピンクのラインが入ってるの、かわいいよね~。アポロチョコレートみたいで!」
「うん、その色かわいい」
「じゃあ、このチョコレートの色のランドセルにするのはどう???」
「いいよ!キラキラが付いてるやつね」
……という具合で、思いっきり誘導したのだった。
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あの時の私は、なぜあんなに必死に落ち着いた色のランドセルを選ばせようとしたのか…。今考えると、とても滑稽だったように思う。
私の中でランドセルは、小学生の象徴だった。あの時の私は、娘が小学生になるのが不安だったのではないだろうか。
泣かずに登校できるだろうか?
勉強についていけるだろうか?
先生との相性はどうだろうか?
新しいクラスや友達に馴染めるだろうか?
そんな不安な気持ちを、ランドセルにぶつけた。
6年間同じランドセルを背負って欲しいから!とこだわったのは『6年間楽しく小学校生活を送れますように』という願掛けのようなものだったのかもしれない。
娘は、そんな情けない私の気持ちを受け止めて、茶色のランドセルを選んでくれたのではないだろうか?これではどちらが大人かわからない。とても恥ずかしい…
今となっては『みんなと同じ色が』とか、『6年間背負って欲しい』とか、もう何でも良くなってしまった。
それは、私の不安が吹き飛んでしまうくらい、娘がたくましく成長してくれたから。情けない母でいつもホントごめん。ありがとうね。
もし娘が、自由にランドセルを選んだとしたら、一体何色のランドセルだったのかな。
時は戻せないし、もうランドセルを買い替える予定もないけれど。
想像すると、胸がドキドキする。
あの時、娘の好きな色を自由に選ばせれば良かった。娘の選んだ色を「良い色だね」って眺めて一緒にワクワクすれば良かった。
もし今、ランドセルを買い換えたとしても、そんな事はきっともう出来ないだろう。
ランドセルを見て「これから小学1年生になる!」というワクワク感は、あの時期にしか感じられない。
だから、余計に切ない。
後悔したって遅いのにね。ごめん。
余談だけど、現在の娘に「あの時、本当は何色のランドセルにしたいと思ってた?」と聞いたら
「いや、別に…。何でもいーし。」
………教えてくれなかった。
ぎゃふん。思春期!!!(そりゃそーだ)
【教訓】
子どもが好きなものを伝えてくれる時期は案外短いかもしれないので、「好き」を教えてくれるうちは親も全力で反応するべし。
※個人差があります。
娘が本当に背負いたかったランドセルは、何色だろうか。