サンタのゆううつ #ショートショート (1300字)
俺の名前は 三田 三太。小学生だ。
この名前のせいで、12月になるとクラスのヤツらに
「サンタ!おまえ実はサンタクロースなんだろ!」
「家でトナカイとか飼ってんの?」
「ゲームソフトプレゼントしてくれ!」
とか言われるので、正直ウンザリしている。
ほんとくだらねー。
今年もクラスのヤツらにサンタネタで絡まれていると、突然女子に話しかけられた。
「三田くんて…ほんとうにサンタクロースなの?」
森下みゆき。クラスの中では大人しくて、おっとりしている女子だ。話かけてくるなんて、かなり珍しい。
「そんなわけないだろ。…森下も俺の事バカにするのか?」
「ごめん、そんなつもりじゃなくて…!」
森下の顔がみるみる赤くなる。
すると、さっきまで俺に絡んでいたヤツらは急に森下に絡み始めた。
「何だー?森下、お前まだサンタ信じてんのかよ!」
「サンタとかいるわけねーだろ。」
「サンタは父ちゃんと母ちゃんなんだぜ?ジョーシキだよな~」
毎年この時期になると、たいていクラスでは『サンタいる派 VS いない派』でバトルが起こる。そして学年が上がっていくと、みんな当然のように「サンタはいない」と言い始めるんだ。
…ほんとくだらねー。
そんなことを考えながら話を聞いていると
「あ…。わ、わたし…。あの……。」
森下が泣いた。次から次へと目からでっかい涙が溢れてくる。
「げっ!やべー」「オレら悪くねーし!」
散々「サンタはいない」と言ったヤツらは慌てて逃げて行った。まじかよ。どーすんの。女子泣いてるけど…
とにかく気まずい空気を変えたくて、俺は森下に質問をした。
「なぁ、なんで俺にサンタクロースの事聞いてきたの?」
「あ、あのね…。三田くんが本当にサンタクロースだったら良いなぁって、思って…。」
「へぇ。なんで?サンタに会いたいとか?」
「うん…。あのね、わたしの家、去年お父さんがいなくなっちゃって…。お母さん、優しいけど毎日疲れた顔してて…。だから元気が出るようにクリスマスプレゼントをあげたかったの。」
「…ふぅん。」
「でも私お金とか持って無いから…サンタさんには『私にじゃなくてお母さんにプレゼントをあげて欲しい』ってお願いしたくて。」
「………。」
「ごめんね、泣いちゃって…。こんなこと三田くんに言っても困るよね。」
「いや、うん………。相談してみるよ。」
「え…相談?ど、どこに…」
森下は泣き顔のまま、オロオロと俺の事を見た。顔も目も真っ赤になっている。
「森下。他のヤツらには内緒だけどな」
俺は周りに誰もいない事を確認して言った。
「サンタクロースは、いるよ。」
「え?」
「絶対、ぜっっったい、内緒な!!!」
ポカーンとしている森下を見て、俺は急に恥ずかしくなって、走って逃げた。
こんな話、バカみたいって思うかな?
でも本当なんだ。
サンタはいるよ。
だって、三田家は代々続くサンタクロース家業だから。
普段は普通の家と何も変わらないし、トナカイも飼ってないし、赤い服も着ないけれど。本当にサンタを必要としている人のところに行くよ。
時間はかかるかもしれないけど、君も幸せな気持ちになれるように、俺たちは頑張るから
だから、絶対待っててな。
…なんて言ったら、君は信じてくれるかなぁ。
(おわり)
【蛇足のような補足】
ご近所の小4男子が「サンタクロースはいるよ!」と、サンタを信じていない子に優しく力説していたと聞き…。(その子の人徳により、信じていない子も何となく「サンタいるのかなぁ」なんて雰囲気になったらしい。)
なんか、、、いいなぁ~~~
と思って、勝手に話をふくらませました。
私は大人ですが、時々サンタクロースについては妄想したりします。
こんな事書いてたら、我が子に「はぁ?何言ってんの」と呆れられそうだけど。
夢見がちな母でごめんよ。
子どもも一緒に面白がってくれたら、それが一番嬉しい。