2020年10月『アインシュタインより愛を込めて』
恋はどこからきて、どこにいくんだろう──
・公式サイトにぐちぐち書いてあるやつ。
新島夕はくどくどとめんどくさい文章を書くらしいんで僕もくどくど書かせてもらいます。
The only source of knowledge is experience.
有名なアインシュタインの警句、"Information is not knowledge."に続く言葉。「情報は知識ではない。知識は経験からのみ出ずるのだ」
恋はどこからきて、どこにいくんだろう──
「人の気持ちが分からない奴だと言われる」当たり前のことだ。僕は君ではないし、私はあなたではない。でも、分かろうとすることが、理性的な社会活動を行う知的生物のはずである。
「だけど人の気持ちなんて、誰に分かると言うのだろう?」だからと言って理解を諦めることは、人の人たる責務を放棄することではあるまいか?
そもそも「より遺伝的に優れた個体を選別する」事ではない「恋」なんてものが「人の気持ち」の最たるものでしょうに。それが「どこから来て、どこに行くのか?」だと? お前は他人の気持ちを理解することを根底から諦めているくせに、自分の気持ちは発露して、他人に見せようというのか。やばいな。言ってて恥ずかしくならないのか? 匿名掲示板でレスバする奴は鏡というものを知らないらしい。
・システム
ゲームが始まってすぐに文章始めるのやめてくれよ。先にコンフィグいじらせろ。
それからバックログジャンプも全部のテキストでやらせろ。
あと右クリックってだいたいウインドウ消去じゃない? コンフィグで変えられるにせよ標準でショートカットメニューはカス。
あとマウスカーソルも変えさせて欲しい。
セーブもワンテンポ待たされるのがダメ。
結局良い点が「瞬時にバックログが出る」くらいしかない。まぁそれもウィルプラスのゲームがダメなだけなんだけど。
・プロローグ
冒頭30分くらい誰も喋らないの、サウンドドライバを疑うからやめて欲しい。
冒頭は「俺、死ぬのか……」から始まる仲間捜し。???「それが一番楽しい所じゃん」なんでこの主人公は無駄に喧嘩腰でレスバしてしまうのか。
・Chapter 2
・西野佳純
名前が「純佳」だったら+10点くらいしてた。ボクシング女。
いきなり主人公が7月27日の昼食を2回食べる。確かに西野佳純も大食いだけど感化されすぎじゃないですか? まだ一発ぶん殴られただけだろ。
新島夕が書けないから書かないと言うのは正しいんだろうけど、そのせいで非常に淡白。新田忍と坂下唯々菜は完全に空気だし。
ただ「最初にやるルート」としては及第点じゃないんですかね? 過度にヒロインを可愛く書きすぎない。解決すべき問題は存在だけ言及する。
ここまでだとエロゲとしては0点だと僕は思います。
・新田忍
たまに三白眼になるお姉さん。脇が甘い。
「大人とは」をテーマにしていた感はあるが、いまいち結論を出せていない。
たまにヒロインが妊娠するパターンはあるが(前回やったヒロイン妊娠は中絶後バッドエンドだった模様)それでストーリーが変わることもないし。なんで入れたの? あってもダメではないがある必要も無い。
子供ができて大人にならなければならない「俺たち」と、まだまだ精神的・社会的に子供な「俺たち」の話をすれば良いのに、なんかよく分からないバトル始めたのは謎。残りで解明されるかもしれないけど、そう言うことではないんだよな。
そしてやはり西野佳純と坂下唯々菜は空気になります。
・坂下唯々菜
唯々菜って変換できないからやめてください。主人公が一目惚れしたらしい。都合のいい女。鼻からラーメンを食べるマイエンジェル。
要するにこれは性行為に及ぶ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』って言う気がするんですよね。ただ前二人よりは坂下唯々菜が可愛く描かれていたし、西野佳純と新田忍が空気にならなかった点は評価できる。
でも「ストーリー」としては面白いけど、これをエロゲでする必要は一切無い。
ここまでやって、最初にやった西野佳純が「愛内って人の気持ちが分からないよね」って言ったから、他のルートでも言われるんだと思ったらそんなことはなかった。公式サイトにも書くくらいに重要な事なんだから、全部のルートである台詞だと思った。
・有村ロミ(比村茜)
あだ名はアリソン。不登校らしい。でるゲーム一ヶ月間違えてませんか? たぶん本体は右耳のピアス。
ルート入ってすぐ思うけど、今までのルートと有村ロミ別人じゃん。ある意味そう言う一面を見せるからこそのルートとも言えるような気はしないでもないが。そうだとしても急すぎる。
改名の理由も、もったいぶっていた割には大したことなかった。
まぁ続きがあるから許すけどChapter2としての有村ロミルートはカス。
あとは……なんで愛内周太からの最後の手紙にボイスをつけてしまったのか。
・Grand
七年前の回想から入る。主体性を持った新田忍ルートという感じ。選択肢の選び方次第では学校に行ってから駅前に行って、また学校に行く謎ムーブをすることになる。そもそも片桐猛はサブキャラなんだし西野佳純と統合して、西野で学校に行ってそのまま片桐→食堂で良かったんじゃないか?
「遠いところまできたもんだ」この一文には心底がっかりした。「思えば遠くへ来たもんだ」と書けば300点をつけられるのに。
タイトルも、回収はするけどとても雑。あれはとりあえず触れただけで、回収とは言えない。アインシュタインではなく「ニュートンより愛を込めて」でも「ナポレオンより愛を込めて」でも「アルキメデスより愛を込めて」でも良かった。そもそも「大いなる力」としてのデウス・エクス・マキナに物語中で触れた時点で風呂敷を畳むことを諦めたとしか言いようがないし。
P.S.こもわた遙華のSD絵、作中のどこにあった?
・総評
一応断っておくが、企画と脚本が別人ならまだしも、今回は企画脚本ともに新島夕。つまり「やりたいこと」「書けること」「書けたこと」「やれたこと」は一致している前提で話をする。
「物語」としてなら可もなく不可もなく。「普通に面白いんじゃない?」程度。人にオススメするかと聞かれれば、わざわざオススメもしないし、買うことを止めもしないけど、と言ったところ。
「エロゲ」としてなら0点と言う感じ。西野佳純・坂下唯々菜は「はいはいエロゲだからセックスさせれば良いんでしょ」って感じ。「ひと夏のラブストーリー」だから付き合ってから3ヶ月とかそういう事を言うつもりもないが、「ノルマ消化」感がある。特に坂下唯々菜1とかなんで始めたのかが分からない。船の中にしてはベッド広いし。20~30クリックくらいで射精して事を終わらせるテンポは嫌いじゃないが、いよいよ「なくても良かったでしょ」となる。あとはシーンの数がヒロインで違うのはどうなのよ、と。有村、坂下、新田、西野で1、2、3、3。シーン11枠、OP1、2で2枠取るにしても2、2、2、3(順不同)だと思うでしょ。しかもグランドルートヒロインの筈の有村ロミは1シーンの上に公式サイトで事前公開されてるし(尚坂下のCGはシーンではない模様)。
そもそもにキャラが可愛く書けているわけではない模様。きみしま青のイラストで可愛いだけで、思想・行動・台詞的な可愛さはない。主人公、愛内周太も「ヒロインが好き」ではなく「ヤらせてくれる女が好き」なだけだろう。定期的に性欲が強いアピールしてたからそれはそれで納得できるんだけど、だからと言って1、2回の射精で満足してるんだよな。お前エロゲ主人公だろ。
「グランドルート」を名乗っている割には全然グランドではない。「リターンルート」とか「カムバックルート」とか言ってくれた方がいい。それじゃあネタバレになるから「コンティニュー」とかでも。結局、西野佳純は幸せにならないし、新田忍も幸せにならないし、坂下唯々菜も幸せにならないし、有村ロミも幸せにならない。結局ヒロインは幸せにならないで「愛内周太の病気が治りました」だけ。幸せになったのは愛内周太、主人公。主人公はヒロインを幸せにするべきであって、主人公だけが幸せになるのは違うでしょう。目指すのは「大きな幸せ」ではなくて「ささやかな幸せ」だろと言われるかもしれないが、その割には「ささやかな幸せ」を享受したわけでもない。個人的には「破滅の前の刹那の幸せ」は結構好きなのだが、そういう「幸せ」もなかった。
そもそも公式サイトのコンセプトともずれてる。序章はともかく、学園編は運命に立ち向かっていない。西野ルートは運命に負けて記憶を失うし、新田ルートだって最初から「帰れるかもしれない」と提示された上で帰ったんだからそれは元々帰れる運命だったんでしょう。坂下だって坂下は消えるし、だからと言って界狩蛍と出会えるわけではない。いずれにせよ、結果として負けるのは(それもそれでどうかと思うが)仕方がないにしても、そもそも立ち向かうこと、抗うことをしない。過去編も、「愛内周太の秘密」ではなく「郷田慎二の秘密」だし。真相編も謎は「世界にちりばめられて」いない。
これが音に聞く新島夕だと思うとがっかりだよ、僕は。
・(追記)タイトル回収
タイトルというものには意味が必要だ。それは読者、プレイヤーがあっと驚く仕掛けであれば、それだけでライターのセンスを評価できるし、そうでなくとも、内容と関係するものであればあるほど、良いものである。『9-nine-』や『さくら、もゆ。』などはしっかりタイトルに意味があるものであり、それは、ライターがノベルゲームのライターとしては数段劣る『神様のような君へ』でさえできていた。 しかし、この『アインシュタインより愛を込めて』はどうだっただろうか? 愛内周太の父愛内浩太が、息子を守る決意として自分の作った『アインシュタイン』に込めた思いである。そもそもなぜ「アインシュタイン」だったのか? というものは作中で語られている。「浩太が好きな科学者だから」だという。たったそれだけの理由で、「アインシュタイン」と名付けられた。ゆえに、「愛内浩太の好きな哲学者」でもいいし、「愛内浩太の好きな車種」でも良かったわけだ。もしかしたら「駒込ピペット」とか呼ばれてる世界もあったかもしれない。
そもそも、主人公の「愛内周太」という名前は「アインシュタイン」から名付けられていることは、説明するまでもないだろうが、父親はそうではないのだから「アインシュタインより愛を込めて」というのはおかしい。父親の名前が「愛内周太」であれば「アインシュタインより愛を込めて」というのは「愛内周太より愛を込めて」であり、タイトル回収としては、満点に近いものをつけられた。
実際のところ、主人公が愛内周太であり、その父親は愛内浩太である。ゆえにこの作品で行なわれたことは「言及」であり、決して「タイトル回収」などではない。むしろ、文章において「不要なもの」であったとさえ言える。不要な文章は、書かれない方がマシだ。
これが音に聞く新島夕だと思うとがっかりだよ、僕は。
・(追記2)ヒロインとしての有村ロミ
もし有村ロミがヒロインであったなら、それを守るのは主人公の仕事だ。だが、実際はどうだっただろう。ヒロインを守ったのはアインシュタインで、それも主人公が動かしていたのではなく、父親の残留思念とでも言うべきものが守ったのである。つまりは有村ロミはアインシュタイン=愛内浩太のヒロインであり、愛内周太を主人公に据えるこの作品のヒロインではない。
そもそもにもし有村ロミが本当に愛内周太を好きだったなら、目的は「愛内周太と共に生きること」になり、決して「共に死にたい」を望むことはないはずだし、もし望んだとしたら「俺と一緒に生きてくれ」と言うのが主人公の役割だ。
そもそも、ゲームにおいて一番の山場であると言ってもいい告白シーン。愛内周太が「俺はお前に惚れている」と言ったときも有村ロミは「……」「え」であり、「私も」とはならない。もちろん、「言葉で伝えないからこその想い」はあっても、彼らはそのようなコミュニケーションを行なう人種ではないだろう。それに、その後星まりすから「愛内周太に守ってもらった命を大切にして帰れ」と言われた後も、「帰る」であり、「帰ろう……周太と過ごした街へ」ではないのである。
それに有村ロミが愛内周太を助けたかった理由だって、「助けてもらった」からであり、ギブアンドテイクの関係だ。見返りを求める関係が本当に幼なじみ/恋人の関係なのだろうか?
ED後に書かれる有村ロミの手紙でさえ「君のありかたが、私は好きです」と言っている。「が」という格助詞は他の要素を排除する格助詞である。つまり、「私が好きなのは君のありかただけ」であり、愛内周太に対して好きとは言わないのである。
この作品が「人の気持ちはわからない」をテーマにしているから、主人公を好きだと思っていたヒロインの気持ちは、主人公を好きだと思っていなかったと言うのならば、それはそれでテーマに沿っていたのかもしれないが、物語というのは結論と真逆の事を頭に掲げるものだ。もし、最初と最後で変わらないのであれば、それは何もしていないのと同じである。何もしていないのは、存在していないのと同じなのだ。