【短編小説】クリのキヲク(2)
東京駅から新幹線を利用して仙台駅で降りた。
改札出口のすみで輪行バッグから、タイヤとフレームを外してあるマウンテンバイクを取り出し、組み立てる。作業時間は約20分。
70リットルのバックパックには雨具、テント、シュラフ、飯盒等の野宿一式。食料は現地で調達する予定だ。
マウンテンバイクの重量は12キロ、バックパックは約20キロ近くになる。これが、いつもの旅スタイルだ。
中学校の修学旅行は京都・奈良だった。
新幹線を乗ったのは、その時が初めてじゃなかったが、奈良で大仏を見た3日目に「あ、遠くに来たんだ」と、やっと感じた。
できれば新幹線も使いたくない。距離を体感したいからだ。とはいえ、時間に制約されるサラリーマン。そんな悠長なことも言えないので、輪行バッグを使って時間を節約する。
いろんなモノが早くて便利になるのに、生まれた余裕は仕事に費やされたりするのだから、矛盾している。
今回は10日間で仙台から三内丸山遺跡まで向かう。直線距離で約360キロ。一日最高80キロちかく走ったことがあるので、余裕をもったスケジュールにした。
仙台駅西口のロータリーに降り、愛宕上杉通りを北上すると、NHK仙台放送局の交差点から、奥州街道に変わる。いよいよスタートだ。
(つづく)
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