元新薬メーカ研究開発者が語る役立つジェネリック医薬品情報
序論
昔、ゾロとも呼ばれたジェネリック医薬品(以下、GEと略します)、今や国の医療費削減の方針に伴い、主役の座を占めるようになったことはテレビCMを見ていても明確に判ることです。
その一方、患者さんにとっては、効果が薄いのではないか?
品質が劣るのではないかと危惧し、新薬(先発品)からの切り替えを躊躇う患者さんも一定は存在します。
また医療関係者、特に医師の中には自身が処方箋を書く場合、GEへの変更可(正確に同一成分の薬剤への変更不可に☓を付けない)としながらも、自身、家族が薬剤を使う場合は先発品を希望される場合もあります。
ここでは、薬剤師、元新薬研究開発者の立場から、GEについて少し解説いたします。
そもそもジェネリック医薬品とは?
今さらかと思いますが、まずはGEとは何かについて説明したいと思います。
GEとはウィキペディアで検索すると、「先発医薬品の独占的販売期間の終了後に発売される、先発医薬品と同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が原則同一であり、先発医薬品に比べて低価格な医薬品である」と記されている。
これでは説明不足なので、「先発医薬品の独占的販売期間の終了」の意味について説明します。
GEは、医薬品の特許が切れてから発売されます。先発医薬品の特許の期間は、長くて20年程と言われています。これは新薬のタマゴを発見したときから20年で、通常、12年~15年くらいかけて、新薬のタマゴを製造販売承認を受けて、残りの5~8年間、医薬品を専売できます。
先発メーカーの苦悩
今の時代、新薬医薬品の開発費は1000億円~1500億円(場合によって2000億円以上)はかかり、専売できる、この5年間~8年間で開発費回収と利益を出さないと、次の医薬品が開発できません。
私はGE医薬品メーカー勤務経験がないので、正確な値は分かりませんが、噂ではGEメーカーの開発費はおおよそ100分の1の20億円前後と言われています(もちろん、GEの種類よって大きく異なります)。
では、その新薬開発リスクを含んでまで新薬メーカーは開発するのでしょうか?
もちろん、これだけ開発費がかかる現在、かなり財政的、開発能力的に一定の規模を満たさない製薬会社は淘汰されます。
国内の大手製薬会社でさえ、世界では決して上位ではないので、開発済の新薬のタマゴをライセンス販売したり、逆にバイオベンチャーなどからライセンスを買い込んだり、規模大きな製薬会社は他の開発能力の高い製薬会社を買収したりします。
10年位前までは大手製薬メーカーの開発部門の一定以上のポジションにいれば。東京キー局のテレビ局員の平均より少し低い程度でした。もちろん現在でも外資メーカーの一定ポジションにいれば、中間的地位にいる勤務医程度の給与は得ています。
しかしながら中小規模の製薬会社は勿論、大手医薬品メーカーも新薬の開発品が複数進行しなければいけない時期、さして開発品目がない時期では必要な人員(リソース)が大きく異なります。
これをカバーする為、今や海外も含めてCROと略される開発業務受託機関に外注します。一定の製薬会社では常にリストラの影に怯えている状況もあります。
それでも開発が進むのは、会社としての成長意識だけではなく、社員の新薬を扱っているというプライドが大きいと思います。話が脱線しましたので、GEの話に戻ります。
医薬品の特許の種類
医薬品の特許は主に次の4種類があります。
1.物質特許
2.用途特許
3.製剤特許
4.製法特許
1.物質特許
医薬品の基(原薬)に関する特許です。
これが、その医薬品薬品の成分となるため、医薬品開発中で最重要な特許のです。
物質特許を取得後に、新しい物質が医薬品として販売されると、新薬として、それを独占的に販売できます。
2.用途特許
用途特許は、開発医薬品を対象とする疾病を特定した特許です。
しかし、効能効果を限定して販売された医薬品の中から、製造販売後臨床試験(フェーズ4)やメーカーの調査の他に医療現場からフィードバック(医師からの自発)報告で他の疾患への転用の可能性が明らかになることがあります。
このように場合、新たな効能効果ついて、再度特許申請をすることができます。
時に用途特許は、GEが出た後だと、医療現場が混乱する原因となります。
具体的例では、
疾患Aでは、用途特許20年が経過してGEが発売済であるが、疾患Bでは用途特許が残っている場合です。
この場合、GEは疾患Aにしか使うことができません。
理屈的には同一成分なので、疾患Bにも効果がある可能性はあるのですが、用途特許が切れていない場合は、GEを疾患Bに使うことができません。
この場合、同一成分だからと言って、疾患Bに使うと保険診療外になってしまうことがあります。
これが医療現場で多く見られます。
3.製剤特許
製剤特許は、医薬品成分を製剤化する場合の特許です。
錠剤で承認取得➾カプセルを開発すれば、再度特許の取得ができます。
4.製法特許
製法特許は医薬品を構成する添加物などの特許です。
特許申請を出した時から、製法変更があれれば、再度特許申請を受けることは可能です。
GEの要件
各種特許のうち、1.物質特許と2.用途特許をクリアしていなければ、GEとして、保険診療での使用は認められません。
GEへのメリット、デメリット
以上の経緯を辿って開発されたGEのメリットは患者さんの実質支払う薬代の費用負担の軽減と国の医療費の削減が大きなメリットです。
またGEメーカーでは黒柳徹子さんがCMやっているように、飲みやすさに拘った医薬品を開発している場合もあります。
一方、それだけメリットがあるのに、患者さんや一部の医療関係者は先発品に拘るのでしょうか?
大きな理由の1つは実際に使用した際の効果感です。医師の場合には患者さんからの症状改善状況を基に患者さんや自身に使用する薬剤は先発品に拘る医師は少数ですが一定数います。
これは10%は正解で90%は心理的効果(バイアス)です。
10%の真実とは、各種の重要な2つの特許抵触を回避したため、生まれてしまう肌感覚の確率で、
解りにくいかもしれませんが、
A=B、B=CをA=Cと解釈しているのがGEのイメージです。
残りの90%の心理的効果の原因は、飲みやすさに拘ったが為に外観に変化が出てしまったりすることに起因する場合、最初から効果が薄いと思っている事によるマイナスイメージ効果です。
また、医師の場合は職業柄、添付文書で報告されないような非常に稀な副作用らしき問題がある場合、先発メーカーは海外を含め、可能性を含めて極めて稀な副作用疑いやその対処法を先発メーカーには数多くの情報が社内のデータベースにはありますが、GEメーカーは持っていないことへの不安です。
オーソライズドジェネリック
上記の不安を解決するのがオーソライズドジェネリック(AG)です。AGの場合、先発製薬会社がGEメーカーと契約して、GEメーカーに対して特許の使用権が与えらます。
場合によっては新薬メーカーが先発品と同じ製造ラインで製造してパッケージだけの違いという場合もあります。
まとめ
GEには何となくパクリもんといったイメージがある方がいますが市販されるまでには、オリジナルの工夫をしていまるものも沢山あります。
ご自分の生活や価値観に適したGEを見つけてられるのが一番良いでしょう。
なお、全医薬品はチェックはこちら「今日の治療薬2020: 解説と便覧」👇で、調剤薬局薬剤師、臨床開発担当者が医療機関でカルテチェック時に必携の本です。
逆にそこまで必要としない人はこちらで👇「お医者さんにもらった薬がわかる本 その薬、ジェネリックでいいですかで・・」
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