110 妻は家庭内託児所じゃない
久しぶりに夫と口論になった。
実家に未だ滞在中の母子のもとへ、週末だけ“通い育児“している夫。
今週はほとんど在宅ということで、初めて1週間まるっと実家に来ることになった。
のだが。
わたしの両親に子どもの面倒を見てもらい、2人で久しぶりの散歩をしていた時のこと。
夫の育休について話し合った。
夫には、かねてより最低6ヶ月の育休を取得してほしい旨伝えていたのだ。
ようやくするに、夫は、やっぱり、育休をとりたくないらしい。
理由を尋ねたところ、最初は世帯の収入が・・・などとゴニョゴニョ言っていたが、結局は自分の出世の妨げになるのが嫌なんだそうな。
子どもが欲しい欲しいという夫に、わたしは妊娠前から、なんなら結婚する前くらいから、折に触れて夫に育休をとってもらいたい旨を伝えてきた。
その度に、わかった風の返事をしていたくせに。
一方で、夫は育休を取らないための条件も提示してきた。
わたしが4月から、育休中に大学院進学を目指しているのだが、その期間わたしは無給になる。
なので、普段は折半している生活費を、その期間は夫が負担してくれるという。
しかもなんと、これからかかるであろう保育園の費用も含めて。
だから、育休は取らずに済まさせてほしいと。
最初は、「悪くない条件だな」と感じていた。
でもなんだかもやもやする。
わたしは、夫が付与される有給を全て消化すること・保育園の迎えを担当すること(すなわち残業を基本的にしないこと)をさらに条件に加えた上で、検討しても良いと伝えた。
すると、いずれにも難色を示されてしまった。
有給は権利だから努力する、でも残業はしたい、と。
帰宅して、子どもをお風呂に入れ、夕食を食べても、まだなんだかもやもやした。
そして夕食後、いつもなら子どもが寝てくれる時間に寝れない。
夫は久しぶりの育児に疲れたのか(前日の夜は、夫が1人で夜を担当してくれていた)、子どもの泣き声にあまり反応せず、携帯をいじっているだけだった。
仕方なくわたしが抱っこしていたら、何も言わずにすーっと夫が部屋から出て行ってしまった。
前段のもやもやもあり、1人で抱っこで子どもをあやしながら泣いた。
非常に腹が立った。
気が向いたときだけ育児すればいいと思っているんじゃないかと。
平日週末昼夜問わずに子どもの対応をしているわたしからすると、平日はただ仕事“だけ“をしていればいい夫には、週末の育児全てを担うくらいの気概を見せて欲しかった。
それに、わたしが大学院通学中は生活費の折半を免除してくれる代わりに育休も有給も取らない上に残業もさせてくれ、というのはあまりに虫が良すぎるんじゃないかと思えてきた。
わたしは、今回の妊娠出産で、かなり責任のあるポジションで勤務していた海外赴任を中断し、日本に帰ってきている。
それなりに、いや、相当に、周囲に迷惑をかけて、気まずい思いもしてきた。
そのため、キャリア形成において、控えめにいってかなり大きな空白、否、誤解を恐れずにいうなら“傷“を負った。
一方で、夫は、これまで一切自身のキャリアに傷をつけず、今後も一切負うつもりがないらしい。
妻を言うなれば家庭内育児所とし、金で解決しようとしているように思えた。
非常に腹が立つ。
それに、「有給は権利」というけれど、育休だって立派な権利なんだから行使できるはず。
これまで散々、育休をとるポーズを見せてきたくせに、土壇場になって、もう子どもが生まれてしまって誰かが育休を取らなくてはならない状況下において、自分は取りたくないと言い出すなんて卑怯じゃないか。
なんて考えながら、寝かしつけの仕上げをしていたところ、突如夫が戻ってきた。
よりによって煌々と光るiPadを持って、「さっき読みたいって言ってた漫画ダウンロードしておいたよ!」と褒められる気満々の顔で、ようやく寝かけた子どもを抱くわたしに急接近してきた。
後から考えれば、わたしのためにやってくれたとも思えるのだが、その瞬間は秒で頭が沸いた。
子どもが寝そうなんだから静かにしてくれ、とだけ告げて、わたしは一切口をきかなくなった。
追加で数分の寝かしつけを行い、ベッドに子どもを置くことを成功したものの、
怒りが収まらなかったので一度部屋を出た。
夫も少しまずかったと思ったのか、わたしが部屋に戻ってきたとき、布団に寝転んで「おいで」などと腕枕をする姿勢で待っていた。
のだが、今はそれじゃない感が強く、わたしの怒りに油を注いでしまった。
出来る限り冷静に伝えたつもりではあったが、
・気が向いたときだけ育児をしていないか
・自分は妻の育児の“お手伝い“だと思っていないか
・このまま育休を取らないとなると、夫の意識はいつまで立っても“お手伝い“のままではないかと懸念する
・・・この3点を伝えたのだが、
最後の3点目を述べた後「考えすぎだよ」とだけ言い捨てて今度は夫が部屋を出て行ってしまったのだ。
実家の親に心配をかけたくなかったので声を殺して泣きじゃくったのだが、
このままだと腹が立ちすぎて眠れないと思い、
夫がいる部屋まで乗り込んで、「育休とるって言ったから産んだのに」とだけ吐き捨てて、わたしは再び寝室に戻った。
それでも必ず朝は来る、
ではないけれど、そんな状況下でも子どもは自由気ままに泣く。
泣く我が子を前に、自分も泣きじゃくりながらオムツを替え、おっぱいをあげた。
なんだか全てが嫌になった。
しばらくして夫がやってきた。
ごめんね、と。
わたしはしばらく無視していたのだが、再び寝かしつけに難航するわたしを見て、夫が抱っこを代わってくれた。
やっと子どもが落ち着いた頃に、夫から「気が向いたときだけ育児してるって言われて嫌だった」とポツリと述べた。
わたしも、言い方が酷かった、と謝った。
結局、全ての根源である育休問題についてはいずれも触れないまま、再び子どもが泣き出してしまい、
翌日はリモートではあるものの仕事のある夫をこれ以上付き合わせるのはかわいそうだというわたしの慈悲心もあり、
夫を別室に戻してあげたため、またももやもやが残る結果となってしまった。
なんだか、この問題には出口がないように感じてきた。
来週には、実家を出て自宅に戻る。
それまでに、解決できるといいのだが。