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竹内願人(2012)アンナチュラル―小説・自閉症(上・下)

昔、石原さとみが主演したドラマで同名の作品がありまして。
特にファンでも何でもないのだけれど(普通に好きです)、図書館でふと見かけたときに何か訴えるものがあったので借りてみました。

この記事を書くにあたって調べたら、ドラマとこの小説はまったく別ものだったと今更気づくが後の祭り、、、

思い立ったが吉日ということで記念すべきマガジンの1作品目として投稿したいと思います。

全体として、自閉症のメカニズムに対する2つの流れを主軸に話が展開するのですが、
自閉症は先天的な脳の機能不全である、という”主流”派と
自閉症は後天的な環境によってもたらされる、という”少数”派
というのが大まかなところ。

両者の主張の違いが、とある仏教の経典と絡み合って殺人事件にまで発展するという、なかなか興味深い展開

が上巻までの流れだったのだけれど・・・

下巻になるについれ内容が筆者の主張てんこ盛り幕の内弁当状態になり、挙句肝心の殺人事件の黒幕は不透明なまま、
突然出てきた家族愛のお話で締めくくられる。

というなんとも消化不良な展開にすこし残念な気持ち。

わたしとしては、
冒頭と中盤の殺人事件の関連性だったり、
少数派(つまり筆者の)主張における、育児=母親、という構図にやや違和感を覚えたり。

冒頭から中盤までの展開がダイナミックで面白かった分、まかれた伏線が放置気味なのが残念でした。

タイムリーに、日本の公立小・中に通う9%近くの子どもが発達障害の可能性というニュースをちらっと目にしました。
この本の筆者の意見に賛同するわけではないですが、いろいろな議論が成されるといいなと思います。
ある一定の層からの反発を恐れて、議論すらできないことへの警鐘という意味では、この本から与えられる洞察はそれなりに意義があると思いました。

ポイント:★☆☆



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