ヒューマウォレット
だいぶ普及してきた。
「ヒューマウォレット」私が開発した人型の財布だ。
見た目はほぼ人間と変わらない。
動きも滑らかで、人間か財布か判別するのは難しい。
口から札を入れる。左目から小銭を入れる。
現金の容量は長財布のだいたい倍くらいだ。
満杯になってくると、苦しそうにする。
持ち主認証が出来ているので、買い物に出かければ自動でついてくる。
スマホと連動しているので、銀行のキャッシュカードや、クレジットカードも機能として備わっている。
財布のように、落としたり、スリに遭ったりしないから安心だ。
人型なので、電車賃がかかる。
左手にICカード機能が付いているが、自動改札は二人いっぺんに通れないので、車掌のいる改札で2回左手をかざす。
空港は対応が早かった。ヒューマウォレットの空輸サービスがオプションで選べるので、早く電鉄系もうまく対応してほしいものだ。
男性・女性選ぶことができる。
顔もいくつかのパターンで変更可能だ。
財布なので、オシャレに気を付けたい人には、衣服やアクセサリーなども多数用意している。
最近では、いわゆる有名人とハイブランドのコラボ型ヒューマウォレットなんかも出てきた。
ラグジュアリーなヒューマウォレットを持っていることが、ひとつのステータスにもなってきている。
走ることはできないので、注意が必要だ。
信号を急いで渡ったりはできない。
ここは改良が必要だが、なかなか難しい。事故の危険もあるのだ。
さすがに人間と違ってすごく重いから、衝突などしようものなら相当な運動エネルギーだ。
荷物は右手に持つことができる。
デートや買い物など、ぶらぶら街の散策をするにも大変便利である。
最近は、喫茶店や料理店でも、入り口にヒューマウォレット置き場を設ける店が増えてきている。充電も可能だ。
あらゆるメーカーが、そういった市場に参入してきている。
偽物も出てきた。
個人情報などの流出、知らない間にクレジットカード情報が盗まれるらしい。
ウイルス感染の症例も出ている。
持ち主認証にバグを起こして、全くの他人を持ち主と認証してしまうという。
大手IT会社と連携して対応しているが、その攻防は絶えない。
人工知能システムが導入されたアメリカ製の新製品が去年の夏ころから日本国内でも販売されはじめた。
もちろん特許収入(ライセンス料)はいただいている。
AI搭載なので、自分が帯同しなくても、勝手に買い物をしに行ってくれる。
もちろん、充電が切れそうになると、自分で勝手に充電場所に行って充電する。
シカゴでは、AI搭載のヒューマウォレットが自らで販売経営を行っている。
AIによって最適な商流を導き出し、お金のやり取りも行ってくれるので、店側も客側も双方ヒューマウォレットだけで商売が成り立ってしまう。
ヒューマウォレットを持っているだけでお金を稼げる。人間にとって、勉強すらも不要になりつつある。ヒューマウォレットがAIで情報を整理し、最適な生活を届けてくれるからだ。
高齢者向けヒューマウォレットも、ある一定普及している。
高齢者に使えるのか?と思うだろうが、逆転の発想で、ヒューマウォレット主導で高齢者を導くのだ。
最初の設定も、ベッドに横たわった状態でボタンを一回押せば、勝手に持ち主スキャンを行い、性別・年齢判別を行ったうえで、最適な仕様設定を自動で行う。
そろそろトイレットペーパーの補充が必要だとか、光熱費の支払いのために銀行口座にお金を補充しないといけないだとか、はたまた1年先までの生活費を逆算して、その日の料理の献立と費用を健康面も含めて考えてくれたりと、高齢者のサポートは万全である。
デメリットは一つ。いわゆる認知症、アルツハイマー病の発症率が上がってしまった。
最近大阪では、ヒューマウォレットを持てない、いわゆる貧困層のための人材採用を含めた実証実験が始まった。
ヒューマウォレットが貧困層の人間を雇用するのだ。
高性能な金銭系計算機能、給与計算や社会保険料と税務など、あらゆる金銭管理が可能なので、人間が行うよりずっと効率的である。
先々の収支や業績のトレンドも把握できるので、経営の一端を担っている。
これにより、富裕層と貧困層のバランスの取れた世界が生まれている。
渋谷のスクランブル交差点。
信号待ちをしている人々。
ヒューマウォレットの割合は。
はてさて。