夜に駆けるのTalkboxミックス(ミックス編)
前回記事の続きです。
まずはミックスの全体像を。
メインボーカル①、②、サブボーカル(ハモリ)のトラックに手コンプ済みのオーディオを読み込みます。
メインボーカル②は最後の「二人今夜に駆けだしてく」の「してく」の部分のみです。これはDoublerを結構深めにかけています。
ボーカル本体の処理
メインボーカル①、②とサブボーカルをそれぞれセンドトラックへ送ります。Doubler以外の処理をしていないのでインサートでもよいですが、後で手直しをしやすくするためにあえてセンドにしています。
メインもサブも処理の流れは同じです。最終的にメインとサブを混ぜるのでメインが埋もれないようにサブの方はコンプ処理やその他もろもろを強めにかけています。メインは弱めです。
以下は全てメインボーカルの処理の画像を載せます。
Sibilance:ディエッサー処理
さっきメインは弱めにかけているといいましたが、Sibilanceは強めにかけています。前回の記事でも触れたように、Sibilanceをしてから手コンプの方がいいかもしれません。
Pro-Q3:Pre EQ
まずはEQでガッツリ低域を削ります。あとはTalkboxのヌケをよくするために10kくらいからけっこう持ち上げています。
H-Comp:コンプ
一聴してわかるくらいにはコンプをかけています。
ANALOG 1が好みなんですよね。
Vitamin:おまじない??
ほぼおまじないです(音は変わります)。MID~HIをちょっと色付けしています(レンジはたぶんデフォルトのまま)。若干立体感がでます。
H-Delay:ディレイ
1/64でちょっとだけかけます。これも立体感というかボーカルが前に出てくる感じがします。ANALOG設定はやはり1です。
PS22 Split:ステレオ感演出
ステレオ感を出すために500Hzくらいから少しずつ左右に広げます。サブボーカルの方はもう少し広めにかけています。
Pro-Q3:Post EQ
以上の音を聴いて最後にEQで調整します。低音部分をもう一度カットしています。
空間系処理
ボーカル本体処理の出力を別センドトラックに送り空間系の処理を行います。
H-Delay:ディレイ
リバーブにかける前にまた追いディレイをかけていきます。ANALOGは今回は2にしています。
TrueVerb:リバーブ
Early Refを速めに、Reverbは12msくらいにし、Decay Timeはかなり控えめにしています。YOASOBIさんの元の音源がかなり素に近いボーカルということを考慮してのことです。後は、個人的に深いリバーブがそんなに好きではないという好みの問題です。Frequency Responseはデフォルトのままです。この後別のEQで調整します。
Pro-Q3:Post EQ
リバーブ処理に対してEQをかけて調整します。
ボーカル全体の処理
ボーカル本体と空間系処理を一つのセンドトラックにまとめてインストと混ぜる準備をします。
このセンドトラックに送るにあたり、パン振りはこのように若干左右に振っています。これだけでメインとサブがちょうどよく分離して聞こえます。
Mono
Bass Mono を使って 500Hz 以下をモノラルにしていきます。レコーディング時はモノラルですが、イメージャー(PS22 Split)と左右パンをしているためこの処理をするのとしないのとではかなり聴こえ方が違います。Maxの500Hzにしたのは今回が初めてです。
Vocal Rider:自動手コンプ
「自動手コンプ」というと自動なのかマニュアルなのかわかりませんが、手コンプをシミュレートするプラグインを使って全体の音量バランスを整えていきます。ここで言う「手コンプ」とは前回記事の子音バランスを整えるための手コンプではなく一曲を通して聞いた時の音量バランスを整えるための手コンプです。今回はFast Riderを挿して、Rangeの上側を3.0→3.5へちょっとだけ上げています。
L3 UltraMaximizer:マキシマイザ
スレッショルドとシーリングをちょうどいい具合にいじっただけです。
Utility:ゲイン調整
最後にインストと混ぜたときにバランスよくなるようにゲインのオートメーションで音量を微調整します。
インスト処理
インストトラックをセンドに送り、インストに対して処理を行います。
今回はYOASOBIさんの公式音源を利用させていただいたので、ほとんどやることはありません(というかやるべきではないです)。
Compressor:サイドチェインコンプ
ボーカル全体のセンドトラックを入力とし、サイドチェインコンプをかけます。かけすぎないように、1 : 1.14くらいで微妙にかけています。
Pro-Q3:サイドチェイン+ダイナミックEQ
帯域に対してもコンプと同様サイドチェインでEQをかけていきます。
うねうねしたベースが好きなので120Hzくらいのところをけっこう持ち上げていますね。人によってはくどいと思われそうです。
マスタリング
ボーカル全体のセンドトラック、インストのセンドトラックからマスターへ入力し、マスタリングをします。
正直マスタリングは難しすぎてよくわかっていないので Ozone 9 の AI 機能を使っています。大体いつもは Modern + Low or Medium くらいにしているのですが、今回は Vintage + High が一番聴こえがよかったです。
基本的には AI のガラガラポンですが、Limiter と Maximizer は結構いじってスマホでもちゃんと聞こえるように調整しました。
必要以上にいろいろと手を加えすぎている気がしますが、今の自分の実力だとこれが限界です。引き算の考え方でミックスができるようになりたいですね。頑張ります!