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シニア起業のリアル【8】 セイヤクあれこれ

今回はセイヤクというお話しです。

セイヤクと音だけ聞いて皆さんはどんな漢字を思い浮かべるでしょうか。辞書を引くとたくさん出てきますね。私が住む富山県では主産業のひとつに製薬業=つまり薬を作る産業があるので、製品の製に薬と書く「製薬」を思い浮かべる方が一定数いるはずです。

他には、何か大事な取り決めをする際に交わす誓約書の誓約、誓う約束すると書く誓約がありますし、あまり使わないですが、反省の省に約束の約と書く省約は「省いて簡略化する」という意味の言葉だそうです。

ちょっと横道から入りましたが、多くの人が思い浮かべるセイヤクのひつとは、ルールなどによって制限されることを意味する「制約」では無いかと思います。制限の制に約束の約と書くセイヤクですね。例えば「法律の制約を受ける」とか「経費の使い道に制約がある」といった用法です。

会社勤めの方、経験のある方は、勤め先の会社にあるさまざまな制約の中で仕事をされているかと思いますが、いかがでしょうか。大きいもので言うと勤務や休暇に関する社内規定があるでしょうし、資格種別による業務範囲や立ち入るエリアが決められている業種もあると思います。

明確に定められていなくても不文律のようになっているルール的なものもありそうですね。私が勤めていたマスコミ業界では、株式投資を慎むと言う暗黙のルールがありました。社内規定で禁止している企業もあると聞いています。理由は、倒産情報など株価に影響しかねない情報を、発表前に知り得る業界だからです。

会社員時代は特にそれに疑問もなく、むしろ制約があることで判断をそちらに委ねてしまう楽さがありました。

ただ、どうにも不自由を感じる制約もあるはずです。私の場合は、会社から指示されない限り、講演活動や司会業務を請け負うことはできませんでした。社員を守るという理由での制約でしたので、守られていた事には感謝しています。一方で、講演活動をやりたいと言う思いが、歳を重ねるごとに強くなっていき、どうにも抑えきれなくなって行きました。

そんな思いをこれからも続けるのかと自問し、今年の春に独立起業したわけですが、そうなると今までの制約からは解放されました。判断を迫られる時、拠り所になるのは制約ではなく、自分自身の判断力や価値基準へと変わりました。

制約が取り払われ、野に放たれたフリーアナウンサー。ここから違う漢字で書くセイヤクを求める事になります。もうお分かりですね。仕事の契約が成立する方の「成約」。成果の成に約束の役と書く成約です。成約=収入となるわけですから、真剣に取りに行かなければなりません。

私は放送局の社員時代、お金を稼ぐ部署=営業セクションでの業務経験がありません。逆にお金を使って番組を作る側=制作セクションだけに身を置いていました。なので、自分の力でクライアントと話し合いをした事もなく、そもそも成約までのプロセスすら知りませんでした。

ただ、大枠での流れだけは仲間から聞いていました。フリーアナウンサーの営業としては

・自分の提供できるサービスを示し、活用してほしいとお願いする
・クライアントの要望に合わせ、サービス内容と費用を示す
・双方合意できれば契約成立=成約

と言う流れですね。ここに必要な資料を揃えて、実績や期待できる効果などを、ご納得いただけるよう説明していきます。

クライアント側に立てば、この春起業した「ぽっと出」の会社を信用できるのか。説明と実際にズレはないのか。途中で投げ出したり履行不能に陥らないのか、などなど。一般的には不安しかない相手との交渉に臨む事になったかと思います。

ところが有難い事に、知人の経営者が次の経営者を紹介してくださったり、僅かに実績のある講演の主催者が、独立起業のご祝儀的に話を聞く場を設けてくださったりと、少しずつではありますが交渉の場を頂けたことがありがたかったです。

そしてひとつずつ商談をこなしていく内に、ご成約いただける案件が出てきました。嬉しいものですね。自分で提案したことを、企業が真剣に考えてくださり、自分の力を必要だと認めてくださった時は、えも言われぬ充実感がありました。営業の仕事の喜びって、ここにあったのかと、恥ずかしながら初めて体験した気持ちでした。

会社員時代の決まり事である制約から解放され、今度は仕事の確約を取り付ける成約を求めているのが今の私です。もちろん、伝統産業でもある薬を作る製薬業の企業ともお付き合いしたいですし、業務の無駄を省いてスリム化する省約にも努めていこうと思っています。その先に、大きな喜びが得られる成約が待っているのだと思います。

今回は随分たくさん発音しましたが、セイヤクと言う言葉で、今の私の状況を綴ってみました。


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