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シニア起業のリアル【6】 名刺管理アプリは福音

noteで書いている内容を音声でもお聞きいただけます。ラジオ番組風に編集してありますので、よろしければどうぞ


仕事をしている方は、何かしら名刺をお持ちでしょう。主流はまだまだ紙の名刺ですが、デジタルでやり取りする時代にもなってきています。私は紙の名刺を手渡しで交換し、頂いた後速やかにスマホで撮影。名刺管理アプリの力を借りてそのデータを持ち歩いています。


名刺管理アプリって私にとって福音でした。毎日のように生放送の番組でお迎えするゲストの方のうち、例えば二度目にお会いする方に対して「初めまして」と切り出すのか「去年の夏以来ですね」と挨拶するのかでは、相手に与える印象が随分違います。そうですよね、初めまして!と言われたら「自分と会った事を覚えていないんだな」となります。許して下さる方が多いのでしょうが、仮に去年の夏以来ですねと言えれば、相手の方は「覚えていてくれた」と好印象を持って下さるでしょう。


この、ほんの一言の違いをサポートしてくれるのが、私にとっては名刺管理アプリなのです。名刺の画像は写真として保存され、住所や会社名、名前やメールアドレルなどはデータとしてテキスト化されて積み上がっていきます。私のアプリには現在1300人分ほどの名刺データが入っていて、名前や企業名などで検索できる状態になっています。


この便利な機能を活用して、私は起業する直前に、会社を辞める旨の挨拶メールを送りました。送信した総数は約300通。それでも、メールアドレスを1文字ずつ転写していくのではなく、名刺管理アプリのメールアドレスをクリックするだけで、送信の大方の準備が整いました。実際に使ってみると相当便利、お陰で1日に50通ほど送信する事ができました。


では実際メールでの挨拶は、相手の心に届いたのか。メールは便利なツールだけに、直接訪問したり、電話で話すよりは、受け止め方が軽い傾向にあります。実際の数字をご紹介すると・・・送信したのが約300通、返信をいただいたのが約90通、その中で実際に会って下さるとアポイントまで取ってくださった方が9人でした。


300通に対して、会えたのが9人とは・・・やっぱり効率は良く無いなぁと思ってしまいがちですが、それは違います。「9人もの方が会って下さる」というのが正直な感想でした。メールを送るなんて、それほど労力は要りません。にも関わらず、私の話に興味を持って下さり、時間を作って頂けたという事に感謝の気持ちが湧きました。


ある県内企業の経営者の方と、ダイレクトメールの話をしていたのを思い出しました。手作りした製品案内のチラシを、一件一件封筒に入れて100通郵送しました。問い合わせの電話が返ってきたのは3件でした、と。偶然かもしれませんが、「期待の持てる返信が返ってくる確率は約3%」という結果が、私の場合と同じでした。


名刺データからメールを送ったので、300通の宛先に対し、私は全員面識がありました。それでも3%です。でもそれが現実です。返信を下さり、会って頂けた経営者の方々には、その場で心からお礼の気持ちをお伝えいたしました。


少し話は逸れますが、ビジネスの世界で言われる一般論のひとつに「レスポンスの速い人はデキル人」と言うのがあります。私は返信が遅い上にあれこれ言い訳をくっ付けてようやく返す人間でしたが、今回約300通送らせて頂いて、レスポンスの速さと仕事のデキル感は、まともに比例すると実感しました。


私自身尊敬する経営者の方の多くは、実にレスポンスが早く、端的で伝わる文面で返信をいただきました。日頃から良い緊張感の中で仕事をされているのが、その上品な文面から伝わってきました。返信を頂かなくて丁度・・・位のメールですが、にも関わらず素早く、熱量のある返信を下さる方には、一層の尊敬や嬉しさが湧きました。


と同時に、この瞬間から「自分も素早いレスポンス」を心に誓いました。


会って頂けた3%の経営者の方は、皆さん私の独立を応援すると言ってくださり、本当に力になりました。メール一本で面会の時間を作って下さり、励まして頂けるなんて、私は本当に恵まれています。アナウンサーという、少し珍しい職業だからというのもありましょうが、経営者の方に直接メールをお送りできる関係を、事前に作らせて頂けていた事こそ、財産だったのだと思います。


アナウンサーという職業は、営業職の皆さんとは少し違い、いきなり経営トップと会ってお話しする機会に恵まれるポジションです。放送に出演される経営者の方の聞き手になるのはアナウンサーなので当然と言えば当然なのですが。一方の営業職の方は、下の職位の方から順に関係を積み上げていって、ようやく決裁権のある方と面会するケースが多いかと思います。


それだけにアナウンサーは勘違いを起こしやすいリスクを負っています。はき違えてしまうと、苦も無くVIPと親しくなれたと誤認します。さらにたちが悪いのは、キャリアの浅いアナウンサーが、経営トップばかりと関係を築こうとしてしまう事です。地位のある方々の仲間にいち早く入り込もうという横着な姿勢は、あっという間にボロが出てしまうものです。


スポーツキャスター時代に体得した、自分なりの教訓があります。それは「同世代の選手と分かりあう」という事でした。ベテラン記者に負けまいと、キャリアも無いのにエリート選手にアタックしても、打ち解ける前に彼らは引退してしまう事が多いものです。ところが、若い自分と同世代で、まだ芽が出ていない選手と打ち解けられれば、彼らと「共に成長」できるのです。そして彼らがチームの主軸を担ったり、球団の幹部に昇格していけば、旧知の仲としていつでも連絡を取り合えるようになるというものです。


話が散らかりましたが、名刺をもとにメールで連絡ができるのには、頂いた時から築いていった関係性がものを言うという事です。単なる名刺交換で終わらせず、二度目の面会での声かけに生かしたり、人生の転換点にアドバイスを送りあったりすることで、その価値は高まっていきます。それをアシストしてくれる名刺管理アプリは、くどいようですが、私にとって福音でした。

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