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外部弁護士による法務業務の代替(24.12.15の書き散らし)
すこーし前、ある先生(法律事務所を経営しておられる弁護士の方です)が、「ポジショントークである」と断ったうえで、1000万払って若手弁護士を雇うくらいなら、月50万円の顧問料を払って法務機能の一部を代替してもらう選択肢があるのではないか、とポストされておられました。
1000万円貰っているインハウスがどれだけいるのか、という問題はさておくとして(置きたくないが。)。要するに、「1000万円/年ペーペーの若手に払うくらいなら、600万円/年払って実力者を顧問にしたほうがいいんじゃないの?」という問題提起だと読み取りました。
では、果たして50万円/月を支払ったら顧問先の先生方は社内で働く若手弁護士の代替ができるか?僕はできないと思う。これは、1000万若手の方が600万ベテランよりも優秀とかそういうことが言いたいのではない。求められるスキルが異なるのだから、そもそも代わりにならないでしょう、ということです。こちらの問題意識は、プロ野球チームが将来の四番候補に5000万の年俸だすなら、優秀なヘッドコーチを2000万で連れてきたほうがいい、みたいな話に聞こえてならないのです。
では、求められるスキルとは何なのか。例えば事業部門がある既存製品を使った新たなビジネスモデルを構築したい、ひいては法的に問題がないか確認したい、という相談が法務に来た場合を想定します。
法務としては、①ヒアリングを行い事業部門の考える最強のビジネスモデルを理解する、②そこでツッコミどころがあったらツッコむ(得てして夢物語を聞かされるだけのことがある)、③ある程度固まったところで法的に問題になりそうなところを整理する、④必要に応じて顧問先に相談、NGの場合の代替案を法務で検討して再度相談したりする、⑤法務見解として事業部に落とし込み、納得できないならまた代替案を考えたりする、みたいなことをすることになるでしょう。普通、④の部分が法律事務所の先生方にお願いするところです。で、④以外の部分も担うのが1000万若手であるわけです。
では、600万ベテランは④以外のところもやってくれるのでしょうか?ここで企業内で法務としてやっておられる方にお聞きしたいのですが、「あぁ、この先生はうちの製品やビジネス、社内のことをよーくわかってくださっているなぁ」って先生、そんなにたくさんおられますでしょうか?代替案検討するのだって、会社としての方向性や会社のカラーにあうビジネスモデルか、とか自社の強み弱みやらリソースやら予算やらみたいなことをなんとなーくイメージする必要があるわけなのですが、そこまでイメージされてる先生方ってそんなにおられないのではないかなぁ、と。これは、お互い求めていない部分だと思うので当たり前といえば当たり前の話なのですが。
①や②に関しても、事業部門は得てして、知ってか知らずか、「情報を隠す」ということをするわけで、そこを別のルートから取りに行ったり、突っ込んで聞いて確認したり、そういった事実整理みたいなのは会社の内側にいないとできないのでは?と思ったり。
⑤に関しても、会社のビジネスを止める場合には、「法務が止めやがりました」と役員にチクられたとしても「すぐにご説明に上がります」と言えるだけのフットワークと説明を聞いた役員が納得する程度には合理的な説明の準備、そしてそもそもそうなることを防ぐための密接な事業部門とのコミュニケーションが必要なわけで。
こういったところまでやっていただけるのであれば、600万のベテラン先生にも大変魅力を感じるのですが、これはヘッドコーチに4番を打つことを期待するような話であって、そういうことではないんでしょうね。もちろん、1000万若手に求められる④スキルを補うため、600万ベテランにももっとはいってもらうということは往々にしてある話ですが、この顧問料が適正なのかはまた別の話だと思います。
ということで、個人的な意見を一言でまとめると、「求められる役割が違うから代替できないのでは」となるわけですが、これは会社によるところなのでしょうね。他社さんでは、全く違う景色が広がっているのかもしれません。
2024.12.15