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生成AIのリスクをどう解消する?! ~チャットGPTは明確な著作権侵害

“リスクの伝道師”SFSSの山崎です。本ブログではリスクコミュニケーション(リスコミ)のあり方について毎回議論をしておりますが、今回は世界的な議論を巻き起こしているチャットGPTなど、生成AIの社会に与えるリスクをどう解消すべきかについて議論したいと思います。まずは、以下の記事をご一読いただきたい:

チャットGPTで注目 「生成AI」とは? ~なるほドリ・ワイド 
回答・大久保渉 毎日新聞 2023/5/14
https://mainichi.jp/articles/20230514/ddm/005/070/109000c

まるでヒトが話しているかのような文章を人工知能(AI)が作成してくれるアプリ、チャットGPTが話題となっているが、生成される文章はあくまでネット環境にある著作物を参照して、学習した結果の著作物なので、すべてが盗作と言っても過言ではないだろう。

しかもその文章のパーツは、人気のアーティストが作詞したフレーズで、YouTubeでの再生回数が多かった曲から一部抜粋されたものかもしれない。もしこれが特定の人間の仕業であれば、間違いなく著作権侵害だが、AIが機械的なアルゴリズムにより生成すればセーフというのはおかしい。

いくら人格をもたないAIであっても、知的財産を侵害することが明確ならば、ソフトの所有者が著作権料を支払う必要があるだろう。EUではすでに、この著作権や個人情報を保護するための法律を作ろうとしているとのことだ。

AIの著作権侵害に警鐘「クリエイティブ産業の人々、脅かされる」…緩和反対の英下院議員
 読売新聞 2023/04/30 01:32

AIの著作権侵害に警鐘「クリエイティブ産業の人々、脅かされる」…緩和反対の英下院議員

【読売新聞】 【ロンドン=中西梓】AI(人工知能)の著作物利用を巡る規制緩和に反対する英下院・自由民主党のサラ・オルニー議員(46)が、読売新聞のインタビューに応じた。オルニー氏は「自分の技術や想像力を生かして作った作品が同意なしに

www.yomiuri.co.jp

その意味では、各国の著作権協会などに生成AIの開発企業が、年間著作権料をまとめて支払うシステムを構築するのが手っ取り早いだろう。そうなると著作物の所有者や業界団体も、著作権協会に著作物の登録をするモチベーションがあがるし、もっと著作権者の権利を守ろうという社会環境が醸成されていくのではないか。

このあたりの個人の権利を軽く扱ってしまうと、ライターやアーティストなどクリエイティブな仕事で生計をたてる方々の職が早晩失われていくため、本当は近い将来、もっと素晴らしい作品を生み出したかもしれないクリエイターたちを育成初期につぶしてしまうリスクがある。AIの手筋をほとんど暗記した棋士が、常に将棋の名人戦で優勝してしまうと、次の創造的な一手は生まれなくなり、名勝負は生まれにくくなるというのと同じだ。その意味でも、とくに人文科学・芸術の分野などに関しては、生成AIによる著作物の制作にはある程度制限をかけるとともに、著作権を保護する手段を講じるべきと思う。

あとチャットGPTによるネット上の誤情報を引用した文章生成に関しても、これが世の中の正しい見解だという誤解を多くの市民に与えるリスクがあり、フェイクニュースの拡散を助長してしまうことが危惧されるところだ。

われわれSFSSが、世の中にはびこる食の安全・安心に関する誤情報を正すためのリスクコミュニケーションを継続的に推進しているのだが、残念ながら食品添加物・残留農薬・食の放射能汚染・遺伝子組換え/ゲノム編集食品など、健康リスクが無視できるほど小さく「安全」と専門家が評価しているハザードについて、不安をあおるトンデモ本/週刊誌記事/SNS情報が、いまだに多数のエンゲージメントを獲得している状況だ。

大衆に支持されているSNSの記事やコメントが、生成AIにより参照され学習されると、食品事業者のホームページにおけるお客様相談コーナーでも、「食品添加物を使用しておりませんので安心・安全ですよ」などというチャットGPTの回答が普通にでてきそうで怖いところだ。「SFSSが、食品添加物はリスク管理がバッチリなので安全性に問題ない、と言ってましたが、今回の回答はどういう意味ですか?」と質問されたら、チャットGPTは何と回答してくれるのだろうか?!

このような科学的に誤った情報がネット上に拡散した状況を放置すると、大衆から多数支持を受けているSNS情報が常に正しいという混乱を生成AIに与えてしまう心配がある。だからこそSNSのプラットフォーマーには、このような誤情報を事実検証するファクトチェッカーの育成にもっと経済的支援をしてほしいし、SNS上の疑義言説にファクトチェックのフラッグを自動的にたてるアルゴリズムを設けてほしいところだ。

新型コロナなど医療分野や自然科学分野の疑義言説に対して、無条件に厚労省のサイトを表示するだけでは不十分であり、当該疑義言説に対するファクトチェック記事の議論をリアルタイムで市民に見てもらう方が、よりリスクを理解しやすいものと思うところだ。

以上、今回のブログでは、チャットGPTなど生成AIがもたらす社会へのリスクに対して、どのような対処方法がかんがえられるかを議論しました。SFSSでは、食の安全・安心にかかわるリスクコミュニケーションのあり方を議論するイベントを継続的に開催しており、どなたでもご参加いただけます(非会員は有料です)。なお、当日ご欠席でも事前参加登録をしておけば、後日、参加登録者とSFSS会員限定のアーカイブ動画が視聴可能ですので、参加登録をご検討ください:

◎SFSS食のリスクコミュニケーション・フォーラム2023(4回シリーズ、ハイブリッド開催)
 第2回 6月25日(日)テーマ: トリチウム処理水のリスコミのあり方
  https://nposfss.com/schedule/risk_com_2023/


 【文責:山崎 毅 info@nposfss.com

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