フルマラソン後の世界
コロナがあり、ちょっとお腹の肉が気になるお年頃、ということもあり、ダイエット感覚でランニングに本腰を入れ始めて約半年。無事目標体重を達成し、マラソンの魅力に気づき始めていた頃、京都へ移住した夏、3年ぶりに京都マラソンが開催されることを知った。
フットワークが軽い自分は「まあ、なんとかなるだろう」の精神でフルマラソンに申し込んだ。「めちゃくちゃフルマラソンを走りたい!」とかではなかった。ただ、京都の街をもっと知って、もっと好きになるチャンスかもしれない、そう思っての申込みだった。
いざ出場することが決まると日常が変わった。日々のランニング時間の捻出はもちろんのこと、自然と時間が空いたときの情報収集もランニングに関するものになる。当日のコースを楽しむために、各観光名所にも多く足を運んだ。事前の思惑通り、もっと京都を好きになっていた。
そして、迎えた当日、とてつもなく悪天候。極寒でなかったのが救いだが、コンディションは悪い。一緒に出た友人は「この天気、一緒に出場していなかったら出場諦めてますね。笑」なんて笑っていた。サブスリーを出す君がそれなら、まあ、これ以上悪い状況はないのだろう、と楽観的にスタートを切った。
その後、30kmぐらいまでは記憶があるが、以降は、ほとんど記憶がない。終盤、慣れているはずの鴨川沿いで、全く足が前に進まない。普段、走ることが出来ない道を思い切り走ることが出来るチャンスなのに、市役所前~御所あたりのコースが全く気持ちよくない。京大の近くまで来た時は、もはや苦行でしかなかった。35km辺りから、弱まっていた雨足も強くなり、なけなしの体力がすべて奪われる・・・
多分、前半飛ばしすぎたせいもあるのか(辞めておけばいいのに、わりと30kmまで好調だった自分は4時間半という目標を課し、20~30km地点でペースアップを試みていた。)終盤、極限に達していた自分に、とにかく周囲の歓声が染みた。1万6000人の参加者に1万5000人のボランティアがいたそうだ。沿道には、通りがかった人、近所の人、お店の人、色んな人がいたとおもう。
今まで、自分が多くの人の歓声を浴びる機会って、そういえばなかったし、ライブにはよく参加していて、バンドマンが「ほんと、この歓声を聞くために歌っている」というような内容のMCを言う度に、じーんと来てはいたが、33年生きてきて、ようやく腹落ちした。この歓声ってものすごいエネルギーになるのだ。
そして、無事ゴールし、人生初フルマラソンを終えた。まだ、次の大会のことは考えられないが、このままでは終われないので、ちゃんと「完走」できるまで、チャレンジが続きそうだ。
無事「フルマラソン後の世界」になったわけだが、残念ながらフルマラソンを走りきったぐらいでは、人生は変わらない。
だけど、少し強くなった気にさせてくれたのと、辛いときの歓声の心強さに腹落ちできたのは大きな収穫だった。別に大きな声でなくても良い。その人自身の影響力なんて、関係ない。でも、どんな人の、どんな歓声でも、直接、語りかければエネルギーに変わる。そんな歓声を、いつでもあげられる人間でいたいし、そんな歓声をかけてもらえるような人生を今後も歩もうと思った。
関わったボランティアの皆様、大会運営の皆様、雨の中お疲れ様でした!そして、ランナーの皆様、本当にお疲れさまでしたっ!
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