野良と組織、銃と剣
先週末からのお話。子供たちのリクエストで奈良市に出かけ、寺社仏閣と奈良公園のシカの群れに驚きつつ、模型屋と古本屋巡り。猿沢池でアイス食べたり、奈良町商店街を散策したり、修学旅行のような時間を過ごす。翌日は大津京本の市へ。ゆっくり下の道を通って滋賀県へ。琵琶湖が見えるショッピングモールの敷地内の古本市。競輪場跡地に建てられたためか、中央に芝生広場が広がり、周りを囲むように商業施設が並んでいる。大阪はじめ都市圏では古本市がコロナの影響で中止になる中の開催。マニアックでは二ものの、こじんまりとアットホームな雰囲気のイベントでありました。
その翌日、朝イチで京都で映画を見ようと思っていたので、その日はネットカフェ泊。人生初のネットカフェ。ちょっと狭いけど個室だし、シャワーにドリンクバーもついて、ちょっとした寝台列車に乗るような気分で横になる。コロナ禍にあるからなのだろうか、料金は安いし、サービスもよかったので、次も何かあれば泊まろうか、と思う。住めば都、起きて半畳寝て一畳、ですよ。
そして翌日は京都みなみ会館で朝イチの『野良人間』を。メキシコの山中で発見された野生児を、とある元修道士が拾って育てるまでを描いた、いわゆるモキュメンタリーである。野生児! インドで発見された狼に育てられたアマラとカマラに数々の野生児発見報告に胸躍らせ、恐怖した子供のころの気持ちを思い出させる題材。これは見ないと! 映画はホラーというか、結局は『一番怖いのは人間』という内容で、狂信的な男が三人の野生児をいかに育て、そして『思ってたんと違う!』と道を踏み外していくかを描く、じんわりと怖い内容。メキシコで多発する児童誘拐事件に、歪んだ信仰心を持つ修道士、一見平和そうに見えて閉鎖的なムラ社会等々、様々な『いやなパーツ』を散りばめつつ、悲劇へと向かって行く。朝から嫌なもの見たなぁ、でも不快ではない。同じ配給会社の、見たら死ぬ映画『アントラム』にも通じる、不快の快。
そして続けて『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』を。これで何度目? 難波、新世界、そしてみなみ会館で5回もこの長尺の西部劇を見たことになります。それもレオーネだから、今見ておかないと、という意識が強かったから。それに、5月で日本での上映期限が切れるので、これが最後の上映になるから。もう何度も見たけど、冒頭の無人駅で、主人公ハーモニカを待つ三人の悪党の描写で、心掴まれる。史上初、待ち伏せする側を丹念に映画板描写ではないか、と思う。待てども汽車は来ない、暇だなあ、ハエでも捕まえて遊ぼうかな等々、いろんな思いを抱き、悪党が待つ。この静寂があるから、決闘シーンが盛り上がる。もうこれで大画面いっぱいに映し出される男たちと、そんな連中を向こうに回して気丈に振舞う女の姿が見れないのか。馬から汽車へ、男から女へ、そしてフィルムからデジタルへ時代が写っていく。また会う日まで。それまではブルーレイ買って見ます。
そんな三府県をまたいでの越境続きの小旅行のような週末。そしてまた月曜日から仕事。その間、緊急事態宣言が延長されることになったけど、一部の休業要請が緩和された。大阪府下のシネコンも再開、今だ見るのだ、とまたもや朝イチで映画館へ。MOVIX八尾で『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』を。元々Vシネマの先行上映なので、上映館数は限られている上に、営業時間の短縮もある。しかし、戦隊映画を見るときはいつも朝イチのような気がする。
久しぶりに人間の数が多い戦隊を見たなあ。戦隊共演ものにハズレなしです。リュウソウジャーとキラメイジャーがムービー邪面の力で映画の世界に吹っ飛ばされる、という戦隊VS物の鉄板展開。刑事もの、ギャンブル物、時代劇、ズベ公ものと東映の得意ジャンル? で右往左往する両戦隊。そしてプロデューサーの圧力で思うような映画が撮れない怪人の悲哀は、そのまま映画の作り手の心の声となってスクリーンに描き出される! 坂本浩一監督なので、変身前のアクションが豊富だし、ナパーム爆発に、カメラが縦横に動く巨大戦と好き放題。どちらのシリーズも楽しく拝見していた身としては大満足な一本でした。
『『キラメイジャーVSリュウソウジャー』二大戦隊、仲良く異世界に飛ばされてコスプレしつつ騒動に巻き込まれる黄金パターン。どちらも楽しく拝見してたので、もう面白いことしか起こらない。女子チームみんな素敵、オトちゃん大きくなったなあ、娘と同い年ぐらいだなぁ、と親のような気持になる。
女子チームの中ではヨドンナ様が頭一つ抜けて素敵かつ悪辣。宇宙の中間管理職、マイフェバリットキャラのクレヨンをぐりぐり踏みつけて緑の液体をピューピュー出させるプレイ、否マイナソー作戦はちびっこに新たな何かを芽生えさせるのでは? と心配したでござるよ。で劇場にはおっさんが三人だけ。終』
Twitterより。
そして場所を移動してイオンシネマ大日へ、移動時間を合わせると、いいタイミングで『るろうに剣心最終章THE FINAL』が見れる計算。それについてから知ったけど、その日はイオンシネマのサービスデーだった。人気シリーズもこれにて最終でござる。本格的な美術設定と核心的なアクションが今回も素晴らしい。元々はジャンプ漫画だけど、一瞬それを忘れさせてくれる、主演の佐藤健も最初は『若くないか? ひょろひょろじゃないか?』と思ったけど、すっかり落ち着いたおっさんのいい声色になり、そしてそのアクションも冴えに冴えている。だから余計に『おろ?』が気になってしまうし、裸に羽織の左之助、ふかしタバコを意地でもやめない斎藤一のマンガキャラが浮いてしまう。でもまあいいか。
『今回の敵、雪代縁は新田真剣祐。チャンバラシーンでは父親譲りのョス、ニィヨス! が出るかと期待したけど、出ず。彼の部下の中に、片腕を大砲やガトリングガンにチェンジできるキャラがいて、ほんの少し石川賢のテイストを感じました。極道兵器だ、このスタッフで『爆末伝』やって、と思ったでござる
しかしこのシリーズ、毎回美術の作り込みが素晴らしい。大河ドラマを経験した大友監督のこだわりだろうか。セットに衣装、本当に当時の暮らしを再現したような錯覚に陥る。するとどうなるか? レギュラーキャラの漫画っぷりが目立つという、逆転現象が起こるのでござるよ。しかし薫殿はよく誘拐される
斎藤一は時代考証関係なく『こいつ、フカしてやがるな』と思うぐらいにタバコをすぱすぱ吸って、機関車のように煙だしながら動き回ってるのが気になってしまう。でも元はマンガだから。どんなに斬られても死なないのも『俺にかまわず先に行け!』『……だとしたら?』が多いのも元はジャンプ漫画だから』
Twitterより。
アクションはすさまじいし、サプライズ的に登場した神木隆之介の再生怪獣みたいな扱いも嬉しいのだけど、よく考えたら、この映画、剣心は何もせず、古傷いじられてうっとりしたりしんみりしたりしている間に物事がどんどん進んでいくのです。剣心は常に受け身でござる。なので彼からはストーリーが動かない、アクション以外のドラマパートはちょっと辛い。それに次回作のいい場面をダイジェストで見せたから、それ以上の展開は何かあるのかな、とか心配したり。でも次回の『THE BIGINNING』は剣心の人斬り時代のお話みたいだから、躊躇なく、少年漫画的寸止め感もなくバスバスと人を斬るチャンバラが見れそうです。しっとりした展開は多そうだけど。
坂本監督に谷垣アクション監督、ともに倉田プロから海外に渡った二人の演出家の作品を続けて見た休日。そういえばお二人の敬愛するジャッキーチェンもその新作が公開中。これも見ておかないと、と思いつつ、まだ大阪では土日の映画館は休業していることに気づくのでした。