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それでも、人間は
映画が好きでよく見てます、とか言ってもこの世には見ていない映画がごまんとあるのです。その中には『え、まだ見てないの?』と思われるような超有名作があったりすることが誰にだってあると思うのです。好悪、タイミングその他もろもろの事情で見れなかった映画たち。
自分にとって『羅生門』はそんな映画の一本でした。時代劇といっても、黒澤映画だといっても、なんだかややこしそうな映画だな、と思ってました。実際ややこしい映画ですけど。
そして。毎度おなじみシネ・ヌーヴォさんの大映4K映画祭で『羅生門』を上映。この機会に見てやるぞ、と出勤前に向かったのです。
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崩れかけた羅生門で雨宿りをする杣売りと僧侶が下人に語る、回想形式のお話。
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杣売りと僧侶は恐ろしいものを見た、と下人に語る。それは森の中で見た侍の遺体。それを巡って彼の妻と盗賊、さらには巫女によって口寄せされた侍の証言がまるで食い違っていたのである。
侍は戦って死んだのか誰かに刺されたのか? 盗賊もその妻も、さらには黄泉の国の侍もみんな言うことが違う、誰もが自分をよく見せようとしている。しかし杣売りが見た真実は、女になじられ、情なく剣を振るう二人の男の姿だったがそれすら本当のことかどうか疑わしいのだ。
芥川龍之介の小説をベースに、人間の欲深さ、虚飾を異なるシチュエーションで描き、最後にほんの少しの希望を見せるのが、黒澤映画らしい。
陰影の強い森の中でのたうつ人間たちが、精力的でもあり、滑稽にも見える。しかし京マチ子はよく動くなぁ。重そうな着物を着てグルングルン回っておりました。同じ場所で4パターンのシチュエーションの違う芝居を演じるたびに微妙にそのテンションが違っているのがすごい。そりゃグランプリも取るよな、と今更ながらに思うのでした。
そして映画の主人公ともいうべき羅生門が全てセットというのも驚いたし、劇中で降る豪雨も消防車で放水したというから、この時の映画はすごい、いや黒澤監督がすごいのか。
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キャッチコピーの『ムンムン』は京マチ子のことだと思いました。